Spotify、AI対策導入から1年の進捗を公表 5,000万曲以上のスパム・スロップをレコメンドから排除
Spotifyは、AI時代におけるアーティストとリスナーの保護に向けた取り組みの開始から1年が経過したことを受け、これまでの進捗と現状を公表した。
同社はすべての施策の根底に「人間の芸術性(Human Artistry)を最優先にする」という理念を据え、スパムやなりすまし、誤解を招くコンテンツ(欺瞞行為)からの保護を進めてきた。今回明らかにされた主な進捗は、レコメンドからのスパム・AIスロップ排除、「Spotify 認証」バッジの展開、「AIペルソナ」バッジの導入、「AIクレジット」の導入の4点となる。
レコメンドシステムの改修により、今年だけで5,000万曲以上のスパムおよびスロップがレコメンドから排除された。Spotifyが「スキップされた曲」「無視された曲」「不快として報告された曲」を分析したところ、エンゲージメントが極めて低い楽曲の多くがスパム・スロップとして特定されるコンテンツだったという。社内のプレイリストエディターも同様の基準を設けており、スパム・スロップと判定されたコンテンツを選曲することはない。
スパム・スロップの識別にあたっては、リスナーのエンゲージメントやフィードバック、アップロードのパターン、複数の外部AI検知ソースからの情報、メタデータ解析などを組み合わせた多角的な判断が行われている。大量アップロード、重複コンテンツ、SEOの不正操作、スパム目的のユーザープレイリストネットワーク、不正な短尺トラックの乱用などを検知するため、システムは常に更新されている。
「Spotify 認証」バッジは今年4月に導入されたもので、プロフィールの主が実在する生身のアーティストであることをリスナーに伝えるものだ。これまでに30万人以上のアーティストが認証を受けており、そのうち70%以上がインディペンデントアーティスト、ユーザー検索の99%以上をカバーする規模となっている。認証にあたっては、継続的なファンからのエンゲージメント、Spotifyのコミュニティ規定・ポリシーの遵守、実在性の証明という3つの観点から審査が行われる。AI生成曲がメインのプロフィールやAIペルソナを表すプロフィールは、この認証を受けることができない。
「AIペルソナ」バッジは今年8月に発表され、先月より実在の人物ではなくAIによって生成されたと推測されるアーティストのプロフィールへの表示が開始された。現在、モバイル、デスクトップ、Web版のすべてのリスナーに公開されている。AI生成のアーティストアイデンティティをラベル付けしている主要ストリーミングサービスは現時点でSpotifyのみだが、業界標準として定着させるため、他社サービスにもこのバッジデータを提供・アクセスしやすくする規格化を模索しているという。リスナーが自発的にフォローした場合などを除き、AIペルソナが表示されたアーティストの楽曲が編集プレイリストやアルゴリズムによるレコメンドに自動で含まれることはない。あわせて、リスナー自身が「AIペルソナではないか」とプロフィールを報告できる機能の開発も進められている。
「AIクレジット」は、音楽制作プロセスにおいてAIツールがどのように使用されたかを明示できる仕組みで、ボーカル、作詞、プロデュースなど、プロセスのどこでAIが使われたのかを正確に確認できる。現在、アーティストからは毎日数万件のAIクレジットが提出されており、その大部分のトラックには人間のクレジットも併記されている。Spotifyはこの傾向について、AIが音楽制作を完全に代替するのではなく「アーティストの制作ツール」として活用される傾向が強まっていることを示しているとしている。
また、新機能「アーティストページの保護」の導入により、アーティストは自らの名義がクレジットされた新規リリースがSpotifyに配信される際、事前の確認・承認が可能になる。ストリーミングサービスとして初となるこの予防的防衛策は、今年末までにすべてのアーティストへ提供を開始する予定だ。
ロイヤリティプールの保護については、2024年に導入された「楽曲の収益化ポリシー」が、AI生成コンテンツの急増に対する防御線として機能している。AI生成である可能性が高いシグナルを持つトラックは、通常のトラックと比較して収益化の要件である「年間1,000回再生」の基準を下回る確率が10倍高いという。
Spotifyは「AIによって音楽がより氾濫する時代になればなるほど、リスナーは人間による芸術性の価値をより一層高く評価するようになると信じている」とし、今後も取り組みを継続する姿勢を示している。
