「最後の恐鳥類」を発見、2万5000年前まで生きていた 人類と出会っていた可能性も
博物館に眠っていた「チキンドラムスティックの化石」の再調査で判明、ブラジル
ブラジルの博物館に所属する古生物学者らが、2万5000年前に生息していた小さな恐鳥類の証拠を発見した。じかに年代測定が行われた恐鳥類の化石では最も新しく、このグループ最後の生き残りが最終氷期の最も寒い時期まで生きていた新たな証拠がまた一つ加わった。論文は、2026年3月26日付けで学術誌「Papers in Palaeontology」に発表された。
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論文の筆頭著者で、ブラジルの教皇庁立ミナスジェライス・カトリック大学自然科学博物館と共同で研究を進める独立の古生物学者、ビクトル・ウーゴ・マシャード氏は博物館に収蔵されていたいわゆる「チキンドラムスティック」の化石を再調査し、小さな恐鳥類のものであることを発見した。
マシャード氏らはこの新種をEschatornis aterradoraと名付けた。「最後の恐鳥類」という意味だ。
「新たな章が開かれました」とマシャード氏は語る。「これは、恐鳥類の小さな種が長期間にわたって生き残っていたことを示唆しています」
フック状の巨大なくちばしと俊敏な足を持っていた恐鳥類は、かつて南米のサバンナを支配していた。研究者たちは長年、恐鳥類の最大級の種が約258万年前の鮮新世末期に南米で絶滅し、より小型の種もその直後に絶滅したと考えていたが、通説を覆す証拠が見つかり始めている。
究極の頂点捕食者
数百万年にわたり、恐鳥類は現在の南米を恐怖に陥れた。4300万年前に登場したときは比較的小さな体だったが、長い年月をかけて巨大化し、体高3メートル、体重300キロを超える個体も現れ、シカのような草食動物を捕食していた。
鳥類ではあるものの、ほとんど飛べなかった。その代わりに、俊足を生かし、陸上で獲物を追いかけていた可能性が高い。フック状の重いくちばしをおののように振りかざして獲物をたたきつぶし、巨大な足の爪で獲物を踏みつけたり蹴飛ばしたりしていた。
「彼らは頂点捕食者として君臨していました」とマシャード氏は言う。大きさが異なる種が食物連鎖の上から下までさまざまな動物を捕食し、(非鳥類型)恐竜絶滅後の世界を白亜紀のような世界に変えた。
恐鳥類は「鳥類における獣脚類の最後のあがき」だったと米インディアナ大学の古生物学博士課程で恐鳥類を研究するトム・ラバージ氏は語る。「その特徴すべてが、究極の捕食者だったことを示唆しています」。なお、ラバージ氏は今回の研究に関与していない。
恐鳥類の脚の骨
新たな発見の発端は、マシャード氏の同僚であるカストール・カルテリ氏が1980年代に発見した骨の再分類だった。今回の研究にも参加したカルテリ氏は、ブラジル、バイーア州のトカ・ドス・オッソス洞窟で発掘調査を行い、多くの哺乳類の化石を含む大量の化石を発見した。
これらの化石に、鳥類の左の脛足根骨(けいそくこんこつ)が1つ含まれていた。いわゆるチキンドラムスティックに相当する部位の骨だ。2008年、研究者たちはコンドルの一種のものだと報告し、その後、この骨は忘れ去られていた。
ところが2024年、マシャード氏がこの骨を再調査し始めたところ、「一見するとコンドルの骨に似ていた」ものの、恐鳥類の特徴に一致する点があることに気付いた。
この新種E. aterradoraは、かつての大型の恐鳥類ほど恐ろしくはなく、体重は推定6キロほどだった。研究チームは放射性炭素年代測定を行い、骨の年代が約2万5000年前だと突き止めた。
比較的新しい恐鳥類の骨が発見されたのは、これが初めてではないと研究チームは指摘する。ウルグアイでも恐鳥類の化石が発見されており、やはり恐鳥類が後期更新世まで生き残っていたことを示唆している。9万6000年前のものに加えて、1万7500年前と推定されるものもある。
ただし、ブラジルのものとは属が異なる1万7500年前の標本の年代測定は、恐鳥類の化石化した骨に対して行われたものではない。同じ堆積層から発見されたゾウの仲間ステゴマストドンの歯を分析した結果に基づいている。
ラバージ氏はマシャード氏の発見に興奮していると語り、そのデータを「信頼性が高い」と評価している。ウルグアイの標本と組み合わせると、この年代測定の結果は、小さな恐鳥類の持続性と回復力を示している。
「最も新しい時期でさえ、彼らはそれほど深刻な状況ではなかったようです」とラバージ氏は述べている。
なぜ生き残れなかったのか?
これらの年代測定の結果から、恐鳥類が人類と接触していた可能性が示唆される。南北米大陸への人類の定住がいつ始まったかについては依然として議論が続いているが、例えば、ブラジル中西部のサンタ・エリナ岩陰遺跡の発掘調査では、2万5000年前までさかのぼる可能性のある道具やペンダントが発見されている。
これまで、約300万年前にパナマ地峡を通じて南北米大陸が地続きになったことが、恐鳥類の絶滅の原因だと広く考えられていた。新たな陸路の開通により、それまで隔てられていた大陸間で種の大移動が可能になったためだ。
「それが大陸規模の生態系再編につながりました」とラバージ氏は言う。
概して、南米の大型捕食者は劣勢に立たされ、北米のサーベルタイガー(剣歯虎、けんしこ)やオオカミといった、より万能型の種に競争で敗れたと考えられてきた。
一方、少なくとも1種の巨大な恐鳥類Titanis walleriは北米に進出し、現在の米国テキサス州やフロリダ州まで到達していた。約180万年前に姿を消したが、後期更新世まで生き残ったと思われるのは、北米の捕食者と直接競合しなかった小型の恐鳥類だけだとマシャード氏は述べている。
他の動物との競争に負けたのではなく、気候変動や樹木が茂る広大なサバンナの消失といった要因が、長きにわたって恐鳥類が支配してきた先史時代の世界に終止符を打ったとマシャード氏は考えている。
