「ドドパガキ」も増殖中!? 「ショート動画の再生が止められない」人たちに出た“中毒症状”とは
「ドパガキ」という言葉が世間で注目を集めている。SNSやショート動画などから、短時間で大量の情報を消費するようになった若者を「ドーパミン中毒のガキ」と揶揄する言葉を縮めたネットスラングだ。
すごい…1日どんだけスマホを触ってるの? 20代「ドドパガキ」女性のアプリ別使用料
脳内にドーパミンが分泌される快感に味をしめ、暇さえあればスマホで縦型動画を次々とスワイプし、新たな刺激を得ようとする。こうした習慣が続くことで、集中力の低下や学習への影響がみられるという。「一つのことを長く続けられない」「すぐに飽きて別のことを始めてしまう」といった行動につながるという指摘もある。
「ドパガキ」と呼ばれる人には共通した習慣がある。暇ができれば、反射的にスマホを手に取り、SNSや動画サイトを開くことだ。病的にスマホを使用している彼らに、日常生活とどのような変化が起きているのかを聞いた。
20歳女性の専門学校生Aさんは自身を「スマホ中毒のドドパガキ(“ド級”のドパガキ、という意味らしい)」だという。その驚愕の1日を語る。
「暇なときは友達とかと通話して、その最中もショート動画やTikTokを見ています。昨日は、やることが何もなかったので本当にそれ以外に何もしていませんでした。アプリの利用時間を見てみたら7時間。そんなにYouTubeやTikTokを見ているのって結構ヤバいですね。ひどいときは15時間くらいドパってます」
この生活に危機感はあるが、それでも動画再生を止めることはできないという。
「これだけたくさん見ていると新鮮味がなくなって、どの動画も同じに見えて飽きるんですけど、それでも何か新しいものはないかって探してしまうんです。5〜10秒再生して、目新しいものがなかったらすぐに次の動画に飛んでというのを繰り返しているだけで、気が付くと時間が消えています。ゲームをして1時間後には、また動画を探して……。何かをしていないことに違和感があって落ち着けないんです」(Aさん)
ショートコンテンツに時間を奪われているのは学生だけではない。会社員の男性Bさん(28)は「今までできたことをするモチベが下がった」と自身の中毒症状を明かす。
「昔は家に帰ってご飯を食べながらアニメを見ていたんですけど、最近はスマホ片手にショート動画を流し続けています。アニメやドラマの30分が結構きつい。セリフの“間”や動きの少ない場面が退屈に感じて、つい再生を止めてスマホでショート動画を流してしまう。マジでヤバいなと思ったのは、会社での会議中にパワーポイントで作られた資料を眺めているときに、体が無意識にそわそわと落ち着かなくなったことですね」
ショート動画を見続けることによる脳への影響について、菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁氏に聞いた。「結論から言えば、脳への影響は『あり得る』と考えるのが妥当。注意力や睡眠、生活習慣など、日々の暮らしに影響する可能性があります。ただし、ショート動画を見ることで脳に取り返しのつかない損傷が生じる、という意味ではありません」という。
「脳には予想より良いことが起きたとき、その経験を学習して『もう一度やってみよう』と行動を促す仕組みがあります。そこに深く関わる脳内物質がドーパミンです。ショート動画は、次に何が流れてくるか分からないまま指を滑らせるため、『次は面白いかもしれない』という不確実性が、視聴を繰り返す一因になります。数秒おきに小さなくじを引き続けているような状態です。
臨床で『集中できない』という人の話を聞くと、動画そのものより、寝る直前までスマホを見続けて睡眠時間が削られているケースも少なくありません。睡眠不足になると、注意力や判断、自制に関わる前頭前野の働きが低下します。つまり、『動画で脳が壊れる』というより、睡眠不足によって脳の働きが落ちていると考えたほうが実態に近い場合があります」(菅原氏、以下同)
この「報酬を求める行動が強く学習された状態」は子供や若者だけの問題ではない。疲労や睡眠不足、ストレスなどが重なることで、年齢を問わず誰もが陥る可能性がある状態だという。
「ショート動画やSNSを『見続けてしまう』という状態は、大人にも起こり得ます。脳の働きを車にたとえるなら、報酬や刺激を求める『アクセル』に対し、衝動を抑える前頭前野は『ブレーキ』です。若者はこのブレーキが発達途中にあるため、短く刺激的なコンテンツに引き込まれやすい。これは単純に意志の弱さだけで説明できるものではありません。
大人の場合はブレーキが成熟していても、疲労や睡眠不足、ストレスによって制御する力が低下している場合があります。実際の臨床現場でも、深夜までスマホを見続けてしまうという相談は、大人でもあると聞きます。若者は『発達途中のブレーキ』、大人は『疲れて働きにくくなったブレーキ』という違いはあるものの、ショート動画やSNSの見過ぎは、年代を問わず起こり得る問題となっています。『ガキ』という言葉で本人の人格や自制心の問題にしてしまうのは、医学的にも適切ではないでしょう」
短時間で強い刺激を与え、次々と新しい情報を提供するショートコンテンツは無視できない存在になっている。この問題は決して子供だけではない。大人もまた、SNSやショート動画を無意識に見続けるうちに、「ドパガキ」化する可能性があるのだ。
