製鉄技術が誕生するはるか昔、古代の人々は宇宙から落ちてくる「金属」で宝飾品や武器を作っていた

製鉄技術が誕生するはるか昔、古代の人々は宇宙から落ちてくる「金属」で宝飾品や武器を作っていた

ツタンカーメンの王墓からも鋭い短剣をはじめ隕鉄製の副葬品を発見

 製鉄技術が誕生する以前、古代の人々は隕石に含まれる鉄で装飾品や武器を作っていた。というのも、この10年ほどの遺物研究により、製鉄が始まる以前の時代、一部の文明では鉄隕石(隕鉄)を使ってさまざまな物が作られていたことが明らかになってきたのだ。5200年ほど前とされるナイル川沿いのゲルゼ遺跡の墓地からは、隕鉄製のビーズが9個出土した。3300年ほど前に封印されたツタンカーメン(トゥトアンクアメン)の王墓からは、美しく、切れ味も鋭い短剣をはじめとする隕鉄製の副葬品が見つかっている。隕鉄で作られた宝飾品や武器は、エジプト以外でも見つかっていて、北米ではビーズが、中国では斧類が、トルコでは短剣が発見された。

 それらの文化において人々が隕石の起源を理解していたかは、ほとんどわかっていない。ただ、紀元前24世紀の第5王朝最後の王 、ウナスの墓の葬礼文書には、空の金属についての話が出てくる。つまりエジプトでは、空から鉄が降ってくると認識されていただけでなく、そのことが彼らの神秘主義的な信仰の一部に取り込まれていた可能性がある。

 人類がどの程度、宇宙からの鉄を利用してきたかを知ることは容易ではない。考古学の記録には、青銅器時代の遺跡から出土した鉄製品が何百点も記載されているが、ほとんどが分析されていないし、多くは飾りピンや指輪だったらしい、さびた小さな金属片にすぎないのだ。

「これまで発掘された遺物のうち、詳細に調査された量がどれほど少ないかを知ったら、きっと驚きますよ」と話すのは、キプロス研究所で科学的手法を用いて考古学を研究するティロ・レーレンだ。彼は隕鉄と製錬された鉄を区別することに関心をもっているが、それは単に宇宙からもたらされた金属を見つけるためだけでなく、鉄器時代がどこでどのように始まったかを知るうえでも重要なのだ。

 人類が鉱石から安定的に鉄を取り出せるようになったのは、せいぜい紀元前2千年紀の終わりからだと、大方の専門家は見ている。鉄の製錬には高温の熱が必要なため、ほかの金属より本格的な使用が遅れた。「製鉄の開始はビッグビジネスの到来を意味します。武器を安く作れるようになるのですから」と話すのは、フランスのソルボンヌ大学で地球化学を研究するアルベール・ジャンボン名誉教授だ。「一つの経済から新たな経済への転換が起きます」

 ジャンボンはこの10年余り、青銅器時代の鉄製品を探し出して分析を行ってきた。調査のためにやって来たシリアのアレッポでは、古代都市ウンム・エル・マッラの紀元前2300年の墓から出土した球状のペンダントを調査した。アレッポの博物館には、港湾都市ウガリットの遺跡から出土した、紀元前1400年頃のものとされる鉄刃を付けた銅の斧頭もあった。携帯型の蛍光X線分析装置でそれらの化学組成を調べ、分析した結果、ジャンボンは両方とも隕鉄で作られたものだという結論に至った。

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