「仕事のミス」は脳を鍛えれば絶対に減らせる、度忘れや勘違い、誤判断が多い人に朗報

「仕事のミス」は脳を鍛えれば絶対に減らせる 度忘れや勘違い、誤判断が多い人に朗報

脳の性質を理解すれば、度忘れや不注意、勘違い、さらには誤判断も予防できるという。『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』を書いたトレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏に詳しく聞いた。

 ──私自身、「おっと、忘れた」など、日常茶飯事ですが。

 仕事のミスは、記憶力や注意力、コミュニケーション力、あるいは判断力が低いから起こるのではない。中堅やベテランになれば自然とミスが減るわけでもない。実はわれわれの脳自体がミスを起こしやすいメカニズムになっている。それは、「忘れた」というミスに限らず、そのほかのミスも脳の「記憶」にほとんどの第一原因がある。

脳は現代の生活には適していない

 ──記憶が原因ですか。

 脳は今のわれわれの生活に完全には適応していない。動物だったときの記憶に適したままで、今のようなたくさんの情報を処理するように作られてはいない。ミスは脳の持っているメカニズムからして十分起こりうる。記憶のメモ帳であるワーキングメモリが端的な例だ。基本的にそんなに容量は大きくない。ただ、そこで瞬間的に覚えることはでき、覚えたという実感もある。だが、容量が小さいので、続いてほかのところに注意が行くとすぐに忘れる。そういう性格がメモリにある。

 ──不注意とも関係する?

 自分が信じられなくなるような「見落とし」もそう。いつも物事をちゃんと見ているつもりでもほとんど省略していて、基本的にはきちんと見ているわけではない。手品師にあるところに注意を向けられると、手品の種にかかわるところに注意が向かないのと同じ。これは認知科学の実験で立証されている。だから度忘れや見落としのミスは普通に起きる。自分の注意や頑張りが足りなかったと責める必要はない。

 逆に、自分を責めて、頑張ろうとすると、そのためにワーキングメモリを食って圧迫してしまう。そこに注意が行ってしまい、目の前の仕事に行かず、かえってミスを起こすようになりかねない。

 ──この本では、仕事のミスを4つに分けていますね。

 4つそれぞれのミスが起こるメカニズムと、ミスを防ぐ基本対策を解説した。具体的には、まず「忘れた」というメモリーミス。二つ目が「見落とし」のアテンションミス。三つ目がコミュニケーションミス。これは「伝わっていない」「聞いていない」とよく言われるものだ。そして最後に、「判断を間違えた」というジャッジメントミス。ミスそれぞれの基本対策だけでなく、上司や同僚、取引先から「すごい」と言われるための応用編として、マスターに至る道も具体的に用意した。

 ──アテンションミス、つまり見落としの基本対策とは。

 結局はワーキングメモリ頼りなので限られている。あるものに注意が行くと、どうしてもほかのものは漏れてしまう。その際、注意の無駄遣いになる気になること、たとえば家庭や自身の健康などへの気遣い要素はなくしておく。コンサルタントがよく使うフレームワークを使うのも一法だ。フレームワークとは「どこに注意を向けるべきかを事前に決めてあるルール」といっていい。古典的だが、仕事術の定番To Doリストを作るのも考慮したい。

 いま一つ、単純な作業に慣れると注意力は増すことも忘れないでほしい。車の運転に例えられる。基本的な動作を一つひとつ自分で考えなくてもできるようになったら、それをやりながら複雑なことができる。基本作業に習熟すると、そこに注意がいらなくなる。それを身体の「手続き記憶」というが、単純な作業も、それを反復して確実にできるようにすると、同時に複雑な作業ができる。

集中力を上げるには「ゾーン」に入れ

 ──アテンションでマスターになるには?

 一つのことに集中する究極の形であるゾーンに入ることだ。そこに入りやすくする方法は6つほど考えられる。たとえばそのうちの一つは、ラグビーの五郎丸歩選手のゴールキックで注目されたルーチン。一連の決まった手順を活用する。ゾーンに入れば意識的に注意を向けようという努力がいらなくなる。それだけワーキングメモリを食わない。フルに使えるようになるので、パフォーマンスが上がる。

 ──仕事のうえでは、中でもコミュニケーションミスは致命的となりかねません。

 コミュニケーションとは、普通思われている情報のキャッチボールでは実はない。言葉を刺激として反応が起きている脳の内部プロセスであり、やっているのは単なる刺激交換にすぎない。

 コミュニケーションで言葉が語られると、記憶が勝手に呼び起こされて話ができてくる。自分の持っている日本語の記憶で話はできているのだ。それも思い出そうと思って記憶を使っているのではなくて、勝手に思い出されているのだから、普段は気づかない。それゆえ、互いに共有しようという意識がないと、勘違いやすれ違いが起こる。結局は、ミスコミュニケーションがコミュニケーションだとの前提に立つことだ。

 ──コミュニケーションでマスターになるには。

 まず「答えより応え」。交わされている言葉だけにどうしても意識が行ってしまうが、表情や言葉のトーンといった雰囲気を気に掛ける。「やります」と言っても「本当に」か、「やる気はないが」か。質問しても部下が答えてくれない、あいつはあまり話さないとしても、いわゆるアンサーの答えは出ていなくとも、レスポンスの応えは必ず出ているものだ。そのレスポンスをきちんととらえられるのが上級者といえる。

 そこに絡むのが「事柄と人」だ。事柄も人に焦点を合わせる。たとえばビジネスの文脈だと、四半期の目標を立て何をするか具体的な事柄を決めて、ただシートを埋めていくのでは、なかなか人は動かない。この目標で君はどう思う、あなたならどうしたいと、主語を人にしていかないと進まない。本当のプロ集団だったら事柄だけで動くかもしれないが、普通の人はいろいろな葛藤を抱えていたりする。人に戻し、そこに入っていかないといけない。

度忘れ予防にはメモやチェックリストが有効

 ──冒頭の度忘れのメモリーミスにはどうしたらいいですか。

 メモリの容量が小さいから、忘れるものだと割り切ったほうがいい。忘れることはワーキングメモリを圧迫しないための一つの能力と考えて、これは常套手段だが、メモやチェックリストを記憶補助の仕組みとして使うことだ。

 ──マスターへの道は?

 いわゆる記憶術が有効で、これは「イメージ」と「場所」がキーワード。古代ギリシャの時代から変わっておらず、世界記憶力選手権の覇者もこのイメージと場所を記憶の武器にしている。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏