アップル、「Siri」のAI機能強化が2026年にずれ込む見通し 目玉機能の開発難航
米アップルは先ごろ、音声アシスタント「Siri」のAI(人工知能)機能の強化が2026年にずれ込むとの見通しを明らかにした。アプリ連携や個人情報の活用など、次世代Siriの目玉機能の開発が難航しているようだ。
Siri開発の遅れ、競争力低下に
アップルは2024年6月に開催した開発者向け年次イベント(WWDC24)で、生成AIをスマートフォン「iPhone」などの主力製品に導入する「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を発表した。Siriの機能強化もその一環で、ユーザーの状況に応じた応答や、アプリ内での操作などを2025年内に実現するはずだった。
しかし英フィナンシャル・タイムズ(FT)や米CNBCなどによると、「オンスクリーン認識」など主要な機能の導入が延期されることになった。例えば、メッセージスレッド内の住所をSiriが識別し、要求に応じてユーザーの「連絡先(アドレス帳)」アプリに追加するといった機能。もう1つ導入が延期されたのは、Siriがアプリ間でアクションを実行するというもの。複数のアプリを操作し、スケジュール計画の作成を支援するといった機能である。
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Apple delays Siri AI improvements to 2026
米テック大手の間では、AIによる音声ベース・エージェント機能の開発・展開競争が激化している。米アマゾン・ドット・コムは2月下旬、生成AIに対応した音声アシスタント「Alexa+(アレクサ・プラス)」を発表した。米グーグルの生成AI「Gemini」は韓国サムスン電子の最新スマホ製品ラインに統合されている。生成AIブームのきっかけとなった米オープンAIは、チャットボット(対話型AI)「Chat(チャット)GPT」で独自の音声機能を展開している。
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アップルもApple Intelligenceの機能の1つとしてChatGPTと連携したり、独自のクラウド経由AIサービスの構築を進めたりして競合に対抗する。だが、Siriの開発の遅れは競争力低下につながりかねないとも指摘されている。
Apple Intelligenceで巻き返し
アップルは2024年10月下旬、Apple Intelligenceの提供を英語圏で開始した。2025年4月には、日本語を含む他の言語にも対応した。今後、iOSソフトウエアのアップデートを通じて利用できる言語を増やし、iPhone 16シリーズの需要を喚起する狙いだ。
ただ、アップルは最近、中国市場で競合にシェアを奪われている。中国政府は国内で提供される情報に対して厳格な検閲を行っており、AIも例外ではない。中国ではChatGPTなどの国外の生成AIが禁止されており、アップルもApple Intelligenceを展開できていないという状況だ。こうした中、同社は中国アリババ集団などの地場IT(情報技術)大手との協業を通じて、中国政府の検閲要求に対応する体制を構築している。
米ブルームバーグ通信によると、アップルは中国と米国に複数のチームを置き、Apple Intelligenceを中国に適応させる作業を進めている。これより、2025年後半に中国当局からAI機能の承認を得たい考えだ。
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開発者との連携強化が急務
Siriの進化の減速が明らかになったことで、アップルのAI戦略における課題が浮き彫りになったと指摘されている。同社は、次世代Siriの実現に向け、アプリ開発者向けの支援強化を図っている。開発者は、次世代Siriが自社アプリ内の機能を利用できるようにするためのコードを作成できるようになった。
しかし現状、開発者はアップルがアップグレード版Siriのベータ版をリリースするまで、それがSiriとどのように協調動作するのか、具体的な確認ができない状況にある。アップルには、開発体制の強化や、開発者との一層の連携強化が求められそうだ。