宇宙の宅配便「こうのとり」6号機、打ち上げ成功!宇宙開発と人類の未来を背負った日本の挑戦
三菱重工と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月9日、国際宇宙ステーションに物資を補給する「こうのとり」6号機を搭載した、H-IIBロケットの打ち上げに成功した。「こうのとり」6号機はその後、順調に飛行を続け、同13日にステーションに到着。これからステーションに滞在している宇宙飛行士によって、中の荷物を取り出す作業が行われる。
「こうのとり」6号機には、国際宇宙ステーションで暮らす宇宙飛行士にとって必要不可欠な水や食料品などの補給物資の他、ステーションに電力を供給する日本製の電池も搭載されており、国際宇宙ステーションのこれからの運用にとって必要不可欠な重責を担っている。
さらに昨今問題になっているスペース・デブリ(宇宙ゴミ)を除去するための新しい技術の試験も行われるなど、宇宙開発と人類の未来を見据えた大きな使命も帯びている。
◆人類の宇宙活動の最前線、国際宇宙ステーション
地球の上空約400kmを、秒速約8kmものスピードでまわり続けている国際宇宙ステーション。その建造は1998年に始まり、米国のスペースシャトルやロシアのロケットで次々と部品を打ち上げて組み立てられ、2011年をもって完成した。
宇宙飛行士が生活や実験を行う居住部分を中心に、電力を作り出す巨大な太陽電池が広がっており、ステーション全体の面積はサッカー場ほどもある。条件さえ良ければ、光り輝きながら夕方や明け方の空を飛んでいく姿が、地上から肉眼で見ることもできる。
その内部には常時3~6人の宇宙飛行士が滞在し、日々、化学実験や新しい技術の試験、広報・普及活動が行われている。アニメや映画に出てくる宇宙ステーションや宇宙コロニーは、一つの大都市や人工の地球のようになっていることが多く、それと比べると国際宇宙ステーションはまだ小さいが、それでも人類の宇宙活動の最前線であることは間違いない。
◆宇宙の宅配便「こうのとり」
国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が生活するためには、地球から定期的に物資を補給することが必要不可欠となっている。アニメや映画の世界と違い、人が宇宙で自給自足できるような技術はまだ実現しておらず、水や酸素、食料など、人が生きる上で必要なものは地球から持ち込まねばならないのである(ただし現時点でも、尿を飲料水に変えたり、水を電気分解して酸素を取り出したりといった、限定的な自給自足は行われている)。
そうした物資補給の一翼を担っているのが、日本の補給機「こうのとり」である。全長約10m、直径約4m、巨大なビール缶のような形をしている。内部には最大約6トンの物資を搭載することができる。
「こうのとり」は2009年に初めて打ち上げられて以来、年1機ほどのペースで打ち上げが続いており、パートナーであるロシアや米国が運用する他の補給船(かつては欧州も運用)と共に、国際宇宙ステーションの運用を支え続けている。
◆重要度高まる「こうのとり」
これら補給船は、それぞれ違った特徴をもっており、それを活かして貢献を続けている。たとえば日本の「こうのとり」は一度に大量の荷物を運ぶことができるが、打ち上げ回数は少ない。一方、ロシアや米国の補給船は、一度に運べる荷物の量は「こうのとり」より少ないものの、その代わり打ち上げ頻度が高い。また、「こうのとり」は大きな荷物を運ぶことができるが、燃料などは運ぶことができない。一方ロシアの補給船は小さな荷物しか運べないが、燃料を運び、国際宇宙ステーションに補給することもできる。さらに米国の補給船の一つは、国際宇宙ステーションから物資を地球に持ち帰ることもできる。
もし一機の補給船のみで、これらすべての機能を実現しようとすると、大きく重く、複雑な、扱いづらい機体になってしまう。それぞれ異なる特徴をもつことは、国際宇宙ステーションという存在を最大限に有効活用するという点で大いに役立っている。
また、そして物資の補給を途切れさせないという点でも、大きな利点となっている。2014年に米国の補給船の1機が打ち上げに失敗したが、ロシアの補給船と、米国のもう一つの補給船、そして「こうのとり」もあったため、補給が途絶えることはなかった。2015年にはロシアの補給船と米国の補給船が相次いで失敗したこともあったが、このときも米国の別の補給船と「こうのとり」は生きていたため、やはり補給は途絶えなかった。そして今回も、12月1日にロシアの補給船が打ち上げに失敗したことで、「こうのとり」のミッションの重要性が、いつも以上に高まることになった。
もし万が一、補給が長く途絶えるようなことになれば、宇宙飛行士らは国際宇宙ステーションを捨て、地球に帰還しなければならない可能性もある。国際宇宙ステーションの運用や、ひいては国際協力や貢献という点で、「こうのとり」の存在は、他の補給船と並んで非常に大きなものになっている。
◆「こうのとり」6号機のミッション
「こうのとり」の運用は2009年に始まり、以来1年に1機ほどのペースで打ち上げられ、今回で6機目となった。12月9日に打ち上げられた後、徐々に軌道を変えて国際宇宙ステーションに接近。4日後の13日にステーションに到着した。これから宇宙飛行士によって、中の荷物を取り出す作業と、ステーションで出た廃棄物を積み込む作業が行われる。
国際宇宙ステーションには2017年1月まで滞在し、その後分離され、ステーションで出た廃棄物もろとも、大気圏に再突入して処分される。
1号機以来、基本的に「国際宇宙ステーションに物資を送る届ける」という仕事は変わっていないものの、その物資の中身は毎回変わっており、また運用を重ねる中で改良や最適化が行われたことで、積み込める物資の量も増えるなど、少しずつ進化している。
今回の積み荷の中で最も注目を集めているのは、国際宇宙ステーションで使われる電池である。前述のように、国際宇宙ステーションには巨大な太陽電池が取り付けられているものの、地球の影に入った際には発電できないため、電池から電力を供給しなければならない。
現在、その電池のうち米国側の区画にあるものは、米国製のニッケル水素電池が使われているが、老朽化により新しいものに交換する必要が生じた。そこで選ばれたのが日本製のリチウムイオン電池で、今回の「こうのとり」6号機でその最初のセットが輸送された。今後も「こうのとり」9号機まで毎回輸送され、順次交換される。
このリチウムイオン電池は、ニッケル水素電池に比べて高いエネルギー密度をもっており、現在と同じ能力を、半分の数の電池(48個から24個)で実現することができるという。また長寿命であり、国際宇宙ステーションの運用が終了する2024年まで使い続けることができる。
◆宇宙ゴミを減らすための新しい技術の試験も
さらに「こうのとり」6号機は、国際宇宙ステーションに物資を補給するだけでなく、もう一つ別の重要なミッションも背負っている。それは「導電性テザー実証実験」、通称KITE(カイト)と呼ばれる実験である。
昨今、地球の周囲では「スペース・デブリ」が問題になりつつある。スペース・デブリは、使い古された人工衛星や、人工衛星を打ち上げた際のロケットの残骸、それらから外れたり飛び散ったりした部品など、いわゆる宇宙ゴミのこと。これらは他の人工衛星と同じように、猛スピードで地球の周囲を飛んでいるため、大きなものはもちろん、ネジ一つほどの小さな物体でも、運用中の衛星に衝突すると大事故になる。さらに、衝突によって発生した破片の一つひとつが新しいデブリになってしまうという厄介さもはらんでいる。
高度が低ければ、大気との抵抗で比較的早く落下するため大きな問題にはならないが、高い高度にあるものは、何年、何十年も飛び続けることもあるため、何らかの手を打つ必要性が訴えられている。
現時点では、新たに打ち上げる人工衛星に、デブリを発生させないような設計をしたり、人工衛星を打ち上げたロケットをそのまま放置せず、残った燃料などを噴射してなるべく早く地球に落下するような軌道に乗せたりといった対策が行われているが、いずれは、すでに宇宙にある無数のデブリを回収し、処分していくことが必要になってくる。
しかし、デブリは猛スピードで飛んでいるため捕まえにくく、捕まえても軌道を落とすのにエネルギーが必要なため、処分用の宇宙船も巨大になってしまう。衛星の残骸1機を処分するのに、新しい処分用衛星1機を毎回新造していては割に合わない。
◆電気の力でデブリを落とす
そこで今回「こうのとり」6号機で実験が行われるKITEでは、テザー(ワイヤー)を使う、まったく新しい方法が試験される。
まず補給任務を終え、国際宇宙ステーションから分離した「こうのとり」6号機から、長さ700mのテザーを伸ばす。そしてそのテザーに電気を流すと、地球がもつ磁力(地磁気)との影響でローレンツ力という力が発生し、「こうのとり」を進行方向とは反対の方向に、つまりブレーキをかけるように作用する。
原理は有名な「フレミングの左手の法則」と同じで、これによりデブリの速度を落とし、早期に地球の大気圏に落とすことができる。ただし今回はあくまで試験なので、「こうのとり」を落とすことまではせず、これほどの長さのテザーが伸ばせるのか、振動は制御できるのか、そして本当に軌道を変えるほどの力を出すことができるのか、といったデータを取る。
◆未来に繋がる「こうのとり6号」
この仕組みは、エンジンを噴射するほど大きな力は出せないものの、装置をシンプルに、また安価に作ることができる。たとえばデブリへの装着も、とにかくデブリにくっつけば良いので、フックのようなもので引っ掛けたり、テザーをぐるぐる巻きにしたりといった簡単な仕組みで良い。また、エンジンのような装置は不要で、ただテザーに電気を流すだけで良いという利点も大きい。
もし試験がうまくいけば、将来的にこのテザーをいくつも持った衛星を打ち上げ、処分したいデブリに近付き装着。また次のデブリに移動して装着……といった運用ができるかもしれない。
この他にも、新しい仕組みの太陽電池を搭載しての試験や、国内外の大学などが開発した超小型衛星をステーションに送り届けたりなど、「こうのとり」6号機は数多くの重要な使命を帯びている。無事にミッションを終え、宇宙開発と私たちの未来につながる、元気な赤ちゃんを運んできてくれることを願いたい。
