三毛猫の毛色はどう決まる? 九州大などが遺伝子を特定 「メスばかり」の謎、核心に近づく

三毛猫の毛色はどう決まる? 九州大などが遺伝子を特定 「メスばかり」の謎、核心に近づく

九州大学や近畿大学、国立遺伝学研究所などによる研究グループは、三毛猫やサビ猫の毛色に関与しているとされてきた「オレンジ遺伝子」の正体が、X染色体上の「ARHGAP36」だと突き止めた。三毛猫やサビ猫におけるオレンジの毛が、「オレンジ遺伝子」によって作られるという仮説は、120年以上前から存在したが、その実体は不明だった。

 三毛猫やサビ猫は、白・黒・オレンジの3色が入り混ざっているのが特徴で、ほとんどがメスである。これは、黒とオレンジの毛色を決める遺伝子がX染色体上の同じ場所にあり、X染色体の片方に「黒型」、もう片方に「オレンジ型」を持つメス猫の場合、細胞ごとにどちらのX染色体が働くかがランダムに決まるためだとされてきた。オス猫はX染色体を1本しか持たないため、オレンジと黒を同時に持つことができず、染色体異常などの例外を除き、三毛・サビ模様にはならないとされる。

 研究グループは、福岡市内の動物病院の協力を得て、さまざまな毛色を持つ18匹の猫のDNAを解析。その結果、オレンジ毛を持つ猫のX染色体にはARHGAP36遺伝子内に約5000塩基の欠失があることが確認された。さらに、国内外の50匹以上の猫で検証したところ、この欠失の有無とオレンジ毛の有無が完全に一致。オスの三毛猫(染色体異常でXが2本ある場合生まれる)にもこの欠失がみられたという。

 さらに、研究チームが三毛猫の皮膚を部位ごとに分析したところ、オレンジ毛の部分ではARHGAP36の発現が高く、メラニンの生成が抑えられていた。これにより、黒の色素(ユーメラニン)よりも、赤みを帯びた色素(フェオメラニン)が優勢になり、オレンジ色の毛が生まれていると、研究チームは結論付けた。

 研究チームは今後、この欠失がメラニン合成の仕組みにどのような影響を及ぼしているのか、さらなる解析を進めるとしている。さらに、ARHGAP36はヒトにも存在しており、ある種の腫瘍、先天性の減毛症、皮膚の基底細胞がん、異所性骨化症といった病気との関連が指摘されていることから、研究チームはこうした病気の解明にも研究が役立つとの見方を示している。

 研究成果は5月16日、米学術誌『Current Biology』に掲載された。

九州大、「三毛猫の毛色遺伝子」を発見 120年の謎を解明...雄の三毛猫が珍重される理由も明らかに

猫はどこか神秘的なところがあり、魅力的な動物です。

今回、九州大学の佐々木裕之特別主幹教授らの研究チームが、三毛猫の毛色を決める遺伝子を特定したと発表しました。黒と茶(オレンジ)の毛色に関与する遺伝子が明らかになり、それがX染色体上の「ARHGAP36」であることがわかりました。この遺伝子の一部が欠損するとメラニン色素が生成されず代わりに毛が茶色に、欠損がない場合は毛が黒くなります。

雄の三毛猫は非常に珍しいことから「幸運を呼ぶ猫」として大切にされてきました。では、その背景を見てみましょう。

ココがポイント

X染色体にある「ARHGAP36」。一部が欠損するとメラニン色素ができず、代わりに茶色の色素が増えて毛が茶色になる。

出典:共同通信 2025/5/16(金)

三毛猫のオレンジ(赤茶)または黒の毛色を決める遺伝子を発見した

出典:時事通信 2025/5/16(金)

性染色体のXにある「ARHGAP36」で、配列の一部に欠失があるとオレンジの色素が合成され、欠失がないと黒の色素が合成

出典:時事通信 2025/5/16(金)

三毛猫はメスがほとんどで、オスはめったに生まれない。性差が生じるのは、今回特定した遺伝子が性別を決めるのに関わるX染色体

出典:日本経済新聞社 2025/5/16(金)

エキスパートの補足・見解

科学の進歩により、三毛猫の遺伝子が解明されました。

昔から三毛猫のほとんどは雌で、雄は非常に少ないとされてきました。そのため、雄の三毛猫は「幸運を呼ぶ猫」とされ、船に乗せると航海が安全になるという言い伝えがあります。今回、それが科学的に裏付けられたのはとても興味深いことです。

実際、第1次南極観測隊が出発する直前、ある人から託された雄の三毛猫が、航海の安全を願って南極観測船「宗谷」に乗せられたという逸話があります。

この猫は隊長・永田武の名前をもらい、「たけし」と名付けられて観測隊の一員として同行しました。

茶(オレンジ)や黒の毛色を決める遺伝子はX染色体に存在します。雌はX染色体を2本持つ(XX)のに対し、雄は1本(XY)なので、三毛猫のほとんどが雌です。

ごくまれに雄で三毛になるのは、X染色体を2本持つ「XXY型」の遺伝子型によるものです。Y遺伝子も持っているため、外見は雄ですが、生殖機能をもたないものがほとんどのようです。

猫という身近な存在を通して、遺伝学の奥深さを実感させてくれると同時に、三毛猫にまつわる物語にも新たな光を当ててくれる意義深い成果です。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏