トノサマガエルは“スズメバチに刺されながら”捕食する──神戸大が研究発表 痛みや毒が通用しない……?

トノサマガエルは“スズメバチに刺されながら”捕食する──神戸大が研究発表 痛みや毒が通用しない……?

トノサマガエルはスズメバチの毒針による反撃を受けても捕食できる──神戸大学は12月4日、そんな研究成果を発表した。今後、カエルがスズメバチの毒針に耐える仕組みを解明することで、毒性や痛みを抑制する生理的メカニズムの理解が進む可能性がある。

 スズメバチのメス(女王、働き蜂)は毒針を持っており、もし刺されると注入された毒液によって痛みや組織破壊、溶血、心機能障害などをもたらす。特に、オオスズメバチやキイロスズメバチの場合、小型の哺乳類であれば1回刺されるだけで死に至るという。このようにスズメバチは強い毒性を持つ一方、鳥類やクモ類、カエル類などの複数の捕食者も存在している。

 今回研究チームはそれらの捕食者の中でも、カエル類に属するトノサマガエルに注目。トノサマガエルはスズメバチを捕食する際、毒針を回避しているのか、または毒針に刺されても毒や痛みに耐えることができるのかを検証した。

 研究チームは、成体のトノサマガエル45個体と、3種のスズメバチ(キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、オオスズメバチ)各15個体を用意。1個体のカエルに対して1個体のスズメバチを与える実験を行った。結果、ほとんどのカエルはスズメバチを襲い、約8割の個体が捕食に成功した。

 実験中、捕食の有無にかかわらず、多くのカエルがスズメバチに顔やのど、口内を複数回刺されていた。しかし実験後、衰弱したり死亡したりしたカエルは確認できなかった。研究チームは「トノサマガエルと同程度か、あるいはそれより大きなマウスがスズメバチに1回刺されるだけで死亡することを考慮すれば、トノサマガエルには毒針への高い耐性があることが示唆される」と指摘している。

 トノサマガエルがどのような仕組みで、スズメバチの毒性や痛みに耐えているのかは、現時点では分からない。そのため、この仕組みを明らかにすることで、スズメバチの毒性や痛みを抑制するメカニズムの解明につながる可能性がある。

 この研究成果は、米国生態学会が発行する学術誌「Ecosphere」に12月4日付で掲載された。

Pond frog preys on a giant hornet / トノサマガエルはオオスズメバチを捕食する

動物には毒針を用いて攻撃者を撃退するものがいるが、一部の捕食者は毒針に対する耐性を進化させてきた。有剣類は産卵管が変化した針を使って毒液を注入し、激しい痛みを引き起こす。世界最大のスズメバチであるオオスズメバチ(膜翅目:スズメバチ科)は、大量の毒液を蓄えており、その毒針により哺乳類を死に至らしめることがある。スズメバチ類の成虫を捕食する動物の存在は知られているものの、そうした捕食者が毒針を回避しているのか、刺されても毒や痛みに耐性を持っているのかは明らかでない。トノサマガエル(無尾目:アカガエル科)を含むカエル類の胃内容物からスズメバチ類成虫が確認されており、スズメバチ類成虫を捕食できる可能性が示唆されている。本研究では、カエル類がスズメバチ類の毒針を回避するか、または痛みや毒への耐性を示すかどうかを調べるため、実験室条件下でトノサマガエルに日本産スズメバチ属3種(キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、オオスズメバチ)の働き蜂を供試した。結果、ほとんどのトノサマガエルがスズメバチ類を攻撃した。その際、スズメバチ類がトノサマガエルを毒針で刺す行動も観察された。しかし、最終的に、キイロスズメバチでは93%、コガタスズメバチでは87%、オオスズメバチでは79%の働き蜂をトノサマガエルが捕食した。スズメバチ類に刺されることで死傷した個体はいなかった。以上の結果から、トノサマガエルがスズメバチ類の毒針に高い耐性を持つことが示唆された。スズメバチ類の毒針による激痛や致死効果の生理学的メカニズムを解明する上で、カエル類は有用なモデル動物となる可能性がある。

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