子ども「なんかくさい」新車を買って初めて家族を乗せた日、後部座席からの一言。あの“新車の匂い”の正体は
新車に乗ったとき、誰もが感じる独特な香り。新しいクルマを手に入れた喜びでワクワクするような匂いですが、ふと子どもからは「なんかくさい」と言われてしまうこともあります。あの匂いの正体はいったい何なのでしょうか。
本記事では、匂いが生まれる意外な理由や夏場に強く感じやすくなる背景、そして同乗者が快適に過ごすための簡単な対策を、順を追ってわかりやすく解説します。
「何この匂い、くさい!」子どもの率直なひと言から始まる疑問
先日、筆者が待ちに待った新車を購入し、初めて子どもを後部座席に乗せたときのことです。新しいクルマ特有の香りに包まれて、運転席で一人ワクワクした気分に浸っていました。しかし、ふと後ろを振り返ると、子どもが鼻をつまみながら「なんかくさい」「何この変な匂い?」と顔をしかめていたのです。
思い返してみれば、今回だけではありません。これまでも新しいクルマに乗り換えたり、友人の新しいクルマに乗せてもらったりした際、子どもからは同じようにくさいと言われることがありました。多くの車好きにとっては、あの香りは「新車を買った」という喜びを実感させてくれる特別なものです。むしろ、この匂いを嗅ぐことで買い替えた実感が湧くという方も少なくないでしょう。
一方で、先入観のない子どもにとっては、単純に見知らぬ不快な匂いとして感じられるようです。この率直な反応を受けて、ふと一つの疑問が湧いてきました。そもそも、私たちが普段何気なく嗅いでいるあの独特な匂いの正体は、いったい何なのでしょうか。
実は200種類以上。多様な成分が織りなす「新車臭」の正体
新車の匂いと聞くと、真新しい革シートの匂いや、新品のプラスチック部品の匂いを想像する方も多いかもしれません。筆者自身も当初は、樹脂部品や接着剤、あるいは革シートならではの特定の素材が発する匂いなのだろうと何気なく考えていました。
しかし、日本自動車工業会の説明や過去に行われた臭気に関する研究を調べてみると、一つの特定の成分や香料が原因になっているわけではないことがわかります。自動車の室内空間には、シートやダッシュボード、ドアのトリム、天井材、カーペットなど、非常に多岐にわたる素材が使われています。
実は、これらの無数の新品部品から揮発する物質などが空気中で混ざり合い、複雑な複合臭を作り出しているのです。これらは一般的にVOC(揮発性有機化合物)と呼ばれており、常温でも空気中に揮発しやすい性質を持っています。
過去に行われた研究のなかには、新車の車内から200種類を超える化合物が検出されたという報告もあるほどです。私たちがひとまとめに新車の匂いと感じているものは、決して一種類の物質ではなく、数え切れないほどの微量な成分が複雑に絡み合った香りだといえるのです。
夏の炎天下で匂いがキツくなるのは「気のせい」ではなかった
車内の匂いが多数の素材から揮発する物質の混合であるとわかると、また別の身近な疑問が浮かんできます。それは、「夏の暑い日にドアを開けた瞬間、新車の匂いがいつも以上に強く感じられるのはなぜか」ということです。
おそらく多くの方が、夏場はムワッとした熱気とともに、匂いが一段とキツくなるように感じたことがあるのではないでしょうか。実はこれ、単なる気のせいではありません。
車室内のVOCには温度依存性という特徴があり、暖かくなると内装材から空気中に揮発する物質の量が増える傾向があります。ある研究では、革シートやダッシュボードなどの内装材料を25℃と60℃の条件で比較したところ、温度が上がることで特定の揮発物質の放散強度が大きく増加することが確認されています。
夏の炎天下に駐車した車内は非常に高温になるため、内装材からの揮発が一気に促進され、結果として匂いをより強く感じやすくなると考えられます。つまり、季節や気温の環境条件によって、新車の匂いはその強さを大きく変化させているといえそうです。
時間とともに消えていく理由と、メーカーによる知られざる工夫
気温によって匂いが強くなることがある一方で、新車の匂いは永遠に続くわけではありません。納車から半年、あるいは1年と愛車に乗り続けていくうちに、いつの間にか独特の匂いがしなくなったと感じた経験があるはずです。
これにもしっかりとした理由があります。新品の内装材から放散される揮発物質が、時間の経過とともに徐々に減少していくためです。日本自動車工業会でも、車室内のVOC濃度は一般的に時間の経過とともに低減していくと説明しています。つまり、納車直後が最も匂いが強く、徐々に落ち着いていくという自然なメカニズムがあるのです。
また、近年の自動車メーカー各社は、乗る人の快適性を高めるために、これらの物質を低減する自主的な取り組みを長年進めており、素材の選定を見直したり、製造工程での接着剤を変更したりと、目に見えない部分でさまざまな努力を重ねています。
時間が経てば自然と匂いは薄れていきますし、メーカー側もより快適な車内空間を目指して改善を続けているため、過度に神経質になる必要はないといえそうです。
気になるときは「換気」が一番。快適なドライブを楽しむために
とはいえ、納車直後や真夏の炎天下など、どうしても匂いが気になるときはあるでしょう。子どもだけでなく、匂いに敏感な同乗者を乗せる際などは、車酔いと相まって強い吐き気や気分の悪さを引き起こしてしまうこともあるため、少しでも和らげてあげたいもの。
そうしたときの対策は非常にシンプルで、換気をすることが一番の解決策になります。日本自動車工業会の資料によれば、窓を開けたりエアコンを外気導入モードにしたりして車内の空気を入れ替えることで、揮発成分(VOC)の濃度を大幅に低減できるとされています。
乗車前に少しだけ窓とドアを開けて熱気とともに空気を逃がしてあげたり、走り出しの数分間だけ窓を開けて走行したりするだけでも、ずいぶんと快適に感じられるはずです。
子どもからの率直なひと言をきっかけに調べてみましたが、私たちが普段何気なく感じていた匂いには、これほど多くの部品と科学的な理由が隠されていました。ただの匂いと思っていたものも、新しいクルマを形作るたくさんの部品が織りなす新品の証だと知ると、少しだけ違った見方ができるかもしれません。
次回のお出かけでは、上手に換気を取り入れながら、同乗する皆さんが笑顔で過ごせるドライブを楽しんでみてはいかがでしょうか。
