太陽の約100億倍明るい宇宙の謎の青い閃光を確認、正体に迫る「本当に素晴らしい発見」

太陽の約100億倍明るい宇宙の謎の青い閃光を確認、正体に迫る「本当に素晴らしい発見」

急速に暗くなる大爆発「LFBOT」の後で前例のない点滅現象を観測

 2022年9月、天文学者たちは口をポカンと開けて、米国カリフォルニア州南部の望遠鏡が捉えたまぶしい青の閃光(せんこう)を眺めていた。地球から44億光年離れた銀河で、太陽の約100億倍も明るい大爆発が起きたのだ。

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 さまざまな望遠鏡をこのエリアに向けて爆発を観測したところ、この現象が「LFBOT(Luminous Fast Blue Optical Transient)」という爆発に似ていることに研究者たちは気付いた。3カ月後、研究者たちは再び夜空の同じ位置で、3分間の露光を5回繰り返した。その画像を確認してみると、ごく短時間のまぶしい光が再び発生していた。

「私たちは画像を見つめ、これは現実なのだろうかと考えていました」と米コーネル大学の天文学者アナ・ホー氏は振り返る。「あれほど速い閃光もあれほど明るい閃光も見たことがありません。もちろん、別の現象の直後に見えたこともありません」

 ホー氏らは2023年11月、この不思議な爆発現象の性質を巡る長年の論争に決着をつけるため、LFBOTに関する論文を学術誌「ネイチャー」に発表した。論文では、質量の大きな恒星の残骸が、大爆発の発生源ではないかと指摘している。具体的には、ブラックホールまたは中性子星だ。

 LFBOTという現象は2018年に発見された。明るく輝いてから数週間かけて減衰する超新星爆発とは違い、LFBOTは数日で暗くなる。そして今回、最初の爆発から数カ月たっても、わずか数十秒の明るい閃光を繰り返すという特異な振る舞いが初めて観測された。

 ある高速度の可視光カメラでは重要なデータが捉えられた。繰り返される閃光の強さを確認できるだけでなく、この前例がないほど短い時間尺度で起こる現象を詳しく知ることができるデータだ。

「最初は人工衛星か何かの奇妙な画像だと思いました」とホー氏は話す。「ほかの望遠鏡を使い、自分たちが見たものを検証しようとしました。すると数カ月間で合計14の閃光が見つかり、現実であることがはっきりしました。天文現象の残骸が、本当に燃え上がっているのです」

 この発見は科学界に響きわたり、世界中の研究者が魅了され、やる気を起こしている。「この発見に興奮しているのは、何より前例がないことだからです」と論文の共著者である英リバプール・ジョン・ムーア大学の天体物理学者ダニエル・パーリー氏は話す。「誰もこのようなものを見たことがありませんでした。爆発現象の仕組みについて、私たちの理解を広げてくれる発見です」

閃光の観測

 ホー氏をはじめ、米パロマー天文台の広視野カメラ「ツビッキー・トランジェント・ファシリティー(ZTF)」に関わる研究者たちは、ZTFが2日に一度、北の全天を撮影した画像を分析している。ZTFは明るさが変化する天体を探すための望遠鏡だ。LFBOTは超新星の約10~100倍も明るいが、ごく短時間しか起こらないため、ほとんどの望遠鏡は閃光を見逃してしまう。

「一晩に一度見るだけでは、数分しか続かないような現象は見逃されてしまいます」とホー氏は話す。「今回は本当に幸運でした」

 光速に近いスピードで物質を放出するLFBOTのような、強力で高速で明るい現象をつくり出すには、高エネルギーの発生源が必要だ。天文学者たちは2つの有力候補を挙げている。中性子星とブラックホールだ。

 大きな星がその一生を終えるときに超新星爆発を起こすと、中性子星として知られる高密度の核が残る。そして、十分な密度があれば、崩壊してブラックホールになる。

「ブラックホールや中性子星でなければ、光速に近い物質の放出は非常に難しいでしょう」と、論文の査読を担当した米コロンビア大学の物理学者ブライアン・メッツガー氏は話す。「本当に素晴らしい発見です。ジェットに対する閃光の配置が正確にわかります。これまで、現象を横から見ているのか、正面から見ているのかはっきりしていませんでした」

 しかし、何がLFBOTを引き起こしたのかは謎のままだ。星が爆発して高密度の核を残し、ブラックホールや中性子星などの高密度な星(コンパクト星)が生まれる間に起こるのだろうか? それとも、コンパクト星がほかの星を破壊し、活性化するときに発生しているのだろうか? それに、大爆発から何カ月も後の残響のようなものが、なぜこれほど素早く強烈な閃光を放てるのだろう?

 パーリー氏は、流れ出るジェットから発生する閃光が、天体の自転によって灯台の光のように地球に届いているのではないかと考えている。中性子星の磁場が突然、閃光を発生させた可能性もある。これは、若く磁力の強い中性子星で見られる現象だ。あるいは、ブラックホール周辺にある高密度の降着円盤の変動によるものかもしれない。この現象は明暗の変動を伴うことで知られる。

「これがいったい何なのかは、まだはっきりしていません」とホー氏は話す。「それでも私たちが研究を続けるのは、その正体についての有力なアイデアはすべて、長く待ち望まれている重要な現象の発見につながる可能性があるからです」

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