Macの大革新、「脱Intel」が必然だった理由 「Mac」の中核部品を自社設計の「Apple Silicon」に置き換えていく方針を発表した

Macの大革新、「脱Intel」が必然だった理由

アップルはパソコン「Mac」の中核部品を自社設計の「Apple Silicon」に置き換えていく方針を発表した。ティム・クックCEOが「今日はMacの歴史が変わる日だ」と述べたように、これはMacにとって大きな方向転換となる。(ライター 石井徹)

 日本時間6月23日未明、アップルはオンラインで開催された開発者会議「WWDC20」の基調講演の中で、パソコン製品「Mac」に関する重要な発表を行った。

 アップルはMacの新たなOSとして「macOS Big Sur」を発表し、画面デザインの更新やブラウザーのSafari、メッセージアプリに機能を追加することを表明した。

 だが、macOSの更新以上に重要なのは、MacのCPUを独自の「Apple Silicon」へと移行するという発表だ。Apple Siliconは、アップルが自社設計するCPUやGPUといったパソコンの中核部品群のことを指す。

 すなわち、アップルの方針はMacの中核部品からIntel製のCPUを段階的に排除し、代わりにiPhoneで開発を続けてきた自社設計のCPUを全面採用するというものだ。MacのCPUのプラットフォームは2006年にPower PCから移行して以来、Intelプロセッサーを採用し続けてきた。Apple Siliconへの移行は15年来の大変革となる。

 Apple Silicon搭載のMacは2020年内に最初の製品が出荷される。移行期間は今後2年を見込み、しばらくはIntel CPU搭載のMacと新しいApple Silicon採用のMacが併売されるかたちが続く。今回の発表の後にも、Intel CPU搭載のMacを発売する計画もあるとしている。

脱Intelで実現する「iPhoneアプリが動くMac」

 新たなMacで採用されるApple Siliconは、これまでのiPhoneが採用していたAppleの自社設計のCPUをパソコン向けに強化したものだ。CPUはAppleが英Arm社のライセンスを元に設計する、いわゆる「Armベース」となっている。

 ソフトバンクが買収したことでも知られるArmは、CPUの元となる「設計図」のライセンスを考案して提供する会社で、2020年現在、市場で販売されているスマートフォンのほとんどはArmの設計図をもとにしたCPUを搭載している。

 アップルはArmベースのCPU設計を手がけていたベンチャー企業P.A. Semiを2008年に買収し、iPhone向けのチップセット「Apple A」シリーズを自社で設計してきた。iPhone向けには2019年のiPhone 11シリーズで搭載されたApple A13で10世代目となる。Aシリーズのチップセットはこれまで出荷された20億ものiPhone・iPadに搭載されている。

 その性能も初代iPhoneから飛躍的な進化を遂げており、iPhone 11の処理能力は、スマホの頭脳にあたるCPU性能で初代iPhoneの100倍、グラフィック処理を担うGPU性能は1000倍にも上るという。アップルはこのiPhone向けチップセットをMacに搭載するために、数年かけて研究開発を続けてきた。それがついに、正式に発表されたことになる。

 Macの基幹部品をiPhoneと共通化するメリットは分かりやすい。Apple Silicon搭載の新しいMacでは、iPhoneやiPadのアプリのほとんどが、コードの再設計なしでそのまま動作するという。

 アップルが2008年にオープンしたApp Storeは、世界の2大スマホOSの一角を独占するアプリストアとして成長し、いまや同社いわく年間5000億ドル以上の課金と販売をもたらす「経済圏」となっている。2011年にはMac向けのApp Storeもオープンしたが、もともとインターネット経由でアプリを自由にダウンロードして使う文化があったMacでは、App Storeのアプリの拡充ペースはゆるやかだ。

 だが、iPhone向けのアプリがMacでそのまま動作するようになると、アプリの充実度は一変するだろう。表示解像度の変化への対応など技術的な課題はあるが、「iPhoneと同じCPU」をMacに載せてしまうことで、Mac向けアプリの品揃えを大胆に拡充することができる。

 このほかにも、CPUをIntelからArmベースに切り替えることで、得られる恩恵は多い。Armはもともとスマホ向けCPUとして発展してきただけに、省電力性能が高い。同じ処理をこなすにも、消費電力を抑えることができる。

 また、Apple SiliconはiPhoneのCPUを基にしているだけに、モバイル通信との親和性も高い。将来的にMacbookシリーズが5G通信をサポートする際にも、Apple Silicon搭載モデルの方が高いパフォーマンスが出せるだろう。

不振が続くWindowsのArm展開

 ArmベースのCPUでパソコンを動かそうとしているのはアップルだけではない。PC向けOSにおけるライバル・マイクロソフトは、ArmでのWindowsの展開を何度も試み、大方は失敗に終わっている。

 パソコン版WindowsでのArm系プロセッサーへの挑戦は、2012年に始まった。マイクロソフトの自社設計タブレットSurface(初代モデル)だ。このタブレットパソコンは、Windows 8を基に開発されたWindow RTという特別なOSを搭載していた。このOSはWindowsながら従来のデスクトップPC向けアプリ(x86・Win32アプリ)は利用できず、Armプロセッサーに最適化された専用のアプリのみが動作した。MicrosoftはWindows RT向けのアプリストアの品揃え確保に苦労し、結局Surfaceシリーズは3世代目の「Surface 3」からIntel CPUを採用し、Windows RTは早期にサポートを終了することになった。

 その後、マイクロソフトはWindows 10世代で、Arm CPUに再挑戦している。「Windows 10 on ARM」と名付け、モバイル通信に繋ぎっぱなしでも使えることを売りにした低消費電力のノートパソコン・タブレットを展開している。

 このArm版Windows 10でマイクロソフトは、スマホ向けチップセット大手のクアルコムとCPUを開発し、Lenovoなどサードパーティのパソコンメーカーからの製品展開も奨励している。さらに従来のWindowsアプリとの互換性も一部で持たせており、x86アプリなら、そのままArmでも動かせるような仕組みを取り入れた。一方で現在のWindows向け環境で標準となっている64ビット対応のデスクトップ(Win64アプリ)は、現時点ではArm版Windows 10では実行できない。

 つまり、現状のWindows on Armは、従来型アプリを動かす仕組みによって、アプリの互換性を確保しているが、従来のWindowsアプリの処理をすべて置き換えるほどの実力はない。出先で書類作成などをこなす程度なら十分に対応できるため、持ち運びしやすいノートPCとして有望だが、Windowsがすべて“脱Intel・脱AMD”に至るほどではない。

Macは“すべて”Armに移行

 アップルの発表に戻ろう。重要なポイントは“すべてのMacが”ArmベースのApple Siliconに移行するという点だ。

  アップルはプロ向けのデスクトップパソコン「Mac Pro」からノートパソコンのエントリーモデル「MacBook」に至るまで、さまざま性能、価格帯のパソコンを揃えている。そのすべてはアップル自社設計で、マイクロソフトのようにOSを他社に提供して、販売するモデルではない。そして、自社のアプリストア「Mac App Store」を擁している。つまりMacは、パソコンのハードウェアとOS、そしてアプリストアまでを自社で有している垂直統合型のビジネスモデルと言える。

 アップルのビジネスモデルは、新しいプラットフォームへ移行させるのに適している。Intel CPU対応の古いOSは段階を追って打ち切っていけば、ユーザーは比較的スムーズに新しい環境に移っていくだろう。

 もちろん、「新しいMacを買ったら使えるアプリが何もない」という状況は避けるべきシナリオだ。iPhoneアプリのほとんどがそのまま動作するというのもその対応のひとつとなるし、アップルは従来のIntel Mac向けのアプリを移行させる仕組みも用意している。

 アップルは、新しい開発環境では、アプリ開発者が数日の作業を行うことで、これまでのIntel Mac向けのアプリを新環境に対応させることができるとしている。開発者向けには、iPadのCPUを強化したCPU「Apple A12Z」を搭載するMac miniの検証用モデルを貸し出すプログラムも開始する。

 加えて、Intel Mac向けのアプリを新環境でそのまま動作させる仕組み「Rosetta 2」も発表している。これは実行コードをリアルタイムで読み替えるもので、実行速度は遅くなるが、アプリ開発者の対応が追いつかなくとも、古いアプリをそのまま利用できることに意義がある。ユーザーにとっての移行のハードルを下げる仕組みと言えよう。発表時のデモンストレーションでは、負荷の高い3DCG編集アプリ「Maya」や3Dゲームの『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』を動作させ、Rosetta 2の処理性能の高さがアピールされた。

 また、多くの人が使う大手のアプリ開発者と協力し、アプリの動作を最適化していることも明らかにした。その1社がマイクロソフトで、Microsoft OfficeのWord・Excel・PowerPointの動作が披露された。また、Adobe製の写真編集・管理ソフトのPhotoshop、Lightroomが新環境で動作することも紹介されている。

 このほか、アップル製の動画編集ソフトFinal Cut Proでは4K動画にリアルタイムにフィルターをかけて編集したり、4K動画3本を同時に再生するといったデモンストレーションも行われた。サーバー向けのOSとしてシェアが高いLinuxをMac上で起動する「仮想化」の処理をシステムとしてサポートしていることも発表されている。

 ただしアップルのプレゼンテーションでは、もとから用意された3Dファイルを操作したり、ゲームも1080pでの再生にとどめているなど、現代のパソコンが扱うには負荷が高い処理を避けていた印象もある。その実力を判断するには、実機で検証を待つのが賢明だろう。

「本当に高性能な処理」も将来的には実現してゆく

 現在は消費電力の高さが最大の特徴となっているArmベースのチップセットだが、アップルでは最上位モデルのMac Proを含めたすべてのモデルに採用していく方針を表明した。気になるのは、上位モデルでの処理性能の高さだ。

 ArmベースのCPUは、将来的にはIntel製と比肩するほどに性能を高めてゆく可能性もある。実はArmは高性能サーバーやスーパーコンピューターの分野でもシェアを伸ばしている。アップルの発表と同日の23日、理研のスパコン「富岳」が処理性能で世界一となったことが発表されたが、この富岳もArmベースのプロセッサーを採用している。

 すなわち、コンパクトで省電力性能が高いという特性は、多数並べることで、面積当たりの処理効率の高い設計を可能にするということだ。CPUの設計次第で、負荷の高い処理に耐えられるパソコン向けチップセットを生み出すこともできそうだ。

 Windowsの場合、すでに普及しているIntel・AMD CPU向けアプリとの互換性が普及のさまたげとなるが、Macではアップルが決断すれば、数年かけてArmベースのCPUに移行することは比較的容易だろう。アップルの“脱Intel化”が順調に進めば、MacはiPhoneとのつながりを深め、新しい競争軸を得ることになる。ティム・クックCEOがプレゼンテーションの最後に「今日はMacの歴史が変わる歴史的な日です」と高らかに表明しているように、ここ数年来停滞が続いていたMacに飛躍的な変化が訪れるのは間違いないだろう。

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