アップルの対米投資が約88兆円に拡大、「iPhone」カバーガラスは100%米国製に
Appleは今後4年間の米国内生産に向け、さらに1000億ドル(約14兆7000億円)を投資すると発表した。
同社は米国時間8月6日、幅広い内容を含む発表の中で、米国での雇用と生産に向けた投資を拡大し、総額を6000億ドル(約88兆3000億円)に引き上げると述べた。
Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は同日、Donald Trump米大統領とともにホワイトハウスで「American Manufacturing Program」を発表。これには、Corningと提携してケンタッキー州ですべての「iPhone」と「Apple Watch」のカバーガラスを製造する計画も含まれる。Appleはこの取り組みに25億ドル(約3700億円)を投じる。
「世界で販売されるすべての新しいiPhoneと新しいApple Watchには、ケンタッキー州で製造されたカバーガラスが使われる」とCook氏は述べた。iPhoneの一部のカバーガラスはすでにCorningの同州ハロッズバーグ工場で生産されており、全ての生産が同工場に移管される時期は不明だ。
Cook氏は、同社が米国内にエンドツーエンドのシリコン供給網を構築し、米国での半導体の設計、製造、梱包を増やす計画だと述べた。
「米国のイノベーションは、当社のあらゆる活動の中心にある」とCook氏は語った。「当社はここで成長し、雇用している。全50州のサプライヤーやパートナーを通じて45万人の雇用を支えている」
今回の発表の中で、Appleは2月に表明した、今後4年以内に米国で2万人を雇用する計画にも改めて触れた。
Trump氏はAppleとCook氏を称賛し、同氏を「先見の明がある人物」と評した。
また、他国から輸入される半導体に100%の関税を課すという自身の主張を繰り返した。「半導体企業はみな母国に戻ってくるだろう」とTrump氏は述べた。「米国内で生産する、または必ず生産すると約束するなら、関税はかからない」
Appleの戦略転換
Appleは2025年に入り、iPhoneなど主力製品の大半を製造している国に課せられた高い関税を受け、製造方針を転換している。Appleを含む主要IT企業は米国内でスマートフォンを製造していないが、海外製の部品を使った製品の一部組み立ては米国内でも可能だ。
同社は関税を回避し、中国の広範な製造サプライチェーンへの依存度を下げるため、一部の生産を中国からインドやベトナムなどに移管した。スマートフォンメーカーは最大25%の関税に直面しており、Appleは製品の値上げを避けるべく取り組んでいる。同社は現在、9月の「iPhone 17」(仮称)発売に向けて準備を進めているとみられる。
記者会見では、AppleがiPhoneを全て米国内で製造する可能性について、Cook氏が質問を受けた。同氏は、一部の部品は米国製であり、米国内での組み立ても可能だとしつつ、全てを米国製にするとは約束しなかった。
Trump氏は、Appleのサプライチェーンはかなり前から構築されていると述べた。「われわれは同社にインセンティブを与えるかもしれない」と述べ、すべて米国製のiPhoneが「いつか」実現するとの楽観的な見方を示した。
Appleの発表には、Texas Instruments、Broadcom、Applied Materials、TSMCなどとの提携も含まれる。これらの一部では、米国における半導体の開発および製造を拡大するという。
Appleは、ヒューストンに自社向けサーバーを生産する新工場を開設している。工場は2026年から量産に入る予定だ。Appleは、これらのサーバーが「Apple Intelligence」の取り組みを支えると述べた。
アップル、iPhone用ガラスすべて米国製に 製造回帰で6000億ドル投資
米アップルは8月6日、アメリカへの新たな1000億ドル(約15兆6000億円)の投資を発表し、今後4年間の総投資額を6000億ドル(約93兆円)に引き上げると明らかにした。
米アップルは8月6日、アメリカへの新たな1000億ドル(約15兆6000億円)の投資を発表し、今後4年間の総投資額を6000億ドル(約93兆円)に引き上げると明らかにした。同時に「アメリカン・マニュファクチャリング・プログラム(AMP)」と名付けた新構想を発表。国内製造の強化を軸に、サプライチェーンの再編と雇用創出を目指す。iPhoneやApple Watchに使われるガラス部品は、今後すべてケンタッキー州で製造される見通しだ。
AMPには、ガラス大手のCorning(コーニング)や、Texas Instruments(TI)、Broadcom、Amkor、GlobalWafersなど10社が初期パートナーとして参加する。Corningとの連携では、世界最大規模のスマートフォン用カバーガラス製造ラインをケンタッキー州ハロズバーグに設置し、新たなイノベーションセンターも開設。将来的にはすべてのiPhoneとApple Watchに、ケンタッキー製ガラスが使われることになる。
半導体分野では、TSMCのアリゾナ工場でApple製品向けに190億個超のチップを2025年中に製造する計画だ。BroadcomやGlobalFoundriesとも協業し、5G通信向け半導体の国内生産も加速する。Appleは、これらのサプライヤーとの連携を通じて、米国内での「シリコン製造エコシステム」の構築を進める構えだ。
サーバー開発にも力を入れており、ヒューストンではApple Intelligence(AI機能)を支える専用サーバー新工場の建設を進める。すでに試作機が完成しており、2026年に量産開始予定だ。これらのサーバーは、Apple独自のセキュリティアーキテクチャを備えた「Private Cloud Compute」を実現する中核となる。