「Apple Pay」VS「Android Pay」で始まるスマホ電子マネー戦国時代
iPhoneでも電子マネーを利用できるようになる「ApplePay」が2016年10月25日にスタートしました。ITが個人にとっての金融の利便性を高めていくフィンテックについて考えている本連載ですが、今回は「電子マネー」を取り上げてみます。
電子マネーそのものはApplePayに始まった話ではありません。カードタイプの電子マネーを所持している人はたくさんいますし(電車に乗る人のほとんど全てといってもいいでしょう)、おサイフケータイ機能が入っているAndroidスマホでモバイルSuicaやnanaco、楽天Edyなどを設定済みという人も多いはずです。
しかし、国内ではAppleのiPhoneが圧倒的なスマホシェアを持っています。「ITpro」の記事を読んでいたところ、日本のシェアは51.7%がiOSだったそうで、これは世界でもっとも高い割合だそうです。個人的な感覚ではiPhone利用率は若い人ほど高いと感じています。高齢者がスマホを使うときはドコモなどから発売されている高齢者向け端末(NTTdocomoの商品名は「らくらくスマートフォン」)の利用率が高いと思われるからです。
「スマホで電子マネー」というのはリテラシー感度が高い若い人に向いているテクノロジーですが、今までiPhoneで利用できないため、「スマホで電子マネー」をスマホユーザーの半分以上は利用できませんでした。これからはその利用が加速することと思います。
考えてみれば、電子マネーほどITと金融が結びついた仕組みはありません。コインやお札を所持しなくても決済が可能になるわけですし、そのためにスマホの機能とネット回線とITの基盤がフルに活用されています。フィンテック目線で考えてみても、今回のApplePayは見逃せない転換点だと思います。
これに加え、2016年12月13日にAndroidPayがスタートしたことで、スマホを使った本格的電子マネー時代が始まったことになります。
■今後はカードタイプからスマホタイプに
ApplePayとAndroidPayをきっかけにして、これからの電子マネーのトレンドは「カード」から「スマホ」に移行していくことになると思われます。ApplePayは厳密にいえば独自の電子マネーというより、既存の電子マネーシステムを活用する「器」のようなところがあります。今のところiD、QUICPay、Suicaといった国内で確立している電子マネーシステムを活用し決済を行います(クレジットカード情報を使った決済も可)。
このうちiDやQUICPayはおサイフケータイで使われてきたスマホタイプの電子マネーですが、Suicaなどに利用額では差をつけられていました。しかしApplePayにクレジットカードを登録すると、iDやQUICPayの利用設定になります。今後、取り扱い量は拡大していくことになるでしょう。実際に使ってみると、電子マネー決済用の端末にiPhoneを乗せ、指紋認証をすれば決済が簡単に完了してとても便利です。
そしてSuicaです。フィーチャーフォンの時代から利用の多かったモバイルSuicaを、iPhoneに切り替えたため利用停止にしていたという人や、実はモバイルSuicaを使うためにAndroidスマホを維持しているという人がたくさんいます。こうした人はiPhoneのSuica対応により、Suica利用を多く行うはずです。Suicaの強みはなんといっても主要コンビニすべてで対応していることと交通機関の多くが対応していることの二重の利便性にあります。
ちなみにiPhoneのSuica対応ですが、事前のニュースでは「既存のカードSuicaの情報を吸い取る」という記事がよく紹介されていました。実際にはAppStoreにSuicaのアプリが新しくでき、これをインストールして新規発行の手続きをすれば既存のカードを使用不可にする必要はなく、誰でも簡単にSuicaが作れます。Suicaは何枚持ってもいいので、むしろこのほうが便利です。
そしてApplePayの普及により、電子マネーの利用は「カードレス」になっていくことになります。チャージもオンラインでできるので、チャージから支払いまでスマホで完結したシステムができあがるというわけです(後述のとおりiDやQUICPayはチャージ不要でその都度カード払いをする)。
おサイフケータイに早くから対応し「電子マネー×スマホ」を牽引してきたAndroidスマホ陣営にも変化が出てきました。2016年12月13日にAndroidPayがスタートしたのです。今のところは楽天Edyのみですが、FeliCaに対応してくるとみられ、今後どう動いてくるかに注目が集まります。
また、nanaco、WAONなどはおサイフケータイにのみ対応していますが、利用件数ではSuicaと同水準の3強となっているほか、決済金額ではイオン系のWAONが高いシェアを持っています。これらの電子マネーが今後ApplePayやAndroidPayに対応してくるのかも気になるところです。
■電子マネーはクレカ連携で「割安」な現金決済になる
ところで、電子マネーにはチャージの問題があります。電子マネーの決済方式は大きく分けるとポストペイ型(そのつど決済して後払いする方式)とプリペイド型(事前にチャージしてそこから決済する方式)があります。
QUICPay、iDは決済のたび利用金額を指定したクレジットカードの決済で落とすポストペイ型で、後日クレジットカードの請求と合わせて支払います。この場合、クレジットカードの利用金額に応じてカード会社が定めるポイントが還元されます。一般的には0.5%ですが、これはつまり現金決済より「割安」な買い物、ということです。
Suicaやnanaco、WAONなどは事前に必要な金額をチャージし、その範囲内で決済ができるプリペイド型です。この場合、コンビニや駅券売機などで現金を渡してチャージをするか、クレジットカードと連携してそこからチャージするかを選ぶことができます。クレジットカードからのチャージをするとカード利用になりますからクレジットカードのポイントが還元されます。スマホであれば初期設定の際にクレジットカードを連携させておくことで、いつでもどこでもチャージできる電子マネーになり、かつポイントも貯まる「割安」な買い物ということになります。
例えばJR東日本の電子マネーであるSuicaと、JR東日本グループであるVIEWカードを組み合わせてチャージすると、還元率は1.5%にもなります。ApplePayでSuicaを利用したい人は、長い目で見ればVIEWカードを新規で作ってもいいでしょう。
電子マネーがコインレスになるだけでなく、ポイント還元による割安な買い物に変動している、ということはとても便利で美味しい話です。スマホで電子マネーを使うときには、連携するクレカ設定にも気をつかっておくといいでしょう。
■まだ未体験ならものは試し ApplePayやAndroidPayの設定をしてみよう
電子マネーについて交通費以外に積極利用してこなかった人は、「定期はカードタイプのSuica、コンビニ等の電子マネー決済はApplePayのSuica」というように使い分けてもいいので、電子マネー利用を進めてみるべきだと思います。
ApplePayの初期設定は驚くほど簡単です。クレジットカードをiPhoneのカメラで撮影するだけで基本データの入力ができるくらいです。Suicaについてはアプリをインストールして指示に従えば設定が完了します。管理はWalletのアプリで行います。
AndroidPayは今のところ楽天Edyだけですがこれまた数クリックで設定が完了します。今なら新規設定すると400円相当のポイントが付与されますので、そのためだけに設定してもいいくらいです。
電子マネーについては活用のヒントやコツについてまだお話したいことがありますので、もう一回取り上げてみたいと思います。便利すぎてムダづかいしないようなちょっとした工夫をしてみたいと思います。
