メモリやSSDが高すぎてPC買えない問題 IntelのラナーデCTOはどう考えている?
既報の通り、インテルは10月7日に東京都内で「設立50周年記念レセプション」を開催した。
このレセプションには、リップブー・タンCEOをはじめとするIntel(インテルの親会社)の複数の重役が参加した。その1人が、プシュカー・ラナーデ氏だ。ラナーデ氏は、CTO(最高技術責任者)としてIntelの技術戦略と特別技術プロジェクトを統括し、タンCEOの補佐役(COS)も務めている。
そんなラナーデCTOが、レセプションに先立って日本の報道関係者とのラウンドテーブル(小規模な取材会)を開催した。ラウンドテーブルでは、量子コンピューティングやファウンドリー(半導体の受託生産)事業に関する質問が相次いだのだが、筆者はコンシューマー向けWebメディアの編集記者として、どうしても“別のこと”を聞きたかった。
メモリ/SSDの価格高騰につられて値上げ傾向にあるPC
データセンターにおけるクラウドAIの処理が増えている関係で、サーバ向けのメモリやストレージ(特にSSD)の需要が高まっている。そのあおりを受けて、一般的なPCやスマートフォン向けのメモリやストレージの部材は値上げ傾向が続いており、最終製品であるPC/スマホ本体の価格高騰を招いているのは周知の事実だ。
そのことを受けて、値段が比較的こなれている旧規格のメモリを使ったり、メモリの搭載容量を減らしたり、旧世代(あるいはグレードのレンジを下げた)CPU/SoCを使ったり……といった形で本体価格をどうにかして抑えようという動きも見られる。
メモリとストレージの値上げは、PCやスマホの価格高騰につながり、最終的には買い換えやアップグレードの需要を減退させうる。Intelなどの半導体企業が最新技術を採用したプロセッサ(CPU/SoC)をどれだけ投入したとしても、それを搭載するPC/スマホが高すぎて買えないとなると、元も子もないように思える。
プロセッサメーカーとしてのIntelは、この事態をどう考える?
昨今はLLM(大規模言語モデル)ベースのAIが花盛りであるが、クラウド処理をする際にトークン(一定のデータ)単位で課金するサービスが多い。また、クラウド処理をする際は機密情報や個人情報の漏えいリスクも考える必要がある。
その観点から、AIのローカル利用へのニーズが高まっている……のだが、先述の通りPCやスマホの価格が高騰してしまっているため、「誰でも気軽にローカルAIが使える」という状況からは程遠いように思えてしまう。
そこで筆者は、Intelとしてすぐに収まりそうにないPC価格の高騰に“技術面”で何か取り組んでいるのか聞いてみることにした。
筆者 私はコンシューマー向けメディアの人間なので、その立場から質問をさせていただこうと思います。最近はデータセンターを中心に「たくさんのメモリとハイエンドな半導体を使って(AIを処理しよう)」という動きがある一方で、クライアント機器ではあえて旧世代の機器や技術を使って価格を抑えようという動きも見受けられます。
私個人的としては、この動きによってコンシューマーに新しい技術が伝わりづらくなってしまうのではないか問題意識を持っています。メモリやSSDが高すぎて、私も新しいPCを買うのをためらってしまっているくらいなので……。
このような状況下において、Intelとしてコンシューマーに対して、より手頃な価格で最新のテクノロジーを届けるための取り組みは考えていたりするのでしょうか。
ラナーデCTO 非常に良い質問です。
先般話している通り、今後のコンピューティングシステムにおいて、メモリはますます重要なコンポーネントになります。しかし、あなたが指摘する通り、昨今のPCやスマホのBOM(Bill of Material:部品原価)を見てみると、場合によってはCPUよりもメモリの方が高コストになることもあります。
以前なら、800ドルクラスのPCを一定水準のBOMで作れていましたが、今はメモリの価格が6~7倍に跳ね上がっていて、結果としてPCが手に入れにくい高価なものになってしまっています。このことは事実です。私たちは(半導体やPC)業界全体として、この問題の解決策に取り組む必要があります。
解決策ですが、異なる2つの領域からもたらされると考えています。
1つはメモリ業界における生産能力の拡大です。現在、メモリ業界は非常に速いペースでキャパシティの向上に取り組んでいます。そのため、時間の経過によって供給不足は改善していくと考えています。
そしてもう1つ、技術者としての私にとって最も興味深いのが「アーキテクチャ」の観点です。例えば「より少ない容量で済む、より効率的にメモリを使えるシステム」を設計できないかなと。
現在のPCにおけるメモリの利用効率を見てみると、これは非常に興味深いパラメーターだと考えます。ほとんどのシステムは、(メモリの利用という観点で)あまり効率的な設計といえません。
私は、現在のメモリ不足と価格高騰がエンジニアたちがメモリをより効率的に活用するためのアイデアを生み出すきっかけになると考えていて、今後そうした動きがますます増えていくと思っています。
よりよいアルゴリズム、よりよいアーキテクチャ、よりよいCPU、そしてよりよいハードウェア(PC)を作るにはどうしたらいいのかと、知恵を働かせる――これは、ある意味でいいことだと考えます。
これからの時代、メモリ利用効率を高めた新しいアイデアや、新しいアーキテクチャが登場してくるでしょう。
ラナーデCTOは、このメモリ不足の状況が動作面でより効率的なPCやアプリの誕生につながると考えているようだ。ある意味で「ピンチはチャンス」といったところだろうか。
くしくも、Microsoftは8月にWindows 11の“品質改善”に向けた進捗(しんちょく)を発表しており、より少ないメモリ容量のシステムへの最適化を進めることを表明している。これに呼応してか、メモリをあえて標準8GBとするPCも散見されるようになってきた。
メモリやストレージをガンガン駆使するデータセンターと、より少ないメモリやストレージで効率的な処理を追求するクライアントデバイス(PC)――ある種の“二極化”が、これからしばらくのコンピューティングトレンドになるのかもしれない。
