東南アジア最大か、体長27m体重27tの新種の恐竜をタイで発見 なぜ巨大に進化できた?
アジアの竜脚類の巨大化の始まりを示す存在、ナガティタン・チャイヤプーメンシス
かつてタイには、巨大な恐竜がいた。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)、シタ・マニットクーン氏が率いる研究チームによって、体長約27メートル、体重約27トンと推定される首の長い恐竜が発見されたのだ。5月14日付けで学術誌「Scientific Reports」で報告された。
ギャラリー:ナガティタンの脚の巨大さが一目瞭然、ほか写真6点
「発掘した骨の一次測定結果によると、東南アジア最大の恐竜となる可能性があります」とタイ、マハーサーラカーム大学の古生物学者、マニットクーン氏は述べる。
この骨がタイ北東部のチャイヤプーム県で見つかったのは2016年のこと。近くに住むタノーム・ルアンナン氏が発見者だった。
公共の池の岸辺で「奇妙な岩のようなもの」を見つけたルアンナン氏はタイ鉱物資源局に報告した。それはのちに恐竜の骨だとわかり、骨を見たマニットクーン氏は、巨大な生物のものに違いないと確信した。
この新種の恐竜は、発見場所と、東南アジアの民話に登場するヘビのような架空の巨大生物「ナーガ」にちなんで「ナガティタン・チャイヤプーメンシス(Nagatitan chaiyaphumensis)」と名付けられた。今回発表された論文には、古代の気候や植生の変化がどのように巨大恐竜の進化へとつながったのかについて、新たな知見も記されている。
「コク・クルアト層で見つかった竜脚類の標本の中で、一番完全なものです」とポルトガル、リスボン大学の古生物学者で、本研究には関与していないペドロ・モショ氏は話す。
これまで、タイの巨大恐竜は骨の一部しか見つかっていなかった。今回新たに発見されたものは、これまでに比べてかなり多くの部分が残っており、タイではかつて見られなかったような巨大恐竜の姿を明らかにしている。
白亜紀の巨大竜脚類、ナガティタンはどんな恐竜だった?
ナガティタンの椎骨、肋骨、寛骨、肢の骨の破片は、1億1300万年前の岩石から見つかった。右の前肢は、パタゴティタンやドレッドノータスといった近年見つかった巨大竜脚類の肢よりも長かった。しかしナガティタンは、体重60トンなどと推定されるこれらの恐竜ほど大きくはなかったようだ。
すべての巨大恐竜たちが親戚同士だったわけではない。竜脚類の恐竜は、少なくとも6つの大陸塊で、1億年以上かけて30回以上にわたって巨大な体を進化させてきた。ナガティタンも、時代や場所が異なる巨大恐竜たちとは別々に進化を遂げてきたが、その類縁関係や生息地から、巨大恐竜の幕開けの時代に生きていたと推測される。
ナガティタンは「多孔椎類(たこうついるい)」と呼ばれるグループに属していた。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の古生物学者で、今回の研究の共著者のひとりでもあるポール・アップチャーチ氏によると、多孔椎類の恐竜は一般的にほかの竜脚類よりも前肢が長く、脚幅が広い。それ以外の違いを見つけるのは、生きている個体を見ても難しかっただろう。
しかし、そうした微妙な特徴によって、ナガティタンは前期白亜紀の1億1000万年から1億2000万年ほど前に広く生息していた巨大恐竜のグループだったと考えられる。
なぜ大きくなれたのか
ナガティタンがここまで大きくなった理由は、白亜紀のタイの環境条件から説明できそうだ。
ナガティタンが生息していたころ、タイは今より赤道に近い位置にあった。ナガティタンが見つかった地層から得られた手がかりによると、このあたりはやや乾燥した比較的開けた場所で、低木に覆われていたと推測される。
当時の地球は温室状態だった。最近の研究は、そのような環境では巨大竜脚類が繁栄すると示唆している。巨大な植物食恐竜は、林の中を楽々と移動でき、高いところにある葉も、低いところにあるトクサやシダなども食べることができる。また、竜脚類が食事をしたり、土を踏み荒らしたりすることで、土地は森林化せず、サバンナのような開けた環境が維持される。
ナガティタンは、この巨大化の始まりを示す存在だった。研究チームがアジアの他の巨大竜脚類と比較したところ、ナガティタン以降の恐竜は、温暖な白亜紀を通じてますます巨大化していったことがわかった。
「白亜紀のアジアで最大級の恐竜は竜脚類です。ルヤンゴサウルスは60トン近くありました」とマニットクーン氏は話す。竜脚類が巨大化するには、温暖で開けており、やや乾燥した場所が最適だとされるが、その説とも一致している。
モショ氏によると、全体像はさらに複雑で、竜脚類も時代や場所によって大きくなったり小さくなったりしていた。
「サバンナのような生態系が巨大植物食動物の繁栄を助けたことはわかっています。環境要因が竜脚類の巨大化と関係していても不思議ではありません」と氏は話す。
現生するゾウなどの大型草食動物とその生息地との関係を詳しく調べれば、同じようなパターンを化石記録から見つけやすくなるかもしれない。
「竜脚類が高めの気温に適応できたのは、少し奇妙に思えます」とアップチャーチ氏は言う。体が大きくなるほど、熱を蓄えやすく、体温を下げにくくなるからだ。
しかし、竜脚類はその解剖学的な特徴から、少し変わった方法で適応していたようだ。
アップチャーチ氏によれば、竜脚類は首を長くすることで、熱を冷ます面積を広げたという。さらに、複雑な気嚢(きのう)の構造のおかげで、呼吸するたびに熱を放出できたと考えられる。温暖な林が広がり、食べやすい高さにある植物が増えると、すでにそれにふさわしい形に進化し、熱に適応できるようになっていた竜脚類は、さらに大型化していった。
「アジアでナガティタンとその巨大な仲間が見つかったことは、これらの恐竜が前期白亜紀以降に巨大な体を持つように進化し、生存戦略として成功したことを示しています」とマニットクーン氏は話す。
化石記録によると、巨大恐竜はナガティタンの時代以降も、小惑星が衝突する時まで、環境条件が整うたびに進化や大型化を繰り返していった。
