カワセミのように青く光る鳥、化石ではじめて特定、4800万年前

カワセミのように青く光る鳥、化石ではじめて特定、4800万年前

鳥の青い色の進化史解明に光

 4800万年前のある日、有毒ガスを噴出する湖の上で、小さな青い鳥が息絶えた。湖に落ちた死骸は湖底の堆積物に埋もれ、見事に保存されて、最古の青い羽毛の証拠をもつ化石となった。

 その羽毛の色を明らかにした論文が、6月25日付けで学術誌「Journal of the Royal Society Interface」に掲載された。羽毛の持ち主は、Eocoracias brachypteraという絶滅した鳥だった。化石が発掘された場所はドイツのメッセル採掘場だ。ここは保存状態の良い化石が大量に産出するワンダーランドのような場所で、始新世(5600万年前から3390万年前)にまでさかのぼる。

 研究者らが青い色を推理できたのは、現生の近縁種であるブッポウソウのグループと比較できたからだった。羽毛化石の微細な構造を詳しく調べたところ、現生の鳥では、青または灰色のどちらかになる場合とよく似ていた。

 青い羽毛の鳥は、実はかなり珍しい。今生きている鳥の61系統のうち、青い羽毛をもつ種を含む系統は10しかない。あとで述べるように、青く光るように見える仕組みも特別だ。しかしブッポウソウの仲間では、灰色よりもカワセミのように青い羽毛がずっと多いことから、太古のこの鳥は濃い青色をしていたと研究者たちは結論付けた。鳥の羽毛のこのような色が、化石記録から再現されたのは初めてだ。

「それこそが、私にとってはこの研究で最も刺激的で重要な部分だったと言えます」。論文の筆頭著者で英シェフィールド大学の博士課程に在籍する学生フラネ・ババロビッチ氏はこう話す。

 今回の発見により、化石の色に関する以前からの予測モデルの正確度が82%から61.9%へと低下した。というのも、今までは、青か灰色を作り出すこの化石の構造が、灰色にしかならないと想定していたからだ。一歩後退したように聞こえるかもしれないが、太古の動物たちの正確な姿を解明する上で、むしろ貴重な材料を新しく提供している。

「この論文全体に対する私の見立ては、直接応用できる範囲は狭いけれど、間接的な影響は幅広いというものです」。ナショナル ジオグラフィックのエマージング・エクスプローラーのライアン・カーニー氏はこう話す。米サウスフロリダ大学の古生物学者であるカーニー氏は、色彩も含めて始祖鳥を研究している。「不確かさは高くなりましたが、未知の点があることすら知らなかった状態から、未知のことがあると分かった状態に進んだのです」

鳥の青色が特別な理由

 太古の動物の色を解明する試みは、ここ10年で爆発的に広がった。今回の論文はその最新の成果だ。「色革命」の鍵は、メラノソーム(色素を含む細胞内の小器官)が化石化しうるという発見だった。鳥類から非鳥類型恐竜、さらには海生爬虫類まで、多くの古代の生物からメラノソームが見つかっている。

 加えて、鳥の色は、色素ではなく、羽毛の微細な構造によることがある。羽毛の表面付近に並んだ、メラノソームやタンパク質の一種であるケラチンの極めて小さな粒々が光を散乱させ、特定の色を強く反射するのだ。クジャクのきらめく尾や、ホシムクドリの虹色の光沢などがその典型で、こうした色彩は構造色と呼ばれる。

 構造色は恐竜の羽毛でも見つかっている。小型の獣脚類であるCaihong jujiは、ふさふさとした虹色の羽毛のえりまきを持っていたらしい。また、「4枚羽」の恐竜ミクロラプトルは、黒い羽毛に青みを帯びた光沢があったとみられる。

 ところで、クジャクの羽根を持ったことのある人なら、見る角度によって色が変わることにおそらく気付いただろう。これが虹色の特徴だ。ただし、構造色が全てこのように見えるわけではない。鳥の羽毛の中には「非虹色」といって、カワセミの青や一部のオウムの緑色のように、どこから見ても青っぽい光を反射する構造色がある。非虹色の構造色は、ケラチンの外側の層、スポンジ状の中間の層、そして内側のメラノソームという特殊な3層構造によって作られる。

青色か、灰色か

 メラノソームにはいくつか種類があり、現生の鳥類では色によって形が違う。たとえば、黒を作り出すメラノソームはソーセージのように見え、赤茶色ならミートボール形をしている。であれば、化石記録でも同じことが言えるはずだ。そこで、ババロビッチ氏は考えをめぐらせた。非虹色のメラノソームに特徴的な形はあるのだろうか?

 それを明らかにするため、ババロビッチ氏ら研究者たちは、E. brachypteraと現生の鳥のメラノソームを詳しく調べた。後者は、世界各地の鳥のグループから、72の羽毛を対象にした。

 化石のE. brachypteraに残っていたメラノソームは、縦の長さが横幅の3倍ほどあり、灰色と青い構造色に関わるメラノソームと近かった。2色のどちらなのかを突き止めるには、現生の鳥の系統において、どちらの色がどれだけ優勢かを見極める必要があるとババロビッチ氏は気が付いた。

 氏が計算した結果、E. brachypteraが非虹色の構造色だった確率は99%で、灰色の羽毛だった確率は19%しかなかった。つまり、この化石の鳥は青かった可能性が高いということだ。

 博士課程が始まったばかりのババロビッチ氏は、鳥の青い色の進化史をもっと広範囲に研究したいと考えている。これは、彼を輝かせる科学的な探求だ。

「そのせいで眠れない夜もあります」とババロビッチ氏。「とにかくこの研究が好きなんです」

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