EV用バッテリーは「一つの正解」から「車種ごとの化学系使い分け」へ――GMがLMR角形セルを米国量産

EV用バッテリーは「一つの正解」から「車種ごとの化学系使い分け」へ――GMがLMR角形セルを米国量産

General MotorsとLG Energy SolutionのJVであるUltium Cellsが、テネシー州Spring Hill工場を改修し、リチウム・マンガン・リッチ(LMR)の角形セルを生産する計画を発表した。

この工場は世界で初めて角型リチウムマンガンリッチ(LMR)電池セルを量産する工場となる見込み。いよいよLMRが「研究中の新しい化学系」から「米国で量産する製造技術」へ移ることとなる。現在主流となっている低価格電池であるリン酸鉄リチウム(LFP)よりもエネルギー密度を33%高く、コストも同程度を狙う。

「スプリングヒルにあるUltium CellsでLMR角型セルの生産体制を確立することは、GMが顧客ニーズに最適なバッテリー技術を提供し、国内バッテリー製造とイノベーションにおけるリーダーシップを強化するという戦略において重要な一歩です。高ニッケルバッテリーは引き続き当社の製品ポートフォリオの中で最高の航続距離を顧客に提供するとともに、LMRの導入により、現在より安価な化学組成を凌駕し、より優れた性能で低コストを実現することが可能になります。この柔軟性により、効率的な規模拡大、より多くの顧客へのリーチ、そしてGMの長期的なEV戦略と収益性向上への取り組みを支えることができます」——GMバッテリー・サステナビリティ担当副社長、カート・ケルティ氏

GMはここ10年間、LMRの開発に取り組んできたが、実用化を阻む要因があった。LMRはセル寿命の短さや電圧降下といった問題があり、魅力的ではあるものの実用的ではないとされていたのだ。GMを主体とする開発チームはこれの解決のため、独自のドーパントやコーティング、粒子設計、プロセス革新などにより、セル内部のエネルギー密度と電池材料の配置を適切に調整し、安定性を確保した。結果、現行世代の高ニッケル系セル(NMC)と同等の寿命を実現し、性能は同等ながらコストは大幅に削減することに成功している。

なお、一般的なNMCセルの化学組成は[ニッケル約85%/マンガン約10%/コバルト約5%]。LMRセルの組成は大きく異なり[ニッケル約35%/マンガン約65%]となり、コバルトはほとんど含まれていない。マンガンはニッケルやコバルトよりも安価で豊富に入手できることから、セルの材料をはるかに安価に抑えることができる。

また、この化学組成はセルサイズの大型化にも適していて、バッテリーパック内の接続部品や構造部品が少なくなるることからシステムコストのさらなる削減も期待できる。GMによればNMCパウチ型セルに対して、LMR角形セルによって、バッテリーモジュール部品を75%、パック全体の部品を50%削減できるという。

GMは今後も高ニッケル系を高航続距離向けに使いながら、LMR、LFPなどを組み合わせて車両ごとにセルの化学系・形状を使い分ける方向を明確にしている。Ultium Cells側も、複数の化学系・フォームファクターを同一製造基盤で扱う柔軟性を強調している。

工事は2026年後半開始、2028年完了予定。約10億ドルを投資し、約500人の雇用増も見込む。

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