チーターのミイラを7体発見、サウジの洞窟、驚きの保存状態 再導入の貴重な手がかりに

チーターのミイラを7体発見、サウジの洞窟、驚きの保存状態 再導入の貴重な手がかりに

DNA解析で亜種レベルまで判明、「これまで分からなかった空白部分を埋めてくれる貴重な情報」

2022年、サウジアラビアの人里離れた奥地の洞窟群の中で、研究者たちが驚くべきものを発見した。チーター(Acinonyx jubatus)のミイラだ。洞窟の乾燥した環境のおかげで、7体のチーターのミイラが最長でおよそ2000年もの間、ほぼ完璧な状態で保存されていた。研究者たちはさらに、約4000年前のものを含む50体以上の遺骨も発見し、遺伝子を解析した結果を2026年1月15日付で学術誌「Communications Earth & Environment」に発表した。

「最初はなぜチーターがそこにいたのか分かりませんでした。これまで洞窟で暮らすチーターが報告されたことはありませんでしたから」と、論文の最終著者で、サウジアラビア、アブドラ王立科学技術大学の生態学者カルロス・ドゥアルテ氏は言う。アラビア半島で自然にミイラ化した大型のネコ科動物が発見されたのは、今回が初めてだ。

「チーターは何世代にもわたり洞窟で暮らしていたようです」と、ドゥアルテ氏は言う。同氏はミイラの発見時には不在だったが、その後チームの研究者たちと共に、ミイラの組織から全ゲノムを抽出し分析した。

 論文によると、発見された古代のチーターは、現生するアジアチーター(A. j. venaticus)と北西アフリカチーター(A. j. hecki)という2亜種に近いことが分かった。チーターがアラビア半島で局所的に絶滅したのは1970年代だ。今回分かったことは、サウジアラビアにチーターを再導入する保全活動に活かせるのではないかと、ドゥアルテ氏は考えている。

「本当に刺激的な仕事です」と話すのは米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の古代ゲノム研究室の大学院生で、古代チーターとそのDNAを研究するモリー・カサット・ジョンストン氏だ。「こうしたミイラ標本から古代ゲノム情報を得ることは、絶滅の恐れが極めて高い亜種への理解を深めるのに大いに役立つと思います」。なお氏は今回の研究に関わってはいない。

激減したチーター、現在の生息域は以前のわずか9%

 チーターはかつてアラビア半島の象徴ともいえる存在だった。彼らは王や要人へ献上され、今日のハヤブサ狩りのように人間と狩りをするように訓練された。

 しかし、やがて人々はチーターを娯楽目的で狩るようになる。さらにチーターの餌となる動物が減少し、アラビア半島全域でチーターは激減した。

 同じことはチーターの生息域全体でも起きている。以前はアフリカからインドにかけて暮らしていたチーターの現在の生息域は、以前のわずか9%にすぎず、数も7000頭ほどだ。

 サウジアラビアで絶滅する前、チーターは砂漠の熱から逃れるため、日差しが遮られ、比較的涼しい洞窟に避難していたと、ドゥアルテ氏は言う。洞窟の中にはチーターの糞や噛み砕かれた獲物の骨も残っていた。「アラビア半島のチーターがこうした洞窟をねぐらやすみかとして使っていたことが明らかになりました」

 洞窟の暗く涼しく安定した環境はDNAの保存に理想的だった。ドゥアルテ氏らがミイラから抽出したゲノムは、チーターの5つの亜種のうち、アジアチーターと北西アフリカチーターと驚くほど遺伝的に近い。

「この地域のチーターの生態や進化の歴史について知れば知るほど、保全活動についてもデータに基づいた的確な判断ができるようになります」と、カサット・ジョンストン氏は言う。「そしてこのような古代ゲノムデータは、これまで分からなかった空白部分を埋めてくれる貴重な情報です」

サウジアラビア政府はすでに保護区を設置

 サウジアラビアで暮らすチーターはアジアチーターだけだと長い間考えられてきた。かつてはサウジアラビアの砂丘や草原地帯を歩き回っていたアジアチーターだが、現在野生で生息するのは30頭未満と推定されている。

 数があまりにも少ない上、全てがイランにいることを考えると、この亜種をサウジアラビアに復活させるのは実現可能とは思えない。

 一方、北西アフリカチーターは近絶滅種(critically endangered)ではあるものの、400頭ほど残っており、飼育下で繁殖されているものもいる。入手しやすく、かつてサウジアラビアにいたチーターと遺伝的にも近いため、サウジアラビアへの再導入に北西アフリカチーターを使えるのではないかとドゥアルテ氏ら研究者は言う。

 同氏によると、サウジアラビア政府はチーターの餌となるオリックスなどのアンテロープ(アフリカやアジア南西部に生息するウシ科の動物の総称)を繁殖させたり、保護区を設置したりするなど、チーターを再導入させるための手段をすでに講じている。

「チーターが戻ってくるのにすばらしい場所となりそうです」と、ナミビアに本部を置く国際的な非営利団体「チーター保護基金」のエグゼクティブ・ディレクターであるローリー・マーカー氏は言う。「一夜にして成功を得られるわけではありません。政府は長期にわたり取り組む必要があり、それを支える経済的な基盤も欠かせません」

 雪に覆われた山地林や熱帯の草原地帯にも適応したヒョウ亜種とは違い、チーターの5つの亜種が概ね適応しているのは草原など開けていて乾燥した環境だ。直近まで生息していたチーターと別の亜種を導入したとしても、サウジアラビアの砂漠に適応できるかは分からない。だがもしチーターが復活すれば、何千年もの昔、彼らの祖先のすみかとなった涼しい洞窟が再びチーターたちとその遺産を暑さから守ってくれるだろう。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏