吸殻を拾い集める「カラス先生」が話題に、専門家に聞いてみた

吸殻を拾い集める「カラス先生」が話題に、専門家に聞いてみた

テーマパークの「清掃員」としてお手本に

 鳥の中には実に賢く勤勉なものがいて、人間のように「仕事」をしている。

 フランス、レゼペスにある中世を舞台にしたテーマパーク「ピュイ・デュ・フー」には、園内のごみを拾って箱の中に入れると食べ物が出てくることを覚えた、6羽のミヤマガラスがいる。

 テーマパークのブログには、1993年から鷹匠として勤めるクリストフ・ガボリ氏が、人間が育てたミヤマガラスたちをどうやって訓練したのかが書かれている。彼はまず、箱にごみを入れるところを2羽のミヤマガラスに見せ、それから引き出しを開けて食べ物が入っているところを見せた。すると鳥たちは、ごみを食べ物と結びつけるようになった。

 今では6羽のカラスたちがごみと食べ物の関係を覚え、テーマパークをきれいにしている。とはいえ、園内は元々かなりきれいだ。一番の狙いは鳥たちに清掃員になってもらうことではなく、来園者がごみを捨てないよう、先生になってもらうことなのだ。

 欧州からアジアにかけて広く生息するこのカラスたちにとって、これぐらいのことを覚えるのは朝飯前のはずだ。

「鳥たちが進化させてきた認知能力のレベルについて、私たちはまだまだ理解し始めたばかりです」と、米オレゴン動物園の園長ドン・ムーア氏は言う。

 では一体、カラスとその仲間の鳥たちは、他にどのような「人間的能力」を持っているのだろう?

ニューロンの密度が非常に高い

 ムーア氏が言うには、カラス科の鳥たちはとりわけ能力が高い。彼らは巧みに道具を改良して使ったり、先のことを計画したり、パズルを解いたりすることができる。

 なのになぜ、人は鳥の能力を軽く見るのだろう? 「鳥頭」という侮蔑表現は、鳥の知性が研究を通して明らかになる前に生まれたものだ。一部の鳥のように、体の大きさの割に脳が小さい、ということを表現するのであれば、「『ネズミ頭』とか『トガリネズミ頭』とか言うこともできますね」と、米ピッツバーグの国立鳥園に所属する鳥類学者ロバート・マルビヒル氏は言う。

 マルビヒル氏によれば、オウムや一部のカラス科の鳥は体の割に大きな脳を持っているが、それだけでなく「ニューロンの密度が非常に高い」のだという。さらに、「巣外套尾外側部(nidopallium caudolaterale、NCL) 」と呼ばれる脳の部位が、人間で言えば、問題解決をするときに使われる前頭前皮質のような働きをしていると考えられている。

「小さな脳容積で高度な認知能力を持てるよう、彼らは脳を作り変えたのです」とマルビヒル氏は述べる。鳥の骨が中空になっているのと同様、身体が軽いほうが飛ぶのに有利であるため、そうした進化が起こったと考えられている。

 これまでずっと、霊長類の認知能力は過剰に持ち上げられ、カラス科の鳥たちの「分析能力、記憶能力、そして将来のために目先の欲求を我慢する能力」は見過ごされてきたと同氏は言う。

 ただし、ミヤマガラスの清掃の「仕事」に関して言えば、「多くの動物がやっているのと同じ、ごく普通の食物獲得行動です」とのことだ。キツツキがまず木に穴を開けてからでないと、ごちそうである虫を取り出せないようなものだという。

 それに彼らは給料をもらっている従業員とは違って、お腹がいっぱいになったらやめればいいだけですしね、と同氏は加える。

カラスが「やあ元気?」「元気だよ」

 他にも、公式の「仕事」ではないものの、驚くような行動を見せてくれる鳥がいる。英ヨークシャー地方のナレスボロ城を訪れたカップルが撮影した動画には、地元訛りで話すムナジロガラスが映っている。

 ムナジロガラスは「やあ元気?」と聞き、「元気だよ」と続ける。

 音声を真似るのがうまい鳥は多い、とムーア氏は言う。例えばカケスの仲間はタカの声真似をし、他の鳥が逃げたところで食べ物を独り占めする。ホシムクドリも人間の声を真似ることができる。

 オウム、ハチドリ、そして鳴禽(めいきん)類と呼ばれるスズメ亜目の鳥たちは、音声を聞いて模倣する「発声学習」をすることで知られる。この発声学習には、脳の一部分が割り当てられている。2015年に行われた研究によると、オウムではこの部分にさらに層が1つ加わり、それゆえ格別に模倣に長けているらしいことがわかった。

 カラスは非常に賢いが、声真似はそこまで上手ではない。カラスとオウムは系統的に離れており、「新しい音声を学習する能力には違いがあって当然」だとマルビヒル氏。

 マルビヒル氏が着任する前、国立鳥園にはミッキーという名のカラスがいた。ミッキーは元ペットで、「ハロー、ジョー!」とか、「カー!カー!カー!」とか言うのだった。単なる音としてではなく、言葉として、だ。

 一方、施設にいる他のカラス科の鳥が、人間の言葉を教えられたり、勝手に覚えたりしたことはない。

 ミッキーはおそらく、ひなの時に人間の言葉を覚えたのだろう。マルビヒル氏によれば、一部の鳥はひなである間の「非常に短い期間だけ」歌を覚えることができ、その後歌を変えることはほとんどないのだという。

 残念。カラスに「そこ、まだきれいになってないよ!」というフレーズを覚えさせて、テーマパークで働いてもらいたいと思ったのだが。

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