列車が自ら安全判断 運転停止や再開、遅延回復も自律で――鉄道総研が自動運転で新技術
JRグループの道総合技術研究所(鉄道総研)は5月13日、列車が自律的に安全を判断し、障害物を見つけて自動で停止したり、障害物の除去を確認して自動で運転再開したりできる「自立型列車運行制御システム」を開発したと発表した。
地上の信号設備に依存せず、車上のみで列車の停止から運転再開までを自動化する技術は「世界初」という。
前方の障害物は、カメラやLiDARセンサーを用いて線路上の障害物を検知。線路内・沿線の状態や車両の状態などを集約した「鉄道ダイナミックマップ」を更新しながら、その情報に基づいて自動的に運行を判断する。
旅客の動き、災害による運転規制、消費電力などの情報もベースに安全を判断。踏切などを無線通信で制御しながら運行する。
列車間で通信する技術も導入。ダイヤ乱れ時は、遅延が早期に回復するよう運転整理できる他、省エネ運転のための広域での運行管理も自動的に行える。
鉄道総研内の試験線でプロトタイプの実証試験を実施。設定した運転パターンに従って踏切などを制御しながら自動走行できること、線路内の障害物情報が鉄道ダイナミックマップに登録され、その情報をもとに必要な場合は列車を停止でき、運転再開が可能な場合は自動で走行を再開する――といった機能を確認できた。
同システムにより、運転業務だけでなく、指令などの運行管理業務を含めた省人化が図れるとしている。
JR山手線、2028年までに自動運転導入へ 営業中の列車で実験
JR東日本は、JR山手線で、乗客が乗ってる営業列車での自動運転を目指した実証運転を、10月ごろから2カ月程度行う。加速・惰行・減速などの自動運転に必要な運転機能、乗り心地、省エネ性能などを確認したり、知見を蓄積したりする。
山手線は2028年ごろまでに自動運転の導入を目指している。将来は、運転士なしでの運行の実現を目標に、開発を進める。
今回の実験は、E235系(2編成)の営業列車を使用して、加速・惰行・減速などの自動運転に必要な運転機能、乗り心地、省エネ性能などを確認したり、知見を蓄積したりする内容。通常の列車と同様に運転士が乗務し、必要な機器操作は行う。
JR東は、加速時間を短くし、惰行の時間を長く、減速時間を短くすることで運転エネルギーを削減した省エネを目指している。山手線では、2020年度から乗務員の操縦による省エネ運転の研究に取り組んでおり、自動運転を目指した開発でもその知見を活用。今年2月には、前後に列車が走行している環境で営業時間帯に試験を行った。
JR東、新幹線に「運転士なしの自動運転」世界初導入へ 2029年度、上越新幹線から
JR東日本は9月10日、新幹線で、運転士が乗務する必要のない「ドライバレス運転」(GOA3、GOA4)を、世界で初めて上越新幹線から導入すると発表した。
2029年度、新潟駅~新潟新幹線車両センター間(5.1km)の回送列車へのドライバレス運転(GOA4)導入を目指し、地上設備や車両改造などの工事に着手。将来は、北陸新幹線と東北新幹線でも自動運転の導入を目指す。
鉄道の自動運転は、「GOA」(Grade Of Automation)でレベルが定められている。「GOA2」は運転士が列車の先頭に乗務する自動運転、「GOA3」は係員が乗務するが、列車の前頭に乗務する必要がないドライバレス運転、「GOA4」は係員が乗務する必要がないドライバレス運転だ。
JR東はまず2028年度に、長岡駅~新潟新幹線車両センター間(60.8km)の営業列車と回送列車で自動運転(GOA2)を導入する計画。次に、新潟駅~新潟新幹線車両センター間(5.1km)の回送列車で、ドライバレス運転(GOA4)導入を目指す。
2030年代中頃には東京駅~長岡駅間に自動運転(GOA2)を導入した後、東京駅~新潟駅間の営業列車のドライバレス運転(GOA3)、回送列車のドライバレス運転(GOA4)導入を目指し、検討を進めていく。
ドライバレス運転の導入に向け、自動でダイヤ通りに列車を運行するための装置や、異常を自動で検知する装置などの研究開発に取り組んでいる。
加速・減速・定位置停車の制御の他、臨時速度制限・臨時停車にも対応しながらダイヤ通りの走行や効率的な省エネ運転を行うための研究開発を行っている。
また、台車の異常を検知する既存のモニタリング装置を活用し、走行中の異常な振動を検知すると自動で緊急停止させる機能の研究開発も進めている。