iPhoneで使えるナンバーが消えた「Apple Card」登場、クレジットカードの再発明となるのか?

iPhoneで使える「Apple Card」登場、2%還元で年会費・手数料ナシ

日本時間3月26日の「It's Showtime」イベントにてApple Cardが発表されました。

Apple CardはApple Pay専用のクレジットカード。iPhone上の操作で数分で発行でき、Apple Payでの支払いで利用できます。当初は米国向けに、今夏登場します。

アプリなどを購入したり、世界中のApple Pay加盟店で買い物できたりするなど、使い方は通常のApple Payと同じ。利用履歴は機械学習技術とApple Mapsのデータを活用することで、「セブン-イレブン○○店」のような分かりやすい形で表示され、店のカテゴリーごとに整理され、支出の傾向を可視化します。サポートはiMessageを活用し、住所変更などの手続きも簡単に行えるとしています。

還元率は2%で、Apple Storeでの買い物の場合は3%。「Apple Cash」としてiPhone上のバーチャルカードに毎日、還元されます。Apple Cashの残高はApple Payで利用したり、iMessageで送金したり、Apple Cardの支払いに充てたりできます。

Appleの登壇者は発表で「私たちの目標は、各顧客に、業界で最も低い金利を提供すること」と言及しつつ、Appleカードには通常のクレジットカードで設定されているような、支払い手数料、遅延手数料、年会費、国際手数料、制限超過手数料がないことを表明。毎月の支払いは、自分のペースにあわせて調整できる設計となっています。

セキュリティについても、従来のクレジットカードにない要素を取り入れ、より安全な設計になっているとアピール。クレジットカードのコードはApple Cardを導入したデバイスごとに割り当てられる上、決済時には決済ごとにダイナミックセキュリティコードが発行され、Face IDやTouch IDの認証によって安全に支払いできるとしています。

そして、プライバシ面では、Appleは購入額や決済された場所、金額などを記録しない設計になっていると表明。支払いの記録や分類といった機能はAppleのサーバ上で処理せず、ハードウェア上の処理によって行うとのことです。

また、Apple Cardの物理カード版も提供されます。カード上に番号やセキュリティコードを表示しないデザインで、還元率は1%と控えめになっています。

Apple Cardはゴールドマンサックスがイシュアを担当。同社はコンシューマー向けの金融サービスに初めて参入するとのこと。国際ブランドはマスターカードとなっています。

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ナンバーが消えた『Apple Card』はクレジットカードの再発明となるのか?

KNNポール神田です。

□米Appleは(2019年)3月25日(現地時間)、同社のスペシャルイベントでクレジットカードサービス「Apple Card」(アップルカード)を、今夏に米国で開始すると発表した。米ゴールドマン・サックス、米マスターカードと協業する。バーチャルカードとして同社の「Apple Pay」から支払いできる他、チタン製の物理カードも発行する。

□発行手数料や年会費など、全ての手数料を無料にする。支払い方法に応じて、支払い当日にキャッシュバックを受けられる。Apple Pay経由の支払いであれば2%、物理カードによる支払いであれば1%、「Apple Music」などAppleからの購入であれば3%キャッシュバック

□本人認証には、「Face ID」もしくは「Touch ID」を用いる。

□ユーザーの購入情報や支払い方法といった情報はAppleのサーバーには送られず、サービスとしてのトラッキングなどの機能はあくまで端末上のプログラムが判断するという。

出典:Apple、クレジットカードを米国で今夏開始 チタン製物理カードも

■1960年代から進化していなかったクレジットカード

あらためて考えてみれば、1950年にマクナマラとシュナイダーが、レストランのディナーをどこでもツケで食べられるようにと発行した『ダイナースクラブ』が、ユーザーの信用を担保し、サードパーティーのカード発行会社(イシュアー)に汎用カードを作らせ、ユーザーを管理し、加盟店管理会社(アクワイアラー)が加盟店側を開発するというビジネスモデルを作ってから70年になろうとする。

このビジネスモデルは、業界ごとにバラバラだったクレジットカードに汎用性を広げ、普及させてきた。しかし、テクノロジー的には、ナンバーの刻印がプラスティックカードになり、磁気化されて、ICチップが搭載されたという程度であった。いまだに、セキュリティーコードという裏面の『CVVナンバー』は目視できてしまい、クレジットカードは、世界で一番スキミングしやすいし、情報漏えいなどのリスクが常に伴う、進化が止まったままのサービスであった。

そして、Appleが配布するチタン製の『Apple Card』の物理クレジットカードには、ナンバーもCVVナンバーも無刻印である。

■『Apple Pay』の使い勝手とUX

現在、一度でも『Apple Pay』を使ってしまうと、『SUICA』での改札、『iD』や『QuickPay』での支払い、独特のあのサウンドと振動での『UX(ユーザーエクスペリエンス)』などから、財布の中から各種カードを探し出していた時代には二度と戻れなくなってしまう。交通SUICAが手放せなくなるのと同じ現象だ。Appleという会社は、何よりも、そんなUXを追求し続ける企業である。Appleの強みは、指紋認証やフェイスIDなどの認証技術と、iPhoneの普及率でユーザー側にとても近いところにいる。さらに地図情報もあり、ユーザーが管理しやすい。今までのクレジットカード会社のウェブ明細と比較すると雲泥の差がでてくる分野である。

■『Apple Card』の優位性

Appleにとってクレジットカード業界や金融という業界は、門外漢であるが、VISAやMASTERなどの『国際ブランド』の下流ではなく、スマートフォンを経由しての決済においては、プラットフォーマーとして『国際ブランド』の上流に位置することにもなる。2014年の『Apple Pay』スタート時から、イシュアー(カード発行会社)側から手数料を取るという今までになかったビジネスモデルを実現していた。ある意味、Appleは業界の慣習を変えてしまったともいえる。イシュアーはゴールドマン・サックス 国際ブランドはマスターカード、米国では今年の夏からのサービス開始だが、日本ではサービス開始されるのか?また、されるとすると、どこがイシュアーになるのかが気になるところだ。

そして、今回は、デザインのUXで圧倒的な強さを魅せてくれる。何よりも、Appleは金銭管理アプリをAppsで審査してきた立場であり、どのアプリがどのように使われているのかを世界で一番知っている企業でもある。そこが、その機能をアプリではなく、基本のサービスとして組み込んでくるのだから、絶対に負ける確率は少なくなる。さらに、なんといっても、使いやすさの追求がある。当初は思わぬバグなどもあるだろうが、バージョンアップで解消できる問題だ。この短いプレゼンテーションでも十分に、クレジットカードの変化が体感できる。

金銭管理アプリなどでも表示できるが、『Apple Card』ならば、使用した瞬間に端末内でデータが反映される。しかもデータはサーバを経由せず端末内で処理されるという。

地図やGPSが内包されているので、いつ、どこで、何に、いくら使ったのかが明確だ。

さらに、現在の使用用途のステイタスも確認できる。これは、ひとつのカードにまとめたくなる。

Apple Pay で2%還元は、もうほかのクレジットカードを使う必要性を感じない。

値引きがほとんどなかったAppleのサービス・製品がはじめて3%還元されることとなる。

これは他の企業が一番欲しい購買データをAppleは取得しないという。これはAppleならではのビジネスモデルといえるだろう。

しかも手数料もとらない。

■『電子財布』を世界に無料配布するという戦略

なんといっても、今回の最大の再発明は、クレジットカードにナンバーがないことだ。考えてみれば、ほぼICチップで電子化されているクレジットカードにナンバーを入れるほど、セキュリティレベルの低いものはない。『Apple Pay』が使えないシーンでもクレジットカードとして使える。しかし、国際ブランドのシンボルマークがないのは、使う度に、「マスターカードでお願いします!」と云わないといけなくなるのかもしれない(笑)いや、むしろ、Appleのロゴマークが国際ブランド並に浸透することを狙っているのかもしれない。

裏面にある国際ブランドロゴもカラーでないので『マスターカード』と認識しずらい。一瞬『アウディ』に空目してしまいそうな色彩だ。

Apple Cardはサービス単体での売上ではなく、世界で最も安く、最も還元率が高く、最も安全という『クレジットカード』を再発明したといえるだろう。同時に、Appleは、Appleユーザーに超便利な『電子財布』を世界に無料配布するという戦略に舵を切ったのだ。

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