【半導体株を左右する「シリコンサイクル」の行方】資産2.7億円の億り人投資家が「長期投資の観点では必ずしも恐れる必要はない」と指摘する理由 “谷”は仕込み時のチャンスとも
半導体株と言えば昨今のAIブームを追い風に大きく値上がりしてきた銘柄も多いが、半導体業界には好況と不況を数年の単位で繰り返す「シリコンサイクル」という独特の波がある。半導体株への投資の際にこのサイクルの「山」と「谷」をどう考えればよいのか。
世界の高配当株・増配株、半導体株・AI株に長期投資して資産2.7億円を築いた個人投資家のおけいどん(桶井道)氏は、「半導体の市場規模はシリコンサイクルを繰り返しながらも拡大しており、長期投資の観点では必ずしも恐れる必要はない」と説く。過去のシリコンサイクルと市況の変化を振り返りながら、半導体株の乗りこなし方を探る。
個人投資家のおけいどん氏、半導体商社・トナリズムを経営する新川裕也氏の共著『3倍・5倍・10倍の神株が続出! 半導体株&AI株 投資大全』(すばる舎)より、一部抜粋・再構成して紹介する。
半導体株の株価に影響する「シリコンサイクル」
株式投資の世界で「シリコンサイクル」という言葉を耳にしたことはないでしょうか? これは、半導体業界で定期的に繰り返される景気循環(好況と不況)のパターンを指した言葉です。
半導体市場は、おおむね3~4年周期で好景気と不景気を行ったり来たりする傾向があり、その様子を主要材料のシリコンにちなんでシリコンサイクルと呼ぶのです。
言い換えれば、半導体ビジネスには需要過剰と供給過多が交互に訪れる波があるということです。もちろん、この周期は半導体株の株価にも影響します。半導体市場にこのような周期的な波乱が起こる背景には、半導体産業の構造的な特徴があります。
半導体企業は、常に先端技術の開発競争を繰り広げ、新しい製品が登場すると需要が一気に増えます。たとえばスマホやデータセンター向けに画期的な半導体チップが開発されると、つくればつくるだけ売れる状態になり、業界は好況期に突入します。
半導体メーカー各社は需要に追いつこうと増産投資を急ぎ、この段階では半導体の価格も上昇しがちです。そして、新川が経営するトナリズムのような半導体商社もその恩恵を受けます。半導体業界全体が潤うということですね。当然、半導体株も好調となります。
しかし、大規模な設備投資による増産効果が出てくる頃には、状況が一変します。ライバル各社が追随したことで、生産能力が一斉に拡大し、やがて市場は供給過多になります。同時に、需要側は一巡して成長ペースが落ち着き、在庫が余り始めます。その結果、半導体の価格は下落に転じ、業界全体が不況期を迎えてしまうのです。半導体商社も然りで、半導体株の株価も同様です。
過去に幾度も繰り返された市況の悪化
このように、技術革新による需要急増→設備増強による供給過剰という流れが一巡すると、不況期が訪れます。しかし、いずれ次の新技術が出現して需要が再び伸び始め、また好況期が訪れる。これが、シリコンサイクルの基本的なメカニズムです。
シリコンサイクルは過去にも何度も繰り返されてきました。代表的な局面としては、2018 年から2019年にかけての半導体メモリ市況の悪化が挙げられます。
この時期、DRAMやNAND型フラッシュメモリの価格が急落し、世界のメモリメーカー各社の業績が軒並み悪化しました。遠因は仮想通貨やデータセンター需要の盛り上がりで、2017~2018年に供給能力を拡大しすぎた反動で、需要が減少に転じたとき一転して供給過剰となったことです。
実際、2018年末~2019年初頭には、DRAM価格が四半期ベースで20%以上も下落し、メモリ大手の出荷金額が前四半期比で20~30%も減少するという事態になりました。サイクルの波に乗って絶好調だったサムスン電子(韓国)やマイクロン・テクノロジー(米国)なども、2019年には収益が大幅に悪化し、四半期ベースでは利益が大きく落ち込む局面がありました。
また、記憶に新しいところでは、2023年から2025年にかけても半導体業界は在庫調整による逆風に直面しています。
コロナ禍の特需で2020~2022年にかけて半導体不足が続いた反動で、2022年後半以降はパソコンやスマホ向けを中心に需要が一服。各社が積み上げた在庫の調整局面となったのです。
影響を真っ先に受けるメモリ分野
メモリ分野はシリコンサイクルの影響を真っ先に受けるため、このときも落ち込みが顕著でした。
サムスン電子は2022年7~9月期のメモリ事業の売上高が前年同期比27%減少、営業利益も同約5割減という大幅な減益に見舞われました。同業のSKハイニックス(韓国)も、かつてない市況悪化に直面していると発表し、マイクロン・テクノロジーも含めたメモリメーカービッグ3全社が、減産や設備投資の抑制に動く事態となったのです。日本のキオクシアホールディングスも、工場稼働率を下げるなどして在庫削減に努めていました。
一方で、2025年には自動車向けやデータセンター向けを中心にメモリ需要が回復。特にSKハイニックスは、AIデータセンター向けのHBMが非常に好調です。ほぼすべての電子機器にメモリは入っていますので、長期的に見てもメモリ需要は引き続き増加するでしょう。
シリコンサイクルを読み切るのは不可能なので、半導体メーカーの業績は勝敗の明暗がはっきり分かれる傾向があります。設備投資と在庫調整が的確にできていれば勝ちですし、そこを読み違えると負ける、というわけです。
言うは易しですが、実際には非常に難しいのが現実です。
「シリコンサイクル<メガ潮流」と割り切って考える
一方で、株式投資の文脈では、半導体市場そのものは長期的に右肩上がりなので、短期的(数年間)に落ち込む局面があっても、長期的には伸びていくと信じて長期保有が吉でしょう。
投資家としての桶井も、シリコンサイクルを読もうとはせず、この業界特有の「癖」として受け止めて、長期投資に徹しています。「シリコンサイクル<メガ潮流」であると割り切って考えるとよいと思います。
ここ数十年の歴史を振り返っても、2001年のIT バブル崩壊や2008年のリーマン・ショック、2019年や2023年など、半導体市場全体の売上が一時的に前年割れする局面はありました。しかし、不況期のたびに新たな需要分野の成長によって市場は息を吹き返し、その後は過去のピークを超える売上高を記録してきています。
半導体産業は、長期的に見ると階段を上るように拡大を続けているのです。個別の半導体株についても、短期的には波乱含みですが、長期の視点で見ると、企業価値や業績は一貫して成長を続けているケースが多い点に注目しましょう。
エヌビディア、ASMLホールディング……飛躍企業が続々
具体例を挙げます。GPU最大手のエヌビディア(米国)は、この10年間でAIブームの波に乗って売上・株価とも数十倍以上の飛躍を遂げました。
半導体製造装置メーカーのASMLホールディング(オランダ)も、EUVリソグラフィという最先端技術を独占的に供給する地位を確立し、過去10年で収益規模・株式時価総額が飛躍的に拡大、今や欧州を代表する超優良企業の一角となっています。
日本企業では、アドバンテストやレーザーテック、キオクシアホールディングスなどが目覚ましく伸びています。
短期的(数年間)なシリコンサイクルの影響を受けながらも、これら企業の価値は、これまで着実に積み上がってきたのです。
半導体市場全体を見ても、需給の波はありつつもトレンドとしては明確な右肩上がり、メガ潮流です。半導体は、現代社会ではあらゆる産業で不可欠な「産業のコメ」であり、デジタルトランスフォーメーション(DX)やIoTの進展によって長期的な半導体需要は増え続けています。
「これからはなんといってもAI」
また、これからはなんといってもAIでしょう。
実際、半導体の市場規模はシリコンサイクルを繰り返しながらも拡大しており、2026年には世界全体で1.5兆ドルに達すると予測されています。
このように、構造的な成長産業である半導体分野では、一時的な需給ギャップに伴う業績悪化があっても、その後の新たな技術ニーズによって再び成長軌道に戻るのが常なのです。
シリコンサイクルは半導体株特有の癖ともいえますが、長期投資の観点では必ずしも恐れる必要はありません。むしろ、経験的にはサイクルの谷こそが、将来の成長を見据えた仕込み時になるケースも多いものです。
実際、半導体株では、市場が強気のときに一気に買うと(一時的に)大損し、弱気のときに買うとすごく儲かることが多いです。極端な楽観が広がっている局面で飛びつくと、高値づかみになりがちですが、それでも年月を経て高値を更新していくケースが多いのです(優良銘柄であることが前提です)。
逆に、もう半導体はダメだと悲観一色の局面こそが、あとから振り返れば絶好の買い場だったという例が繰り返されています。
周りが弱気なときこそチャンス
もちろん、実際に底入れ局面で買うのは簡単ではありません。周囲が悲観ムード一色の中で買い向かうには勇気がいります。しかし、半導体産業の将来性を信じるなら、周りが弱気なときこそチャンスと考え、コツコツと投資を続ける発想も大切でしょう。
現実的には、ドルコスト平均法のように決まった日に定額を買い進めていくのも有効な方法です。桶井はそれに近いタイプで、ほしい銘柄のリストをつくって、毎月順番に買い付けています。それでも、十分に半導体株で成功しています。
おけいどん氏がいま注目している半導体関連銘柄はどれか。関連記事で具体的な銘柄を挙げ、それぞれの注目ポイントについて解説している。
