アップルは、599ドルの低価格MacBookを発売するのか? しかもA18 Proを採用
アップルはこれまで、MacBookという名称が持つブランド力に頼り、販売を促進し価格を高く維持してきた。だが、新しいMacBookに関する現在の計画は、アップルが長年の伝統の1つを破ろうとしていることを示唆している。これはアップル公式ストアであるApple Storeでの表示価格が999ドル(約14万8000円)を下回る初めてのMacBookとなるかもしれない。
■低価格MacBookの中身
この新しいMacBookには少なくとも1つ大きな違いがある。ティム・クック率いるチームはこのMacBookに、2020年にApple Siliconが登場して以来、すべてのARMベースのMacBookで使用されてきたMシリーズのApple Siliconではなく、「Apple A18 Pro」を採用して発売する予定だ。
A18 Proは、9月に発売予定の「iPhone 17 Pro」「iPhone 17 Pro Max」に初搭載される見込みである。開発者向けのツールをすべて動かし、4K動画を編集し、負荷の高いマルチメディア作業をこなせるMacBookを求めるユーザーは、すでにより高性能なMacBook Proに投資しているだろう。とはいえ、ここでの狙いはその市場を獲得することではなく、中価格帯のWindowsノートパソコンやChromebookとの競争にある。
iPad市場が示すように、「Apple A17 Pro」でも軽い作業なら十分な性能を備えている。WindowsノートやChromebookで快適に行えるメール返信、ウェブ閲覧、オフィス作業といった程度は、MシリーズではなくAシリーズ搭載のMacBookでも同様に軽々と動作するはずだ。
■低価格MacBookの価格は、599ドル(約8万9000円)からか
消費者にとって最大の魅力は価格になるだろう。サプライチェーンからの情報によれば、エントリーモデルは599ドル(約8万9000円)から699ドル(約10万3000円)の価格帯で提供される見込みという。これは、近年Apple StoreがMacBookの標準価格として設定してきた999ドル(約14万8000円)を大きく下回る。
これはApple Storeでの価格であることに注意が必要だ。アップルは割引の提供を嫌がるわけではなく、ただそれをトップページで積極的にアピールしないだけだ。教育機関向けの割引は長年にわたって多くの製品で提供されており、MacBook Airの場合は価格を100ドル(約1万5000円)引き下げ、新しいmacOSノートパソコンを購入する学生や教員に対して899ドル(約13万3000円)を提示している。
興味深い事例としてウォルマートがある。この小売チェーンはM1チップ搭載の新しいMacBook Airを大幅な割引価格で販売している。このMacBookは2024年3月に699ドル(約10万3000円)で登場し、その後同じ月に649ドル(約9万6000円)に値下げされた。これらはApple StoreやApple.comでは購入できず、ウォルマート限定である。それでもアップルが製造しサポートする新品のノートであることに変わりはない。
この取引からアップルが得てきたものは何か。2025年に低スペックのMacBookを人々がどのように使用しているか、また価格が購入者の属性にどれほど影響するかという大量の消費者データだ。こうしたデータはすべてAシリーズMacBookプロジェクトにフィードバックされているに違いない。
■低価格MacBookの発売時期は2025年末から2026年初頭?
発売時期を検討する際の鍵となる要素はApple Siliconだ。A18 ProはiPhone 17 ProとiPhone 17 Pro Maxの両方に搭載されるため需要が非常に高くなるだろう。アップルは生産ラインが立ち上がり初期需要に対応するまでの短期間は、その在庫確保に注力したいと考えるはずだ。
需要が落ち着けば、A18 Proを搭載したMacBookに生産能力を振り向けることが可能になる。サプライチェーンは2025年末の発売を示唆しているが、アップルが在庫を積み増して2026年初頭まで待つことを選ぶ可能性もある。後者であれば、この新しいMacBookは市場で単独の期間を確保でき、ホリデーシーズンの贈り物としてMacBookを購入しようとする人々は、現行の999ドル(約14万8000円)の選択肢を選ぶことになるだろう。
アップルは次期M5チップ搭載MacBookとのバランスも図るとみられる。MacBook Airがチップのリリースサイクルの終盤に回される傾向がますます顕著になりつつあり、M5搭載MacBook Airは2026年末まで登場しない可能性がある。この遅れは、より安価なMacBookが存在することで消費者の目には小さく映るだろう。
2025年にはM5搭載のMacBook Proモデルがハイエンド市場を占め、新しい低価格MacBookがポートフォリオの下位層を担い、MacBook Airは遊撃手のように年末に残った需要を拾い上げる役割を果たすことになる。
もちろん、アップルがApple Storeの表示価格として999ドル(約14万8000円)を下回る準備ができていれば、の話である。
10万円を切るMacBook、年内登場か
台湾メディアDigiTimesの現地時間8月11日の報道によると、「iPhone」用の「A18 Pro」チップを搭載した低価格の「MacBook」が、年内にも599ドル(約8万9000円)で発売される可能性がある。
この報道は、6月末に著名アナリストMing-Chi Kuo氏が示した、Appleが同チップを搭載した新しいMacBookを開発中という見解を裏付けるものだ。599ドルという価格は、Appleが低価格コンピューター市場に参入するうえで大きな一歩となる。ただし、今回の報道によれば価格帯は599ドルから最大699ドル(約10万4000円)の可能性がある。
Appleの広報担当者は取材に対し、すぐにはコメントを出さなかった。
現在、Appleのラップトップで最も安いのは999ドルのMacBook Airで、「M4」チップ、16GBのRAM、256GBのSSDを搭載する。Appleは長らくMacBook標準モデルのRAMを増やさなかったが、2024年にAI機能群「Apple Intelligence」に対応するためこれを実行した。一方で、A18 Proチップを搭載した「iPhone 16 Pro」のRAMが8GBであることを踏まえると、低価格MacBookではRAM容量が抑えられる可能性もある。
AppleはiPhoneで優位性を保っているが、MacBookでは同様の成功を収めていない。Statistaによると、Appleの世界PC市場シェアは9.2%にとどまっている。
DellやHP、レノボなどの競合他社は、幅広い製品ラインアップで多様な価格帯や法人需要に対応しており、Appleより高い市場シェアを持つ。より安価なMacBookが実現すれば、AppleのPC市場シェア拡大につながる可能性がある。
このA18 Pro搭載MacBookは、Appleのラインアップでは最小となる12.9インチディスプレイを採用する見込みだ。DigiTimesによれば、生産は2025年第3四半期末に始まる可能性があり、発売は年末または2026年初頭になるとみられる。