Apple Storeはなぜインド出店できなかったのか? インドで初の直営店 4つの販売戦略とは

Apple Storeはなぜインド出店できなかったのか? インドで初の直営店 4つの販売戦略とは

米アップルが、インドで同社初の直営店をオープンするために人員を募集していると、英フィナンシャル・タイムズが報じた。インド事業を拡大するとともに、生産の多様化を目指し、中国への過剰依存から脱却する方法を模索しているという。

アップルは世界第2位のスマートフォン市場であるインドで、2023年1〜3月期中にも最初の旗艦店を開設する予定で、すでに従業員の募集を始めたと報じている。

技術スペシャリストやシニアマネジャーなど数百人採用へ

アップルの募集サイトには、技術スペシャリストやシニアマネジャー、店舗責任者、技術サポートスタッフなど計12種の職種が掲載された。それらのジョブディスクリプション(職務記述書)の多くは小売店に言及している。

フィナンシャル・タイムズによれば、アップルの直営店「Apple Store」の一般的な店舗は100人以上の従業員を抱えている。また、募集サイトに記載された「マーケット リーダー」という役割は複数のApple Store店舗にわたり各チームを管理すると説明されている。

アップルの直営店を巡っては西部の金融都市ムンバイで、約2000平方メートルの店舗が23年3月にもオープンすると報じられているが、計画はこの1店舗だけでなく、複数直営店の出店ではないかと同紙は伝えている。12種の職種の合計募集人数は、数百人規模になる可能性があるという。

これとは別に、ムンバイと首都ニューデリーの少なくとも5人の人物が、Apple Storeに採用されたと、ビジネス向けSNS(交流サイト)の「LinkedIn(リンクトイン)」で明かした。これらの店舗についてアップルはまだ発表していない。

また、ある人物は、「Genius(ジーニアス)」と呼ばれる技術サポートスタッフの責任者を任されたと投稿した。別の人物はシニアマネジャーに採用されたと明かした。アップルのインド採用責任者はこれらの投稿に対して、祝福のメッセージを投稿した。

インド生産拡大と直営店の関係とは

アップルは米国や日本などで展開しているApple Storeをインドで出店していない。その代わり、インドの地場小売業者と提携して「Apple Premium Resellers」というフランチャイズ方式でアップル専門店を展開したり、印ネット通販大手フリップカートを通じてアップル製品を販売してきた。

インドではApple Storeのような店舗は「シングルブランド・リテール」と分類される。その外資比率が51%を超える場合、金額ベースで約30%の製品・部品をインド国内企業から調達しなければならない。

これが、いわゆる「30%調達ルール」。だが、アップル製品は大半が中国で製造され、部品も中国などのインド国外で作られていたため、この要件を満たせなかった。

しかし、フィナンシャル・タイムズによると、インドではここ数年、規制が緩和された。アップルは20年9月に同社としてインド初の直営オンラインストアを開設した。加えて、同社は近年、電子機器受託製造サービス(EMS)大手との協力でインド生産を拡大している。

17年には、台湾のEMS大手、緯創資通(ウィストロン)と提携し、インドでiPhoneの型落ちモデルの組み立て業務を開始した。20年には同じく台湾EMS大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が当時の現行モデルを手がけ、インド生産を本格化させた。

また、緯創資通や鴻海、台湾EMS和碩聯合科技(ペガトロン)は、「PLI(プロダクション・リンクト・インセンティブ)」と呼ぶインド政府の補助金制度を活用し、製造拠点への投資を拡大した。フィナンシャル・タイムズによると、アップルはこうして現地生産を増やすことで完成品の輸入時にかかる関税を抑え、販売を伸ばした。

ルームバーグ通信は22年9月初旬、インドの大手財閥タタ・グループと緯創資通が、同国でiPhoneを組み立てる合弁会社の設立に向けて協議中だと報じた。タタが緯創資通のインド事業に出資する、2社が共同でiPhoneの組み立て工場を建設する、あるいはその両方を実施する可能性があるという。

フィナンシャル・タイムズによると、タタは現在インド南部のタミルナドゥ州でiPhoneの筐体(きょうたい)を製造している。同社は今後幅広い部品をアップルに提供するため、事業を拡大する計画だと関係者は話している。

iPhone販売効果、MacやApple Watchに波及

香港のカウンターポイント・リサーチによると、インドでは22年に約20億台のスマホが生産された。これは14年の生産台数の約10倍。インドにおけるiPhoneの市場シェアは5%程度と低いものの、急速にシェアを伸ばしており、iPhoneは高価格帯端末市場で約4割のシェアを持つ。

新型コロナの感染拡大以降、インドで販売されたiPhoneの台数は2倍に増えた。これがパソコン「Mac」や腕時計端末「Apple Watch」、タブレット端末「iPad」の売り上げを押し上げており、好循環が続いている。

アップルは急速に成長する市場に注目しており、今が投資を拡大するのに最適な時期だとカウンターポイントのアナリストであるニール・シャー氏は指摘する。

シャー氏によると、アップルは今後インドで4つの店舗戦略を推し進める可能性がある。1つはオンラインストアの強化。

2つ目は、富裕層が多い都市(2都市以上)での直営店出店。3つ目はタタとの提携により、ティア1(インドの都市区分。人口などいくつかの条件がある)都市や次のティア2の各都市で10店舗以上を出店すること。

4つ目は地場の大型小売チェーンと提携し、比較的小さな「店舗内の店舗」を出店することだという。

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