アップルAI戦略が転換点、Siri刷新に競合Googleの技術採用を本格検討 自社開発の遅れが背景に

アップルAI戦略が転換点、Siri刷新に競合Googleの技術採用を本格検討 自社開発の遅れが背景に

米アップルが、長年開発の遅れが指摘されてきたAI分野で、方針転換を迫られている。

先ごろ、自社の音声アシスタント「Siri(シリ)」の次期刷新版の基盤技術として、ライバルである米グーグルの生成AI「Gemini(ジェミニ)」の採用を協議していると報じられた。

この動きは、AI開発競争で苦境に立たされているアップルが、先行する競合の力を借りてでも巻き返しを図ろうとする、切迫した状況を浮き彫りにしている。

■AIの劣勢挽回へ、ライバルとの提携に活路

報道によると、アップルは来年リリース予定のSiri刷新版の基盤技術として、グーグルのカスタムAIモデルを採用することを検討している。これは、長年性能不足が指摘されてきたSiriを抜本的に改善するための動きだ。

この報道を受け、市場は即座に反応。アップル、そしてグーグルの持ち株会社であるアルファベットの株価はともに上昇した。

アップルにとっては長年のAI開発の遅れを解消する一手、グーグルにとってはAI技術の収益化を加速させる一手。これらが市場から好意的に受け止められた。

アップルは、AI新興の米アンソロピックや、「Chat(チャット)GPT」を手がける米オープンAIとも提携を模索してきた。業界トップの技術を持つライバルとの協議に至ったことは、アップルが直面する課題の深刻さを物語っている。

■開発の難航が浮き彫りにしたAI戦略の課題

この戦略転換の背景には、AI開発の遅延がある。特にSiriは、複雑な指示への対応や、外部アプリとの連携において、米アマゾン・ドット・コムの「Alexa(アレクサ)」や「Googleアシスタント」に大きく水をあけられていた。

英ロイター通信は、「Siriはこれまで複雑で複数段階にわたるリクエストの処理や、サードパーティー製アプリとの連携において、競合に劣っていた」と指摘する。

アップルはこの状況を打開すべく、Siriの大規模な機能刷新を進めてきたが、その開発は難航。今年3月には、当初春に予定されていたアップデートが、技術的な問題から1年延期されることが明らかになった。この遅延は投資家の懸念を呼び、同社株は大きく下落。主力製品であるiPhoneの販売への悪影響も指摘された。

■危機感が促す戦略転換、狙いはSiriの性能向上

アップル社内では、AI開発の遅れに対する危機感が頂点に達していた。米ブルームバーグ通信の報道によれば、Siri刷新プロジェクトはソフトウエアエンジニアリング担当のクレイグ・フェデリギ氏らが新たに監督することになり、外部技術の活用が本格的に検討され始めた。

自社開発に固執するだけでは、激化するAI開発競争に追いつけない—。この現実が、アップル経営陣に重い決断を迫った形だ。

アップルの最大の狙いは、Siriの性能を一気に高め、ユーザー体験を改善することにある。もし、Geminiの技術が導入されれば、Siriはより自然な対話や複雑なタスクの処理が可能になり、iPhoneの競争力を再び高める原動力となり得る。

■立ちはだかる「プライバシー」と「独占禁止法」

第1に、プライバシー問題だ。アップルはこれまで、ユーザーのプライバシー保護を最優先事項として掲げてきた。グーグルのAIを導入することで、ユーザーデータがどのように扱われるのか、懸念の声が上がるのは必至だ。

これに対しアップルは、プライバシー保護重視の姿勢を崩さない構えだ。そのカギとなるのが、外部AIモデルを実行する、独自セキュリティー技術「Private Cloud Compute」を組み込んだサーバーだと報じられている。

第2に、独占禁止法上の懸念である。この問題は9月に大きな動きを見せた。

検索市場の独占を巡る訴訟で、米連邦地裁がグーグルへの是正措置を発表。焦点だったアップルとの検索エンジン契約の禁止こそ見送られたものの、裁判所はグーグルに検索データの一部共有を命じるなど、巨大IT企業への監視の目は依然として厳しい。

AIという次世代の基幹技術で両社の連携が深まれば、監視はさらに強まる可能性がある。

■外部連携か自前か、岐路に立つアップルAI戦略

現在アップル社内では、①外部技術を基盤とするSiriと、②自社開発モデルを搭載したSiri、の2つのバージョンを並行して開発し、性能を比較検討している段階だという。

どの技術を採用するかの最終決定は、この検討を経て下されることになる。

AI分野での遅れを取り戻すため、スマホ分野のライバルと手を組むという現実的な選択肢に踏み出したアップル。この決断は、同社がAIという次世代のコア技術において、外部との連携をどこまで深めるのか、その戦略の方向性を占うものとなる。

提携協議の行方と最終的に下される決断が、Siri、ひいてはiPhoneの未来を決定づけることになるだろう。

①もしグーグルとの連携に踏み切れば、アップルが長年築いてきた独自利用体験の境界線は曖昧になり、AI基盤スマホ市場でグーグルの優位性は一層高まる。

②一方、自社開発の道を選べば、その独自性は守られるが、開発の遅れという根本的な課題に改めて向き合うことになる。

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