新型「MacBook Air」はM5搭載で何が変わった? 同じM5の「14インチMacBook Pro」と比べて分かったこと
長年、「MacBook Air」はAppleのノートブックにおいて最も多くの人に選ばれてきた。理由は単純で、「薄い」「軽い」「静か」がそろっている上に、多くの用途で十分以上に速いからだ。
そのAirに、M5チップが載った。従来通り「13インチ」と「15インチ」の2サイズから選択可能で、最小構成のApple Storeにおける価格は13インチが18万4800円、15インチが21万9800円となる。
ここで気になるのが、同じM5チップを搭載する「14インチMacBook Pro」のエントリーモデルとの“差”だ。どちらが“上か”ではなく、同じM5チップをファンレスのAirで使うか、アクティブな冷却ファンを備えるProで使うか――そこで迷う人も少なくないはずだ。
そこで今回、M5チップ搭載の15インチMacBook Airと14インチMacBook Proのパフォーマンスを比較していこうと思う。
M5チップの出来の良さを改めて実感
まず、ベーシックなところから見ていこう。M5チップの進化は、CPUコアのベンチマークスコア以上にSoC全体の完成度にある。
M5チップを大づかみに説明するなら「M4チップをさらに磨き込んだ新型チップ」だ。表面的な構成は大きく変わっておらず、CPUコアは4基の高性能コア改め「スーパーコア」と、6基の高効率コア(Eコア)で構成され、見た目の派手さは乏しい。
しかし、その中身は着実に手が入っている。Eコア側のL2キャッシュは4MBから6MBへ増え、メモリはより高速なLPDDR5X-9600に更新され、ユニファイドメモリの帯域も毎秒120GBから毎秒153GBに伸びている。
Geekbench 6のCPUテストでは、シングルコアが4227ポイント、マルチコアが1万7802ポイントと、伸び率でいうとシングルコアが約10%、マルチコアは実に約19%の改善だ。成熟したCPU(コア)の性能の伸びとしては、かなり優秀な部類に入る。
重要なのは、こうした改善がベンチマーク表の数字にとどまっていないことだ。
アプリの立ち上がり、複数の作業を並行したときの粘り、重めの処理が走り始めるまでの一瞬の待ち――M5チップは、そうした日常で生じうる“小さな引っかかり”をきちんと減らしている。CPUの世代更新でここまで体感差が出るのか、と感じる場面は少なくない。
さらにM5チップ搭載のMacBook Airでは、最小構成のベースモデルにおけるSSD(ストレージ)の容量が256GBから512GBになっただけでなく、全構成で「デュアルNANDモジュール」を採用し、PCI Express 4.0接続としたことで読み書きが高速化している。
ストレージの高速化は派手な話ではないが、体感にはしっかり効く。4K動画の編集時の応答性、アプリの起動、大きなファイルを扱う際のテンポの良さは、使い始めてすぐに感じられる。
M5チップのMacBook Airがよくできているのは、チップ“単体”の性能が上がったからというよりも、「CPUコア」「メモリ」「ストレージ」といった土台全体をきちんと磨き込んでいるからだ。
GPUの進化が「いまどきの重さ」を軽減する
M5チップで見逃せないのが、GPUの進化である。
2025年の登場時にも説明されていたが、M5チップは各GPUコアに「Neural Accelerator」が統合され、従来は独立したNeural Engine(NPU)が主に担っていたAIに関する処理を、GPU自身がより深く受け持てるようになった。
Geekbench AIのGPUに関するスコアは2万3628ポイントと、M4チップの1万1616からほぼ倍増しており、「Topaz Video」のAIビデオエンハンスメントのパフォーマンスはM4チップ比で最大1.9倍、Blenderの3Dレンダリングパフォーマンスも最大約1.5倍に向上している。
筆者は普段、M2チップ搭載のMacBook Airを使っている。今となったら3世代前のマシンとなるが、よくできた1台だと思う。しかし、さすがに最近は画像処理や動画処理で重さを感じる場面が増えてきた。
だからこそ、M5チップのMacBook Airに触れたときの差は分かりやすかった。少し使っただけでも、処理の立ち上がりや応答の速さに違いがある。
この差は、実際の作業に置き換えるとさらに見えやすい。例えば「Adobe Lightroom」で大量のRAW形式の写真を現像したり、「Adobe Photoshop」でAI系の画像補正をかけたり、「Final Cut Pro」や「DaVinci Resolve」で4K素材を扱ったりといった各種処理が、M2チップはもちろん、M4チップと比べても一段“軽く”感じられる。
もちろん「Air」は「Pro」ではない。だが、M5チップのおかげで、少なくとも「薄型かつファンレスだから、この辺は割り切って使うしかない」という製品ではなくなった。
写真編集や短時間の動画処理のように、小~中負荷のクリエイティブ作業用途に関しては、十分にメインマシンとして考えられる水準に達している。
15インチモデルは「画面の広さ」だけがメリットじゃない
M5チップの15インチMacBook Airでは、店頭販売がメインの固定構成モデルにおいて「16GBメモリ/512GB SSD」「16GBメモリ/1TB SSD」「24GBメモリ/1TB SSD」の3構成が用意されている。
それに対して、今回試用しているのは「32GBメモリ/2TB SSD」という固定構成の最上位モデルよりも“余裕”を持たせたカスタマイズをした仕様だ(Apple Storeで同じ構成にすると30万9800円となる)。
だがスペックや値段のことは抜きにしても、次に自分で買うなら13インチモデルじゃなく15インチモデルを選びたいと思った。理由は、単なる表示領域の広さだけではない。もちろん、画面が大きくなったことによる作業性の違いは大きい。複数のウィンドウを並べたり、写真を一覧したり、タイムラインとプレビューを同時に見たりと、そうした日常的な作業は、15インチモデルの方が明らかに楽だ。
それに加えて、ファンレス冷却のMacBook Airではより大きい15インチモデルには熱設計上の優位点もある。
MacBook Airは完全なファンレス設計なので、熱はアルミボディー全体へ逃がすしかない。13インチモデルと15インチモデルは、瞬間的なピーク性能こそほぼ同じだが、ボディーが大きい15インチの方が受動冷却には有利だ。
15インチモデルは幅が約34.04cm、奥行きが約23.76cmとなる。一方で、13インチモデルは幅が約30.41cm、奥行きが約21.5cmとなる。しかし、どちらも厚さは約11.2mmだ。重量は13インチモデルの約1.24kgに対して、15インチモデルは約1.51kgとやや重い。
こうして見ると、15インチモデルは単なる「大きいAir」ではなく、「熱を受け止めるアルミニウムの面積が増えたAir」と捉えることもできる。
M5チップは発熱のコントロールがうまい。そのため、M3チップ時代のMacBook Airほどサイズ差による冷却効果の違いは露骨ではない。それでも、クリエイティブ系の処理を繰り返していると、快適性や応答性に少しずつ効いてくる。
熱的な余裕がある分、15インチモデルはサーマルスロットリングが始まるまでの時間をわずかに遅らせることができる。定量化しにくい差ではあるが、画面の広さによる作業性と合わせて、15インチのMacBook Airには「余裕を持って使える」感触がある。
この違いは、 13インチモデルとの価格差や重量差を考えても、十分に意味があると感じた。
それでも「14インチMacBook Pro」のM5モデルが気になる理由
いくらM5チップ搭載の15インチMacBook Airの出来がよいとはいえ、同じM5チップを積む14インチMacBook Proの存在が気になる人も多いはずだ。最小構成モデルで比較すると6万円の価格差がある両モデルは、Geekbench 6ではスコアに大差は出ない。
それでも、14インチMacBook Proには「熱設計と持続性能」「ディスプレイ品質」「接続性」の3点で小さくないメリットがある。これらの3点を重視するかどうかが、モデル選びにおいて重要なポイントとなるだろう。
熱設計と持続性能
M5チップ搭載の15インチMacBook Airと14インチMacBook Proでは、“短時間”の処理においてパフォーマンス差を感じることはない。「アプリを開く」「RAW写真を現像する」「軽い動画を書き出す」といった処理なら、どちらも十分に速い。
違いが見えてくるのは長時間に渡って高負荷な処理を継続した場合だ。例えば「Cinebench 2024」のような連続負荷のテストアプリでは、時間の経過と共に15インチMacBook Airのスコア(≒パフォーマンス)が低下していく。その点、14インチMacBook Proでは時間経過によるスコアの低下はほぼ見られない。
ファンレスのMacBook Airが長時間の高負荷で熱の限界に近づくのは当然で、そこを冷却ファンで支えるのがMacBook Proの役割である。言い換えれば、差は“瞬発力”ではなく“持続力”にあるということだ。
もちろん連続する高負荷では差が出るが、この差が購入判断にどこまで直結するかは、使い方次第だ。長時間の動画エンコードや複雑なエフェクト処理を日常的に繰り返すなら、Proの優位は明確となる。一方で、処理を走らせて待つことをいとわないなら、Airでも大きな不満は出ないだろう。
ただし、重い処理を続けているときに体感として気になる違いはある。Airの底面はやや熱くなり、キーボード奥の中央付近も温度が上がりやすいのだ。Proも熱を持たないわけではないが、ファンがあるため熱の出方は穏やかで、膝の上で使っても不快感はない。
もっとも、筆者としては、この差は購入における決定打になるほどの大きな差にはならないと考える。少なくとも、この2台を性能だけで選ぶのは本筋ではないだろう。
画面と接続性の差
15インチMacBook AirのLiquid Retinaディスプレイは十分に美しい。最大輝度は500ニトで、P3(※1)色域をカバーしていることから、文書作成やWebサーフィン、写真のセレクトといった用途で不満を覚える場面はまずない。
(※1)Appleが独自に提唱している色域規格「Display P3」のこと。ディスプレイ一般で使われる「DCI-P3」規格をベースに、ガンマ値は「sRGB」規格のもの、白色点は「D65」標準光のものに差し替えている
14インチMacBook Proの「Liquid Retina XDRディスプレイ」はやはり別格だ。このディスプレイはMini LEDを適用した液晶パネルを採用しており、最大120Hz駆動(Appleで呼ぶところの「ProMotion」)対応で、最大輝度はSDR表示時で1000ニト/HDR表示時で1600ニトとなっている。スクロールの滑らかさ、黒の沈み方、ハイライトの伸びの違いは、一度見れば分かる。
映像編集や写真閲覧を日常的に行うなら、これは単なる「スペック差」ではない。毎日向き合う画面そのものの質の差である。
とはいえ、この違いは価格差を考えれば当然ともいえる。むしろAirの画面は「価格帯を考えれば十分以上によくできている」と評価することも可能だ。
そして、実用面でさらに効いてくるのが接続性の差だ。
15インチMacBook Airのポート類は左側面にMagSage 3(充電ポート)、Thunderbolt 4(USB4)端子×2、右側面に3.5mmヘッドフォンジャックという構成だ。SDメモリーカードを使ったりHDMIで映像を出力したりする場合はアダプター(ハブ)が欠かせない。その点、14インチMacBook ProはHDMI出力端子とSDXCメモリーカードスロットも“標準で”備えている。
「日常的にカメラのデータを吸い上げる」「会議室のプロジェクターに直結する」「外部機器を複数つなぐ」といった使い方をする場合は、Proの方が明らかにストレスが少なくて済む。HDMI端子を使ってプロジェクターやTVにそのまま接続できるのは、思っている以上に便利だ。
写真や動画を扱う人だけでなく、プレゼンテーションの機会が多い人にも、この差は小さくない。
M5チップのMacBook Airでも性能は十分 あとは使い方で選べばいい
ここまで見てくると、M5チップ搭載のMacBook Airの立ち位置はかなりはっきりとする。性能を犠牲にした軽量ノートではない。写真編集や日常的なソフト開発、4Kクラスの短~中時間の動画編集、原稿執筆、Webサーフィン、資料作成――そうした現代の仕事の中心にある作業を、十分以上の速度で静かにこなせる。
しかも15インチモデルなら、MacBook Airの中でも熱と画面サイズの両面で余裕がある。多くの人にとって、これは単なる「必要十分」ではなく、少しぜいたくなくらいの余力を持った主力機になる。
一方で、14インチMacBook ProのM5チップモデルの意味も、MacBook AirのM5チップモデルが出たことでむしろはっきりとした。同じM5チップでも、長時間負荷を掛ける仕事で余裕がある。画面の品質が良くて端子も多く、冷却も強力だ。その違いは、毎日重い作業をする人にとって、単なるぜいたくではなく実務上の利点になる。
だから今回の選び方も、以前よりむしろ分かりやすくなった。「静けさ」「薄さ」「大きな画面」を優先して、多くの仕事を過不足なくこなす主力機が欲しいなら15インチMacBook Airでいい。
一方で、「性能の持続性と安定性」「より仕事向きのスペック」を求めるなら、14インチMacBook Proがお勧めだ。
M5チップ世代のMacBook Airは、相変わらず万人向けの顔をしている。だが、その中身は以前よりずっと濃い。日常用途を軽々とこなしながら、写真編集や短時間の動画処理といった一歩踏み込んだ作業にも、きちんと応えてくれる。そこに、このモデルのいちばん大きな進歩がある。
