地球温暖化でサンゴ礁の99%が死滅する!? 私たちにできる対策とは
気温が2℃上昇するとサンゴ礁の99%が死滅
熱帯地域に生息するサンゴ礁が、地球温暖化など地球環境の悪化によって深刻な危機にさらされているのをご存知だろうか。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、地球の気温上昇を1.5°Cに抑制したとしても、サンゴ礁の70~90%が消滅する可能性があるという。さらに、気温が2℃上昇すると、99%のサンゴ礁が死滅してしまう。
地球温暖化以外にも海洋汚染や海洋プラスチック問題などが海を取り巻く生態系に悪影響を与える要因とされる。サンゴ礁の白化現象が加速してしまう前に、サンゴ礁の保全について向き合い、人間社会との共生を今一度見つめ直す必要性がある。
こうした背景を踏まえ、サンゴ礁の危機を伝えるドキュメンタリー映画『チェイシング・コーラル―消えゆくサンゴ礁―』(2017)の上映と有識者らによるトークセッションが7/23に開催された。
地球温暖化を人ごとと考えずに、自分ごと化する
まず環境省・自然環境局の岡野隆宏氏は、「世界で一番危機に瀕している生態系がサンゴ礁であり、その原因が気候変動にある。産業革命前に比べて気温は1℃上昇し、今後気温の上昇を食い止めなくてはならない」と説いた。
2015年に国際的枠組みとして制定されたパリ協定では、地球温暖化を防止し、気温の上昇を抑えるべく、CO2削減の目標を定めている。気温上昇幅を2℃未満、可能ならば1.5℃に抑えることを目指す取り組みをし、地球温暖化対策の目線を各国で合わせたのだ。
しかし、冒頭に述べたサンゴ礁の生存に関わる気温上昇幅は、2℃に達すると死滅してしまうことから、最低でも1.5℃までを上限としなければならない。
「パリ協定の目標を達成するには、私たちの暮らしや経済を大きく変えていかなければならない。地球温暖化問題は、一朝一夕には解決しないものであり、大きな変革と捉えて1人ひとりが意識して環境問題に向き合うこと」と岡野氏は説明し、地球温暖化を人ごとと考えずに、“自分ごと化”することの大切さを強調した。
化粧品の成分もサンゴ礁に悪影響
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)リサーチ・フェローのイヴォーン・ユー氏は、日本のメディアがもっとサンゴ礁の危機について取り上げるべきだと述べた。
「『チェイシング・コーラル―消えゆくサンゴ礁―』はネット配信だが、なぜ地上波でやらないのかと感じる。また、日本の海の調査をし、その現状をニュースとしてもっと報道していくべきだと思います」
また、「海外では海に潜る際にエチケットがあり、サンゴ礁を踏んで傷つけないように注意している。また、女性が使う化粧品の成分は、サンゴ礁に悪影響を与えると言われている。ダイビングのエチケットを守り、貴重な生態系を守ろうとする配慮が大事」と強調した。
マリン好きには人気アクティビティであるダイビング。だが、綺麗な写真を撮ろうとするあまり、サンゴ礁を傷つけるような行為は慎むべきだ。海が好きだからこそ海を守る。サンゴ礁を保全する。このような意識を持つことが求められる。
日本ではプラスチックフリーがなかなか進まない
最近では地球温暖化による気候変動のみならず、海洋プラスチック問題もまた、サンゴ礁の生態系に影響していることが分かったという。
「海外ではプラスチックフリーが進んでいて、環境問題に配慮した紙のストローなどが日本よりも普及している。サスティナブルな考えのもと、人間の廃棄物がどれだけ海の生態系に影響が及ぶか問題視することが大切。まずは身近なことから環境に配慮した行動を意識したり、自分ごととして環境問題を捉えたりすることが。一人ひとりの意識が変われば、それが好循環を生み、問題解決の糸口がつかめる」とイヴォーン・ユー氏。
日本はなぜプラスチックフリーが進まないのか。それは日本人特有の潔癖主義が関係しているという。衛生に対する意識が過敏するがゆえ、無駄に包装をする傾向があるとのことだ。
脱プラスチックに向け、日本でも局所的には動きが見られる。しかし、今後さらにプラスチックフリーを推進する必要がありそうだ。
地球環境に配慮した形で、日頃の行動や暮らしの中で、何ができるのか。環境と共生できるのか。産業革命の弊害による気候変動や、生態系への悪影響によって起こるサンゴ礁の消えゆく実態。
この深刻な事態をドキュメンタリーで表現した映画「チェイシング・コーラル―消えゆくサンゴ礁―」は、1人の地球人(コスモポリタン)として環境問題を見つめ直すいい機会なのではないだろうか。
<取材・文/古田島大介>