宇宙人はいる?いて座の方角から72秒間捉えた強い電波、50年間正体分からぬ「Wow!信号」…「合理的に考えると、宇宙人からの信号の可能性」

宇宙人はいる?いて座の方角から72秒間捉えた強い電波、50年間正体分からぬ「Wow!信号」…「合理的に考えると、宇宙人からの信号の可能性」

宇宙のどこかに「宇宙人」がいる――。それを確かめようとする研究が国内外で長く続く。謎めいた電波信号が米国で受信されてから50年となる来年8月に合わせ、日本の研究者らが世界合同観測をしようと呼びかけている。(中田智香子)

謎の信号50年

 研究はSETI(セチ)と呼ばれる。「Search for ExtraTerrestrial Intelligence」の略で、地球外知的生命探査と訳される。つまり「宇宙人探し」だ。

 1960年、米国の天文学者フランク・ドレイク博士が、宇宙人からの電波を捉える「オズマ計画」を開始した。児童文学「オズの魔法使い」シリーズの一編で、物語が電波通信から始まることにちなむとされる。

 受信はできなかったが、研究は続いた。宇宙人探しの鍵とされるのが77年8月15日(日本時間16日)に米オハイオ州立大の「ビッグイヤー電波望遠鏡」で観測された電波だ。いて座の方角から受けた強い電波を短くとも72秒間、捉えた。

 当時、データはタイプライターで記録用紙に打ち出されていた。自宅の台所で、記録用紙を広げた天文学者ジェリー・イーマン博士は該当の箇所を赤ペンで囲み、余白に「Wow(ワオ)!」と走り書きした。このため、Wow!信号と呼ばれるようになった。

 日本のSETI研究の第一人者の鳴沢真也・兵庫県立大専任講師は「ほかに謎の電波が捉えられたことはあるが、人工衛星やノイズなどと判明した。Wow!信号は50年近く正体がわからない。合理的に考えると、宇宙人からの信号の可能性がある」と話す。

 この信号が注目される理由は電波の波長にある。天文学者の間で「宇宙人が交信に使うのではないか」と予想されていた「21センチ」。さらに電波の強さも通常、自然界に存在するものの約30倍で、星の爆発などの自然現象で起こったものとは考えにくかった。

SF作品に影響

 研究は多くのSF作品にも影響を与えたとされる。天文学者カール・セーガン博士の小説を原作とした映画「コンタクト」もその一つだ。主演したジョディ・フォスターさんや「E.T.」を手がけた映画監督スティーブン・スピルバーグさんらが多額の寄付で、研究を支援した。

日本でも地道に研究が行われた。2009年には鳴沢さんが呼びかけ、20以上の天文台が参加した同時観測を実施。翌10年にはオズマ計画50年を記念した世界合同観測を企画した。

 鳴沢さんらは再び世界合同観測を行おうと、日本SETI研究会を今年4月に設立。7月に国内外の研究施設などに呼びかけたところ、英国や台湾の大学などが参加の意向を示した。

 史上最大規模のSETI計画「ブレイクスルー・リッスン」(本部・英オックスフォード大)も参加を表明。同計画主任研究者のアンドリュー・シーミオンさんは「できる限り多くの提携施設を合同観測に参加させたい」と意気込む。

合同観測への準備

 日本では、和歌山県紀美野町の町立みさと天文台にある直径8メートルの電波望遠鏡を中心とする方針。クラウドファンディング(CF)を実施し、21センチの波長で観測できる機器の整備を目指す。みさと天文台の元台長で、同研究会副会長の尾久土(おきゅうど)正己・奈良県立大学長は「将来にわたってSETI観測に使える望遠鏡にしたい」と語る。和歌山大や山口大も参加を検討しているという。

 50年前より解析技術が格段に高まっており、合同観測でWow!信号を再び捉えられれば、正体に迫れるかもしれない。

 この企画の後にもSETIの発展が見込まれている。南アフリカに大型望遠鏡197台、豪州に小型アンテナ13万本を配置し、一つの巨大電波望遠鏡のように機能させる国際プロジェクト「SKAO」が2030年代にも本格運用するからだ。より微弱な電波を捉えるため、日本でもSETIへの活用を探る動きが出ている。

 国立天文台の赤堀卓也准教授は「宇宙人探査はこれから転換点を迎えるだろう。生命の痕跡が見つかるなど、歴史的な発見につながるかもしれない」と期待する。

60惑星 生命存在可能か

 宇宙では6000個以上の惑星が確認されており、このうち60個程度は生命が存在しうる環境にあると考えられる。観測されていない惑星がほかにも多くあるはずで、宇宙人がいても不思議ではないとされる。

宇宙人探しを巡っては、ドレイク博士が1961年に提唱した方程式がある。「惑星での生命発生確率」や「知的生命に発達する確率」など七つの数字をかけ合わせ、人類と交信可能な文明数を推定するものだ。研究者によって、「ほぼ0」「100万」など、さまざまな数が導き出されている。

 一方、地球から宇宙人に向けてメッセージを送って返信を待つ研究もある。ただし、メッセージが届くには最短でも数年かかるという。

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