米アップルがAI開発に言及しないのはメリットか

米アップルがAI開発に言及しないのはメリットか

米マイクロソフト(MSFT.O), opens new tabのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は1月30日の四半期決算発表の冒頭あいさつで人工知能(AI)に36回も言及し、ハイテク業界の話題はAI一色といった様相を呈している。しかし、例外がある。アップル(AAPL.O), opens new tabだ。同日の四半期決算発表の際、一度も触れなかった。スマートフォンの巨人は、静かな自制心で爽快な逆張りの賭けに出ている。

確かに、AI事業を前面に押し出す企業の銘柄は市場でパフォーマンスが良好だ。マイクロソフトと、グーグルの親会社アルファベット(GOOGL.O), opens new tabの株式は過去1年間、投資家にそれぞれ62%と42%のトータルリターンをもたらした。一方、アップルは29%にとどまった。

設備投資も、アルファベットは直近四半期に前年同期比70%増えた。メタ・プラットフォームズ(META.O), opens new tabは、今年はAIインフラを軸に前年よりも設備投資が90億ドル増える可能性があると明らかにし、株価は12%急騰した。これに対し、アップルの昨年10―12月期の設備投資は前年同期比で減少している。

アップルのティム・クックCEOはこれまで、AI開発を舞台裏で進めていると語ってきた。焦点を置くのはイメージサーチ(画像検索)精度を高めたり、iPhone(アイフォーン)の充電を長持ちさせたりするなど製品の品質向上だ。

アップルはまた、製品について準備が整うまで明らかにしたがらないという特徴もある。同社が音声アシスタント機能「シリ(Siri)」とメッセージアプリ「メッセージ」での生成AI活用に取り組んでいるのは周知の事実だが、何がいつリリースされるのかは今も謎に包まれている。

クック氏はAI開発に関してより多くの詳細を明らかにすると約束したが、それも年内とは言えこれからだ。こうしたためらいは、機会損失につながった恐れもある。仮に株価が過去1年間マイクロソフト並みに上昇していれば、時価総額は現在の水準よりも7000億ドル高かったはずだから。

ただ、アップルは他社のAI投資から間接的な恩恵を享受しそうだ。

AIが定着すればユーザーは仮想世界で今までよりも多くの時間を過ごすようになり、アップルの新しいヘッドセットなど機器の販売増加につながる可能性が出てくる。

さらに、多額の設備投資を行ったからと言って実を結ぶ保証はない。もしも投資が失望に終わったり、アップルが過去に携帯電話事業で行ったような業界秩序の破壊を現在の新興企業が成し遂げたりすれば、クック氏の自制はいよいよ賢明に見えるだろう。他社がせっせとAIブームの過熱に手を貸している中、アップルはいつもほど時流に乗っていないかもしれない。投資家はそれを喜ぶべきだ。

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