立体映像、AI、量子コンピュータ、NTTが実用化を目指す8つの最先端技術とは

立体映像、AI、量子コンピュータ、NTTが実用化を目指す8つの最先端技術とは

電話やデータ通信サービスといった電気通信事業を展開しているNTT。同社がこの重要な社会インフラを支えるために、規模的にも技術的にも世界屈指の研究所を保有し、最先端技術を研究開発していることを忘れてはならない。今、NTTがどんな最先端技術を研究し、実用化しようとしているのか、注目の技術やサービスを紹介しよう。

■競技や公演の様子を立体映像で遠隔地にリアルタイム伝送する「Kirari!」

 NTTは、グループ会社総出で2020年に開催される東京オリンピックを通信面でサポートする。立体映像の伝送や再生、来日客をサポートするサービスなど、オリンピックを意識した、実現一歩手前のさまざまな技術が開発されている。

 イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!(キラリ)」は、スポーツ競技やライブ公演などを遠隔地にリアルタイムに伝送し、被写体を立体映像で再現するもの。現地で被写体映像の抽出やサラウンド映像生成、集音などのメディア処理を行い、それらのデータをネットワークでリアルタイムに伝送し、遠隔中継会場で内容に合わせたサラウンド映像で臨場感たっぷりに再現する。観客は現地にいなくても、目の前で競技や公演が行われているかのような体験ができるというものだ。

 Kirari!は3年前に発表され、2016年には個人競技の疑似3Dリアルタイム中継が可能となるほど進化。さらにこの1年で、被写体抽出の技術が向上し、表現がより精緻になった。NTTの研究開発を紹介する今年の「NTT R&Dフォーラム」では、ラスベガスと日本を結んた歌舞伎中継や、柔道のベイカー茉秋選手が競技している様子を映し出すデモも行われた。

■興味や混雑に応じて調整する「混雑回避ナビ」

「混雑回避ナビ」は、「制約条件付き最適化技術」によって巡回しやすい訪問順序を提案したり、「行動傾向を考慮した訪問予測技術」によって各展示への興味度を計算し、混雑状況を考慮したスムーズに巡回できるルートを生成するスマホアプリだ。この混雑回避ナビと連携し、サイネージやプロジェクションサインによる会場案内も実現する。あらかじめ混雑回避ナビで閲覧ルートを設定しておくと、1人1人に応じたサインをサイネージに表示することも可能だという。

 また、単一あるいは複数のドローンを飛ばし、空中に情報を表示したり案内を行ったりするユニークな方法も検討されている。“Sky Compass“というコンセプトのもと、音声認識やR-env(NTT研究所が開発したデバイス連携制御技術)、混雑情報、プロジェクションを組み合わせて実現されるものだ。

■スマホをかざして詳細情報を確認できる「かざして案内」

 アプリの入ったスマホを調べたいものにかざすと、その詳細な説明を表示する「かざして案内」にも取り組んでおり、博物館や美術館などでの活用が期待されている。かざして案内は「ユニバーサルオブジェクト認識技術」「アングルフリー物体検索技術」「モバイル電子透かし技術」などの複数の認識技術を統合して物体の認識を行っている。

 また、自然な対話で情報を入手できるNTTグループのAI技術「corevo」、「自然文FAQ検索技術」により自然文での質問に自動で答える「ボット説明員」など、観光客、来日客が増える今後に活躍が期待される技術も開発されている。公共施設や街中へ適用すべく取り組んでいるという。

■分かりにくい建物内を立体地図で分かりやすく

 建物内の案内では、上下層のつながりや、階をまたいだ先の出入り口や店舗施設の場所など、平面地図では分かりにくい場合がある。そういった場所を2.5Dの立体地図で分かりやすく表示する技術が開発されている。これは既存の平面地図データに、階層構造や高さ情報を加えるだけで生成できるのが特徴。空港や駅、スタジアムなどで活用されれば、言葉が分からない外国人でも直感的に理解できる。

 以上はどちらかといえば観客向けのサービスや技術だったが、競技者を対象にした技術も研究されている。行動計測や精密な脳機能評価などを多角的に組み合わせて、スポーツ時の無自覚な脳機能の仕組みを解明し、勝つための潜在脳機能を解読。選手のパフォーマンス向上を狙う。脳科学とICTを融合させた「スポーツ脳科学」研究にも、NTTは携わっている。

■AIが安心安全な運転を支援「corevo for Drivers」

「Google Assistant」やAmazonの「Alexa」など、対話によってさまざまな情報を提供してくれるAI(人工知能)がこの1、2年、非常に注目されている。NTTグループが開発しているAI関連技術は「corevo」と呼ばれ、人間の意図や感情を理解する「Agent-AI」、知性・本能・身体といった根源的な部分を理解し、人間らしさの本質にせまる「Heart-Touching-AI」、センサーによるリアルタイム計測情報に、インターネット上の情報を組み合わせ近未来を予測する「Ambient-AI」、社会システム全体の最適化を目指す「Network-AI」という、4種のAIから構成されている。

 このうち、「Heart-Touching-AI」「Ambient-AI」「Agent-AI」の3つのAIが融合して、快適な運転ができるようにドライバーを支援する技術が「corevo for Drivers」だ。

 Heart-Touching-AIが、バイタルセンサーによってドライバーの睡眠状態や疲労度を認識し、ドライバーにフィードバック。Ambient-AIはドライブレコーダーやクルマに搭載された各種センサーの情報を分析し、危険箇所や状況を察知して警告。また、Agent-AIによって自然で確実な対話が可能になる。

■今注目のIoT関連とセキュリティ技術も

 ここ数年でIoTという用語もすっかりおなじみになった。パソコンや携帯電話だけでなく、クルマや家電、センサーなど、ありとあらゆるものがインターネットにつながるIoT、モノのインターネットの時代がまもなく到来するといわれている。

 工場の機械もIoT化が図られている。産業用ロボットの大手サプライヤーであるファナックは、工場のIoT化を実現するオープンプラットフォーム「FIELD system」を提唱しており、それを支えるのがNTTのエッジコンピューティング技術だ。大量のデータを低遅延で送受信できるIoTデータ交流基盤によって、工場の多種多様な機械から上がってくるデータを統一的に管理。また、工場用App Storeともいうべきアプリ配信基盤によって、各種アプリの配信、管理を実現する。

 また、IoT機器同士が連携して作業する状況、たとえばIoT機器同士で物品を受け渡すようなケースも想定される。このとき、不正なIoT機器が入り込まないように制御することも必要だ。NTT研究所は、人間が介在することなく、IoT機器が自律的に、許可された機器同士で作業する仕組みを開発。これによって、なりすましや無許可動作を防げるという。

■ウェアラブル生体センサー「hitoe」を医療に活用

 着るだけで生体情報の連続計測が可能な東レの機能素材「hitoe」。この素材を医療分野で活用する取り組みがNTTと共同で行われている。「hitoeメディカル電極」と「hitoeメディカルリード線」をhitoe医療専用ウェアと組み合わせることで、着るだけで長期のホルター心電図計測が可能になる。従来の計測方法では電極やケーブルが邪魔で動きにくく、それらで皮膚がかぶれる場合もあり24時間の計測が一般的だったが、hitoeを活用すると患者の負担が減り、1週間以上という長期間の計測も可能になる。

■未来に活かすネットワーク技術や基礎研究も

 2020年から先の未来を見据えて、NTTはさまざまなネットワークやクラウド関連技術の開発に取り組んでいる。

 現在、大規模ネットワークで起こる障害対応では、スキルを持つ保守者が大量のアラームを分析し、確認試験を行って切り分け作業を行っている。それを将来的には、障害箇所とアラームの因果関係を記述したルールを基に、障害箇所を瞬時に推定してマップ上に可視化。数時間から数日必要としている分析・切り分け作業を短縮し、迅速に復旧できるようにすべく、自動化に取り組んでいる。

 量子エレクトロニクス技術を用いた、まったく新しい原理のコンピュータも実現されている。従来のコンピュータでは効率よく解けなかった「組み合わせ最適化問題」を高速に解ける「量子ニューラルネットワーク」だ。2000ノード(分岐点)からなる大規模グラフの最適化問題を、1万分の1秒以下の時間で解くことができるという。量子ニューラルネットワークは、創薬や通信ネットワークのリソース最適化など、膨大なデータの最適化を必要とするあらゆる分野への応用が期待されている。

 エンターテインメント系技術から地味な基礎研究まで、NTTの研究の領域は幅広い。こうした研究が、近々には東京オリンピックで、基礎研究もいつの日か実現されているかもしれないと思うと期待が膨らむ。

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