火星はかつて「水の惑星」だった…!史上初の「地球外生命」を持ち帰る日は近い?最新探査車パーシビアランスが発見した「シアノバクテリア」と「生命の痕跡」の可能性

火星はかつて「水の惑星」だった…!史上初の「地球外生命」を持ち帰る日は近い?最新探査車パーシビアランスが発見した「シアノバクテリア」と「生命の痕跡」の可能性

「夢は、ピチピチした生命体を持ち帰ること」

 火星探査の第一人者、臼井寛裕教授(JAXA宇宙科学研究所)は、そう話します。

 今、火星ではNASAの最新鋭の探査車「パーシビアランス」が、生命の痕跡を見つけようと活動中ですが、研究者たちを驚かせたのは、かつて湖があったとされる場所で見つかった紫色の「謎の物質」です。この物質が、地球上では生命と深く関係するものだったことから、火星にも生命が存在していたのではないかと期待が高まっているのです。

 パーシビアランスは火星の調査をしながら、搭載されたドリルを使って地球に持ち帰るためのサンプル採取を行っています。臼井さんは、そのサンプル検討チームの一員として、世界の科学者と毎週のようにサンプルを持ち帰るための議論を重ねているといいます。

 宇宙のどこかに地球外生命は存在するのか。人類が長年追い求めてきたこの謎を解き明かそうと進められている火星探査の最前線に迫ります。

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「サイエンスZERO」NHK Eテレ日曜夜11:30~ 再放送は土曜午前11:00~

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火星は「水の惑星」だった!

 宇宙旅行や移住先としても話題にのぼる火星。まずは簡単なおさらいから始めましょう。地球の隣にある惑星で、表面は酸化鉄を多く含む岩や鉄に覆われ、赤っぽいのが特徴です。直径は地球の半分ほど。主に二酸化炭素でできた大気はとても薄く、平均気温はマイナス50℃を下回ります。

 それでもかつての火星には生命を育む条件がありました。およそ35億から40億年前には液体の水が海のように大量にあったことに加え、火星には生命の材料である有機物も存在し、火山があるため生命が生きていくエネルギーもあると考えられています。あとは決定的な証拠を見つけるだけ、つまり生命を手にする段階まできているのです。

水だ! 川だ! あとは生命だ! NASA探査車がミッション遂行中

 大きな期待を背負って、NASAの最新探査車「パーシビアランス」は火星へ向かい、2021年2月、「ジェゼロクレーター」と呼ばれる場所に着陸を果たしました。

 ジェゼロクレーターを目指したのは、かつてこの場所には水を豊富にたたえた湖があり、しかも流入していた川の跡が残っているためです。地球であればこうした場所に、土砂と一緒に生きものの死骸が積み重なり、化石が見つかります。これまでにパーシビアランスはジェゼロクレーターの中を18km以上移動しながら探査を続けてきました。

 パーシビアランスが撮影した画像は鮮烈でした。地球と見間違えるような火星の姿。ねらい通り、水の作用で土砂が堆積し、岩として固まっているのが確かめられたのです。もし火星に生命がいるとしたら、この堆積岩のなかに生命の痕跡がある可能性が高く、いずれ地球に持ち帰って確かめることも期待できます。

 生命の痕跡ではないか、と研究者が色めきたった画像もあります。写されていたのは、岩石の表面を覆っている紫色のナゾの物質です。パーシビアランスがレーザー照射し、組成分析をすると、ナゾの物質は「マンガン」を多く含んでいることが突き止められました。

マンガンを作る「シアノバクテリア」という生物

 マンガンは、地球でも砂漠の岩の表面にあることが知られています。アメリカ・ロスアラモス国立研究所で惑星科学を専門にしているニーナ・ランザさんが地球の岩石のマンガンを調べたところ、「シアノバクテリア」という原始的な生物によって作られていることが分かりました。

 シアノバクテリアは27億年前には誕生していたと考えられ、砂漠から海まで幅広く存在しています。その中のある種類は、強い紫外線が降り注ぐ環境で、濃縮したマンガンを日傘のようにして紫外線から身を守っていると考えられています。

 「地球の場合、マンガンは生命と直接関係があるので、とてもワクワクしています。私たちはまだ火星に生命の痕跡を発見したとは言えないのですが、とても興味深い手がかりです」(ランザさん)

 火星の岩石で発見されたマンガンがシアノバクテリアのような生物によって作られたものなのかどうかはまだ分かりません。しかし、サンプルが持ち帰られたあかつきには、これが「地球外生命の初めての証拠」になるかもしれません。

 火星での実際のサンプルは、もう半分近く採取が進んでいるといいます。そこで「実際に生命の存在があると仮定して」、計画を進めていると語る臼井教授。

 その実態や、さらに火星の衛星にふりそそぐ「砂」をも補足しようとする最前線の試みについて、後編『「生命が見つかるという前提で火星からサンプルを持ち帰る」世界の科学者たちが「火星とその衛星のサンプル」に大注目するワケ』に続きます。

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