マイクロソフト、「Microsoft 365」のストレージ容量を縮小へ--一部は「実質値上げ」
食料品などで価格が据え置かれたまま中身の容量が減る「実質値上げ」の現象を目にしたことがある人は多いだろう。「Microsoft 365」のサブスクリプション利用者も、クラウドにおける「実質値上げ」を体験することになりそうだ。
Microsoftは米国時間10月8日、「Microsoft 365 Personal」「Microsoft 365 Family」「Microsoft 365 Premium」「Microsoft 365 Pro」の各サブスクリプションに変更を加えると発表した。同社は今回の変更について、加入者に「AIとクラウドストレージの特典をより柔軟に活用できるため」と位置付けている。それは事実かもしれないが、これらのサブスクリプションの特典をフルに活用しているユーザーにとって、実質的な影響は大幅な値上げとなる可能性がある。
今後数カ月以内に順次適用される予定のこの変更は、AIの共有利用とクラウドストレージの特典に影響を及ぼす。
ストレージとAIの新しい制限
この「実質値上げ」で最も大きな打撃を受けるのは、これらのプラン全体で提供されている共有「OneDrive」ストレージだ。現状でMicrosoft 365 Family、Premium、Proの各プランを契約している場合、利用枠1人当たり1TBのOneDriveストレージが固定で割り当てられている。これらプランを利用していて、利用可能な5つの共有スロットを全て使い切っている場合、家族全体で合計6TBのストレージを利用できる。
変更が適用された場合、サブスクリプション全体で共有されるストレージプールが1つ提供される形になる。家族それぞれの個別の使用環境やファイルは非公開のままだが、それぞれのストレージ使用量が共有プールから差し引かれる。そして、その減少幅は著しい。6人の共有アカウント所有者に対して均等に分割されていた合計6TBのストレージに代わり、Microsoft 365 FamilyおよびPremiumプランでは、合計でわずか2TBの共有ストレージしか提供されなくなる。
9月にひっそりと発表されたMicrosoft 365 Proの新プランでは、5TBの共有ストレージと利用可能な最高レベルのAI利用上限が与えられるものの、同プランには月額100ドルという高額な料金が設定されている。
全アカウントの合計で2TBを超えるストレージを使用しており、使用量を減らす意思がない、あるいは減らすことができないMicrosoft 365 FamilyおよびPremiumの加入者にとって、この「実質値上げ」はそのまま金銭的な負担増につながる。Microsoft 365 Familyプランの基本料金は年額130ドル(月額10ドル強)だ。OneDriveストレージを1TB追加するごとに、月額10ドルのサブスクリプション費用が加算される。そのため、家族で現在割り当てられているストレージ容量の半分程度しか使っていなかったとしても、請求額が2倍や3倍に跳ね上がる可能性がある。
AI特典に関する変更の影響は、それほど大きくはない見込みだ。現在Copilotの利用クレジットはサブスクリプション所有者のみに与えられており、家族間で共有することはできない。変更適用後は、家族でAI利用クレジットを共有できるようになり、所有者は未成年の家族に対するAIアクセス制限を管理できるようになる。
さらに、これらのプランでは家族全員で共有可能な単一のAI利用制限枠へと切り替わる。PremiumおよびProの加入者には、追加のAI利用クレジットを購入するオプションも用意される。
Microsoftの広報担当者によると、新規契約およびアップグレードされたサブスクリプションには、2026年10月8日から共有ストレージが適用されているという。既存のサブスクリプション契約者は、2027年5月2日以降の最初の更新時に共有ストレージへ移行し、事前に通知が行われる予定だ。
Microsoftはなぜするのか?
Microsoftがこのような変更を行う最大の理由は、Familyサブスクリプションに含まれる6TBのストレージを悪用して、1人で大量の個人データを保存しているユーザーを規制するためとみられる。例えば、無料のMicrosoftアカウントをもう1つ作成し、そのアカウントに共有スロットを1つ割り当て、その分のOneDriveストレージをデータで埋め尽くすという手法だ。共有機能を使えば、そのサブアカウントのストレージをメインアカウントから利用できるようにすることすら可能だった。
MicrosoftがOneDrive加入者のクラウドストレージ割り当てを大幅に削減したのは、これが初めてではない。2014年に同社は、「Office 365」加入者に「容量無制限」のOneDriveストレージを提供したが、1年後に同社はその約束を撤回した。当時の筆者の記事でも以下のように指摘している。
「Microsoftは方針転換の原因として、ストレージを過剰に利用する一部のユーザーにあるとした。『少数のユーザー』が『多数のPCをバックアップし、映画のコレクションやテレビ番組の録画データを丸ごと保存していた。場合によっては1人当たり75TBを超え、これは平均的な使用量の1万4000倍に達していた』という」
共有ストレージおよびAI利用枠への移行により、Microsoftのプランは主要な競合他社と同等の水準にそろうことになる。例えば、「Google One」は、6人で共有できる2TBのストレージとAIクレジットを年額100ドルで提供しており、5TBのプランは年額200ドルで追加のAIクレジットが含まれる。Appleも「iCloud+」プランや、「Apple TV」「Apple Music」などをセットにした「Apple One」を通じて共有ストレージを提供している。
Microsoft 365の加入者の大多数にとって、今回の変更は大きな影響を与えないだろう。Familyプランの利用割合が2TBの割り当て枠内に収まっているケースが多いと考えられるからだ。しかし、今回の新たな上限を超えるストレージを使用しているユーザーも少なからず存在するはずだ。そのグループには、これらのプランに含まれる1人当たり1TBという手厚い容量の恩恵を受けるよう長年にわたり勧められてきた、Microsoftの最も忠実な顧客層が多く含まれている。そうしたユーザーからは、極めて強い反発の声が上がることが予想される。
