地球史上最低の海水温はマイナス15℃と判明、どういうこと? 生命はどう生き延びたのか
現代の最低水温より12℃も低い値、約7億年前の「スノーボールアース時代」の過酷な環境が明らかに
約7億年前、地球は厚さ1000メートルを超える氷の層に覆われていた。「スノーボールアース」と呼ばれる凍結状態だ。海は冷たかったが、凍り付かない程度の熱を保っていた。とはいえ、2025年12月9日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された論文によると、当時の海水温は地球史上最低のマイナス15℃まで下がっていたという。現代の最低水温より12℃も低い値だ。
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また、塩分濃度は現在の4倍以上もあり、海水は凍結せずに極低温を維持できたと論文にはある。これらの推定値から、当時地球に生息していた微生物、植物プランクトン、藻類、海綿動物は予想以上に過酷な環境に耐えていたことが示唆される。
「この新しい温度と塩分濃度の値は、環境ストレスのハードルを引き上げます」と、論文の共著者である中国科学院北京分院の地質学者ロス・ミッチェル氏は言う。
太古の岩石に刻まれた鉄の異常な値
今回の研究は、カナダ、ビクトリア大学の地質学者ポール・ホフマン氏の疑問から始まった。海底の岩盤に堆積した鉄の層から採取された鉄の異常な値を、スノーボールアースの海水温によって説明できるだろうかと考えたのだ。
これらのさびの帯は、海水に溶けていた鉄が、突然流入した酸素と反応して形成されたものだ。
論文の共著者であるオーストラリア、メルボルン大学の地質学者マックスウェル・レヒテ氏らの先の研究によれば、鉄鉱床は古代の海岸線付近だった。氷河が海と接し、酸素が豊富な融解水が海に入り込んでいた場所だ。
しかし、スノーボールアースの時代の堆積物は、なぜか約24億年前の海の岩石に堆積した鉄の層よりも重い鉄の同位体(質量数が異なる元素)をより多く含んでいた。
ホフマン氏は、この時代の海の温度がこれらの異常な鉄の堆積物を生み出したのではないかと考えた。
ミッチェル氏はその後、論文の筆頭著者で研究を率いた中国科学院の地球化学者カイ・ルー氏とリャンジュン・フェン氏に協力を求め、より重い鉄の存在を説明できる海水温を計算した。結果はマイナス15℃という超低温だった。
「彼らの手法は気に入りました」と語るのは米サウスフロリダ大学の地球化学者ティモシー・コンウェイ氏だ。「実験データと仮定に基づく理論モデルがベースになっていますが、理にかなっているように見えます」。なお氏は今回の研究に参加していない。
チームはこの異常値が氷河による侵食や熱水噴出孔による可能性も検討したが、分析の結果、その可能性は低いことがわかった。
また計算の結果、氷の縁に接する海が凍結しないよう氷点を下げるには、4倍以上も塩分濃度が高かったと判明した。
クライオジェニアン紀という極端な時代
科学者たちは、生命がどのようにスノーボールアースの時代を含む「クライオジェニアン紀」(8億5000万~6億3500万年前)を生き延びたのかを研究してきた。
ある説では、生命は酸素が限られ、光がほとんどまたは全くない極限環境に適応していたか、食料源となるほかの物質を供給する熱水噴出孔で生き延びていたとされている。
南極のマクマード氷棚に生息する藍藻(シアノバクテリア)のように、氷の上の融解した池で生命は生き延びていたという説もある。
「こうした地表の環境が、氷の時代を通じて多様な生命が存続し、進化を続けることを可能にしたのかもしれません」と米マサチューセッツ工科大学の地球化学者ファティマ・フセイン氏は言う。フセイン氏は今回の研究に関与していないが、2025年、このテーマに関する研究を主導した。
生物が氷の縁で暮らしたり、そこに移動したりすることで、氷床の底にある融解水に含まれる酸素を利用していた可能性もある。しかしその場合、今回の研究が予測する極限環境に対処しなければならなかった。
この説を裏付ける証拠として、南極のビイダ湖の氷床下で発見された細菌が挙げられる。これらの細菌も低温で塩分濃度の高い超塩湖で暮らしている。
「クライオジェニアン紀がどれほど極端だったかについて、私たちは今も学び続けています」とフセイン氏は言う。「だからこそ、生命がこの極端な環境で生き延び、その後、劇的に多様化したことが、なおさら驚くべきことなのです」
