95%の頭数減少、世界で「トラ」は生き残れるか? ネコ科最強の頂点捕食者が直面する絶滅の危機

95%の頭数減少、世界で「トラ」は生き残れるか? ネコ科最強の頂点捕食者が直面する絶滅の危機

ネコ科の動物はすべて捕食者だ。他の動物を捕えて殺し、食料とする。そして、ネコ科の一部の種は、他よりも強力な捕食者だ。

ネコ科のなかで、最強の「頂点」捕食者として君臨するのがトラだ。ネコ科の現生種のなかで最大であり、動物界に敵は存在しない――ヒト以外には。

当然ながら、近代銃器が発明されるまで、ヒトはトラに対してまったくの無力だった。1900年代初頭まで、世界のトラの個体数は健全な状態だった。

しかし、銃や現代的農業、工業化が、トラの運命を暗転させた(20世紀初頭には世界で10万頭以上いたが、2010年には3200頭以下まで激減。現在は保全活動の成果により、2022年の推計では約4500頭とされている)。

以下では、現在知られている9亜種のトラが直面する苦難について紹介していこう。すでに絶滅した3つの系統についても詳述する。

■1. バリトラ(絶滅)

インドネシアのバリ島にのみ分布したバリトラは、トラの9亜種のなかで最小サイズだった。野生下での最後の確実な観察例は1930年代のもので、それからまもなく絶滅が宣言された。

分布域の狭さに、島の人口増加が重なり、バリトラは森林破壊、獲物の減少、狩猟によって数を減らした。悲劇的なことに、バリトラは一度として飼育下に置かれたことがなかった。そのため、最後の野生個体が姿を消した瞬間、この亜種は永遠に失われた。

■2. カスピトラ(絶滅)

カスピトラは、かつて中央アジアに広く分布した大型の亜種であり、現在のトルコ、イラン、中国西部の河畔域や森林に生息した。堂々たる体格と高い適応能力を備えていたが、カスピトラは大規模な狩猟、生息地の断片化、20世紀なかばのソ連の農業プロジェクトの犠牲になった。正式に絶滅が宣言されたのは1970年代だ。

最近の遺伝学研究により、カスピトラとアムールトラは、DNAの類似性が極めて高かったことが判明した。これを受け、遺伝的にごく近い亜種であるアムールトラを代理とした、再野生化をめぐる議論が活発化している。

■3. ジャワトラ(絶滅)

ジャワトラは、人口稠密なインドネシアのジャワ島に分布したが、森林伐採、農地拡大、密猟が原因で1980年代に絶滅に追いやられた。その後も散発的に未確認の目撃情報はあったものの、数十年にわたり生存の決定的証拠は得られておらず、大多数の保全関係者は絶滅亜種とみなしている。

■4. アムールトラ(絶滅危惧)

シベリアトラとも呼ばれるアムールトラは、世界最大のネコ科動物であり、主な分布域はロシア極東部だが、中国東北部にも少数が生息する。かつて絶滅寸前に陥ったものの、集中的な保全努力と密猟の取り締まりによって、現在の個体数は推定500~600頭まで回復した。しかし、生息地は依然として、違法伐採やインフラ開発、気候変動の絶え間ない脅威にさらされており、アムールトラの将来は安泰とは程遠い。

■5. ベンガルトラ(絶滅危惧)

主な分布域はインドだが、バングラデシュ、ネパール、ブータンにも生息するベンガルトラは、トラの現生亜種のなかで最も個体数が多い。それでも、野生個体数は約2500頭にすぎない。

文化的・国家的シンボルとして重視されてきたベンガルトラだが、一方で生息地の喪失、人間との軋轢、毛皮や体の一部を得るための密猟という深刻な脅威に直面しており、いまだに違法な野生動物市場で高値で取引されている。彼らの生存は、継続的な保全努力と、南アジア全域における生息地の連続性にかかっている。

(余談:ほとんどのベンガルトラは人間を避けるが、すべてではない。歴史記録にある限り最多の死者を出した「人食いトラ」は、400人以上の命を奪い、何年も駆除の手を逃れ続けた)

■6. インドシナトラ(絶滅危惧)

東南アジアの密林に生息する知られざる亜種で、タイやミャンマーなどに分布する。かつてはベトナムやカンボジアでも見られたが、これらの国々では絶滅した可能性が高い。

インドシナトラの野生個体数は400頭未満で、プランテーションやインフラ開発による森林伐採、そして密猟の脅威にさらされている。残された個体の多くは、孤立した森林地帯に取り残されており、遺伝的多様性や繁殖機会の減少により、亜種の長期的存続が脅かされることへの懸念が高まっている。

■7. マレートラ(絶滅危惧)

マレートラは、かつてはインドシナトラと同一視されており、2004年に遺伝的に独立した亜種として認められたばかりだ。マレー半島の熱帯林にのみ生息し、野生個体数150頭未満という危機的な状況にある。主な減少要因は密猟と、アブラヤシプランテーションによる大規模な森林破壊だ。

分布域の大半を占めるマレーシアは、国の象徴であるマレートラを救うため国家規模のプロジェクトを立ち上げたものの、緊急対策と長期的対策を実現しないかぎり、次に絶滅するのはこの亜種かもしれないと、保全関係者は警鐘を鳴らしている。

■8. アモイトラ(絶滅危惧)

アモイトラは、しばしば「実質的に野生絶滅状態」とみなされる。1990年代以降、野生生息地での観察例がないためだ。かつては中国南部に広く分布したが、20世紀なかばに中国政府が展開した捕食者根絶プログラムにより激減した。

ごく少数の飼育個体が、主に中国の動物園に残されているものの、近親交配と遺伝的多様性の減少に直面している。再導入の試みはあるものの、野生個体群は確認されておらず、アモイトラの未来は暗い。

■9. スマトラトラ(絶滅危惧)

スマトラトラは、トラの現生亜種のなかで最小サイズであり、インドネシアのスマトラ島にのみ分布する。断片化した森林生息地に残された個体数は400頭を切っており、絶滅寸前の状況だ。

違法伐採、人間活動の拡大、密猟により、スマトラトラは激減した。それでも、インドネシアでは保全上重要な種として優遇されており、いくつかの保護区が確保されているほか、国際的な注目も高まっている。

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