アップルがいまになって「ネット中立性の戦い」に加わった本当の理由

アップルがいまになって「ネット中立性の戦い」に加わった本当の理由

多くのIT企業大手が「インターネットの中立性」のために戦うなか、この活動への姿勢を明示していなかったアップルが、いまになって参戦を表明した。なぜ「いま」なのか、そしてアップルはなぜ闘うことを決めたのか。

この数カ月間、米連邦通信委員会(FCC)がネット中立性保護の無力化に傾いてきたことを受けて、数えきれないほど多くの企業が、強くてオープンなインターネットの支持を表明してきた。しかし、この論争のなかで聞こえてこない声がひとつあった。アップルだ。

しかし、FCCがネット中立性に関して現在進めている手続きに対して意見を言える最終日だった8月30日(米国時間)、アップルはようやく沈黙を破り、オープンなインターネットを保護する強固なルールを支持するというコメントを正式に提出した。

だが土壇場になって、しかもほかのIT大手の参戦からずいぶんと遅れたいまになって、アップルが声を上げたのはなぜなのか。そしてさらに言えば、そもそも声を上げた理由は何なのだろうか。

アップルが提出した文書には、オープンなインターネットを保護するために同社が重要と考えるいくつかの重要な原則が概説されている。それらは、消費者の選択、透明性、競争、投資と革新、有料トラフィックの優先接続の禁止──である。

「これらの重要な原理は、FCCの現在の規則を反映している。今後のネット中立性の枠組みの基礎も、これらの重要原則に基づいて形成されなければならない」と、アップルの文書には書かれている。「アップルは今後も、準立法権をもつFCCの規則に対してオープンな姿勢を取り続けるが、それらの規則が今日実施されている規則と同じように、強力で強制力があり、法的に持続可能な保護を提供する場合に限る」

ただしアップルは、こうした原則をいつも忠実に守ってきたわけではない。2009年にはAT&Tの要請を受けて、「iPhone」から「Skype」への通話をブロックしていたことが発覚した。典型的なネット中立性侵害だ。また、ネット中立性の支持を表明して100社ものIT企業が署名した2014年の公開書簡[PDFファイル]に、アップルの名はなかった。ちなみにアマゾンも、グーグルも、フェイスブックも、マイクロソフトも署名している。

さらにアップルは、オープンなインターネットのルールを支援してロビー活動を行っているインターネット有力企業の連合「Internet Association(インターネット協会)」にも加わっていない。また、2017年8月の「行動デー(Day of Action)」にも参加しなかった。

アップルの野心

アップルが自社の立場を考え直していることを示す最初の徴候が見られたのは、2017年の初頭、最高経営責任者(CEO)のティム・クックが株主総会でネット中立性規則の支持を表明したときだ。「9to5Mac」によると、クックは総会で次のように述べたという。「政治には口を出しませんが、政策には口を出します。ネット中立性が最重要になるなら、わたしたちはこれに取り組みます」

だとしたら、クックとアップルがネット中立性を「最重要」だと判断した理由は何なのだろう。この判断を下すまでに、これほど長い時間がかかった理由についてコメントをアップルに求めたが、回答は得られなかった。

ほかのIT大手がすでにロビー活動を行ってまでネット中立性を支持していることを考えれば、アップルがこの時点でネット中立性の支持を表明しても、FCCに大した影響を与えられないだろう(同社の熱狂的ファンがこの問題に注目するようになり、闘いの場がFCCから法廷や国会に移るといった変化が生じるかもしれないという可能性は捨てきれないが)。

今回の意見提出の本当の重要性は、ここにアップルの将来が述べられているところにある。同社は昔から、ただのハードウェア企業から脱却することを切望してきた。ストリーミング・ヴィデオ・ビジネスに乗り出したいま、ネット中立性は同社の最終収益にとってますます重要となっている。

アップルは2017年、初めてのオリジナル番組の配信を開始した。番組司会者とミュージシャンや俳優などのセレブがクルマに同乗して一緒にカラオケを歌う「Carpool Karaoke」と、アプリ開発者のオーディション番組「Planet of the Apps(アプリケーションの世界)」の2本だ。また、さらなるコンテンツの開発に10億ドルをつぎ込む予定だと報じられている。AT&Tやヴェライゾンといった企業が、自社のストリームを増やしながらアップルのストリームを妨害したとしたら、アップルのヴィデオと(収益の)野心にとって大問題となるだろう。

つまり、ネット中立性へのアップルの関心はおそらく、自社のビジネスから生じたものであろう。それは、FCCの規制保護を求めてロビー活動を行っている他のIT大手も同じだ。だが、FCCがネット中立性を骨抜きにする計画を進めているいま、オープンなインターネットは、得られる限りの支援を必要とするだろう。 

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