富士フイルムのミラーレス「GFX」はカメラの歴史を動かすか

富士フイルムのミラーレス「GFX」はカメラの歴史を動かすか

試乗やアフターサービスのように「車を売るように売りたい」

 「最もいいカメラは一眼レフ」という常識に、ミラーレス一眼カメラが本気で挑み始めた。富士フイルムは、新製品発表の舞台に京都・二条城を選び、政権交代への意気込みを強調した。一眼レフは高い画質に加え、交換式レンズを持つユーザーが同じメーカーの機種に買い替える循環が強固だ。デジタルカメラ市場はスマートフォンに席巻された後、次はミラーレスでどう変わるのだろうか。

 「『GFX』がカメラの歴史を動かす」。富士フイルムの古森重隆会長は、商業写真向け高機能ミラーレス一眼カメラ「GFX 50S」の二条城(京都市中京区)での発表会で、こう力を込めた。

 150年前に二条城で行われた大政奉還になぞらえ、カメラの主役の座を狙う。古森会長は「GFXの追加で、ミラーレスで全ての撮影領域をカバーできる」と自信を示す。

 GFXは、一眼レフカメラに搭載されるフルサイズのイメージセンサーの1・7倍の大きさの中判センサーを搭載している。画素数は約5000万画素。一つひとつの画素が大きく、より多くの光を取り込んで、立体感や奥行きを表現する。

 人物や風景、広告などの静物写真で威力を発揮できる。プロ写真家向けだが、1キログラムを切る重さと100万円を切る価格で、ハイアマチュアにも訴求する。

 従来も中判センサー搭載のカメラは市場にあったが、高価で、重く、ピントを合わせにくかった。このため、「フルサイズが一般的な上限となっていた」と、カメラ部門を担当する飯田年久光学・電子映像事業部長は説明する。この問題をGFXは解決した。

 同社は、2010年ごろからコンパクトカメラがスマートフォンに市場を奪われはじめると、いち早く高級路線へ転換。GFX以外に、スポーツなど撮りたい写真に合わせてミラーレスカメラをそろえてきた。

 GFXを起爆剤に、2―3年後に10万円以上の高級ミラーレスカメラで、現在約3割のシェアを4―5割に引き上げる。

 高級シフトは売り方にも表れる。従来、カメラは量販店などで買うことが一般的だったが、「車を売るように売りたい」(飯田事業部長)という。

 プロ向けのGFXはもちろん、スマホでいい写真が撮れるようになり、カメラを持つこと自体が特別になった。車の試乗やアフターサービスのように、販売面でも所有者の満足度向上を考えなくてはいけない。

 古森会長は「写真の原点に戻り、人間のエモーションに訴える。まあ、自信満々だな」と笑みを浮かべる。事業構造改革で辣腕(らつわん)をふるった古森会長が、祖業の流れをくむカメラでも変革に挑む。

パイの取り合いでなく、スマホから乗り換えにつなげられるか

 望遠や広角など用途に合わせてレンズを選択するレンズ交換式カメラの中で、ミラーレスカメラの比率は着実に上がり、足元では約3割に上っている。同市場は、まずソニーやオリンパスなどがけん引し、一眼レフに強いキヤノンやニコンなども商品を拡充。今後、ミラーレス比率の拡大はさらに加速し、富士フイルムは、「19―20年ごろに5割を超える」との見解を示す。

 ただ、ミラーレスが市場を席巻するというわけではなく、一眼レフもミラーレスも平等に比較購入できるという状況だ。

 一眼レフユーザーの愛着は強く、画質だけでなく、シャッター音や質感も魅力になっている。その分、一眼レフのレンズ所有者に対して商品を出し続ける責任があり、ミラーレス専業の方が大胆な商品提案をしやすい。また、ユーザーも世代交代する。

 ミラーレスの開発競争を、パイの取り合いだけでなく、スマホから本格的なカメラへの乗り換えにつなげたいところだ。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏