ナノサイズの炭素リボン精密合成=次世代半導体など応用期待-名古屋大
名古屋大の研究チームは、シート状の炭素素材「グラフェン」を細長いリボン状にした「グラフェンナノリボン」(GNR)の精密合成に世界で初めて成功したと発表した。GNRは高速、省エネの次世代半導体やセンサー、電子回路材料として期待されており、自由に合成できる技術は実用化に弾みとなる。論文は26日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載される。
GNRは幅や長さ、リボンの端の構造(エッジ)の違いで電気を流したり、半導体になったりする。現在の合成法では狙った構造のGNRだけを大量に作ることは難しかった。
名古屋大の伊丹健一郎教授と大学院生の矢野裕太さんらは、合成反応の起点となる有機分子(開始剤)とリボンを構成する部品(モノマー)を触媒と混ぜるだけで、GNRを合成することに成功した。リボンの長さは開始剤とモノマーの混合割合を変えれば、最長で170ナノメートル(ナノは10億分の1)まで自在に制御できた。さらに、このGNRに酸化反応を施すと、別のエッジ構造に変換できた。
伊丹教授は「ブロック玩具を組み立てるように、部品と小さな有機分子を組み上げる究極のボトムアップだ」と説明。既に企業と共同研究を始めており、数年以内の量産化を目指しているという。