アップル、「Siri AI」ベータ版を提供開始──1日の利用上限と有料プラン導入へ

アップル、「Siri AI」ベータ版を提供開始──1日の利用上限と有料プラン導入へ

アップルは新しいSiri「Siri AI」の英語版ベータ提供を始めた。Siri AIなど、サーバサイドモデルに依存する一部のApple Intelligence機能では、1日に使える回数が制限される。無料で使える回数を超えて利用するには、将来は料金を支払う必要がある。利用回数の多いユーザーから料金を得られるようになれば、Siri AIは粗利益率の高いサービス部門に新たな収益をもたらす可能性がある。

■Siri AIなどは1日の使用回数を制限、上限を超えて使うには将来料金が必要

Siriは2011年以来、すべてのiPhoneに追加料金なしで搭載されてきた。再構築されたSiri AIの提供も始まったが、アップルは1日に使える回数を制限する。無料で利用できる回数を超えて使う場合は、将来料金が必要になる。

アップルは米国時間2026年9月14日、英語版ベータとしてSiri AIの提供開始を発表した。利用者はiPhoneの「設定」から順番待ちリストに登録し、自分のiPhoneで新しいSiriが使えるようになるとアップルから通知を受ける。9月14日の発表では、使用回数の制限についても説明した。

「Siri AI、インテリジェントな写真編集ツール、Image Playground、ショートカットのAFM 3 Cloudモデルなど、サーバサイドモデルに依存する一部のApple Intelligenceの機能には、1日の使用回数の制限が適用されます」

アップルは、1日の制限を超えてさらに多く利用できる仕組みを将来有料で提供する方針だ。サポートによると、特定の機能で使用制限に達すると、一定時間が経過した後に再び使えるようになる。アップルは1日に何回まで使えるのか、制限を超えて利用する場合の料金はいくらかを公表していない。アップルのサポートページでは、こうした使用制限の導入自体も将来のこととして説明している。

iPhone 18は2026年9月14日から始まる週に店頭に並ぶ。アップルはなぜ新型iPhoneの発売週に、新しいSiriの使用回数を制限するのだろうか。

編注:Siri AIは、2026年10月から日本語版ベータの提供を開始する予定だ。具体的な開始日は公表されていない。

■Siri AIは端末とサーバーで処理を分担し、サーバー利用には継続費用がかかる

新しいSiriは利用者のメッセージ、メール、写真から情報を取り出し、アプリ内で操作し、ウェブ上の情報を使って質問に答えられる。処理場所は2つに分かれる。比較的軽い処理はiPhone内のチップが担い、処理負荷が高い要求はアップルが「プライベートクラウドコンピューティング」と呼ぶ仕組みを通じてサーバーへ送られる。

アップルのサポートページは、Siri AIをサーバー上のモデルに依存する機能として挙げている。1日当たりの制限は、機能、リクエストの複雑さ、システムへの負荷、システムポリシー、その他の要因によって異なる場合がある。アップルは、すべての利用者に質が高く安定した体験を提供するため、使用制限を設けるとしている。

一部のサーバーはグーグルのクラウドにある。アップルは2026年6月、最も高性能な自社AIモデル「AFM 3 Cloud Pro」がグーグルのクラウド上にあるエヌビディア製チップで動くと説明した。AFM 3 Cloud Proは、複雑な推論など特に負荷が高い処理を担うモデルだ。アップルが2026年9月9日に公表した注意事項では、自動化に使う「ショートカット」アプリからAFM 3 Cloud Proを利用する場合も、使用制限の対象に含まれている。

アップルにとって、iPhone内のチップにかかる費用は端末の製造時に1度発生する。新しいSiriを支えるサーバーでは、要求を処理するたびに費用が発生する。

■アップルはGeminiと同様、料金を払えばAIを多く使える仕組みを計画

アップルは、新しいAIモデルの構築でグーグルと協力し、Geminiモデルも利用したとしている。グーグルのGeminiアプリには、すでに利用制限がある。

グーグルのヘルプによると、利用枠は週間上限に達するまで5時間ごとにリセットされる。無料利用者には標準枠があり、Google AI Plusはその2倍、AI Proは4倍となる。AI Ultraでは、契約内容に応じてAI Proの4倍または20倍まで利用できる。料金の高いプランほど利用できる量が増える仕組みだ。

グーグルは、アプリの利用が急増した場合に利用制限を変更する可能性があるとしている。需要が高い時間帯には、無料利用者が一部機能を使えない場合もある。アップルも無料で利用できる回数に上限を設け、料金を払えば上限を超えて使える仕組みを計画している。利用制限を変更できる点もグーグルと共通する。

■Siri AIを上限以上に使う利用者から料金を得て、サービス部門の収益拡大を狙う

アップルはこれまでSiriそのものに料金を課しておらず、上限を超えてSiri AIを利用するための料金をどの形で販売するかも明らかにしていない。iCloudストレージやApple Musicなど、アップルのサブスクリプションはサービス部門に含まれる。

2026年6月期、業績資料によると、サービス部門の売上高は307億ドル(約4兆7585億円)と前年同期比12%増え、売上原価は75億ドル(約1兆1625億円)だった。売上原価を差し引くと、サービス売上高1ドルのうち約76セントが残る。ハードウェアでは約40セントだった。1ドルの売上が生む粗利益は、サービスがハードウェアのほぼ2倍だ。

2026年6月期にサービス部門はアップル全体の売上高の28%を占めたが、直接原価を差し引いた利益では42%を占めた。Siri AIを上限以上に利用するユーザーから料金を得られれば、売上1ドル当たりで最も多く利益を残す事業に新たな収益が加わることになる。

■半導体株がAI開発減速論で下落した日、アップルはAIの利用増加を有料化すると示す

アップルがSiri AIの提供を始めた2026年9月14日、フィラデルフィア半導体株指数は5.9%下落し、エヌビディア株も3.4%下げた。フィラデルフィア半導体株指数は大手半導体株で構成される。半導体株の売りは、AI企業のアンソロピックとOpenAIの経営トップがAI開発のペースを落とすよう呼び掛けた後に起きた。イーロン・マスクもAI開発を減速すべきだという主張を支持した。

投資家は、AI開発のペースが落ちれば必要な半導体も減るかのように半導体株を売った。アンソロピック最高経営責任者のダリオ・アモデイは自身の論考で、AI開発のペースを調整することは、モデル訓練や技術進歩を止めることではないとしている。

アップルの発表が示す方向は逆だ。1日の使用回数の上限を超えてSiri AIを使いたい利用者には料金がかかる。追加の要求は1回ごとに、誰かが構築し、運用費を負担しているサーバーで処理される。

投資家がAI開発減速論を受けて半導体株を売った2026年9月14日、アップルはiPhone利用者に、Siri AIを上限以上に使うには料金が必要になると伝えた。

■Siri AIの利用回数を増やす有料化計画は、アップルとエヌビディア株を保有する理由になる

アップルは1日に何回までSiri AIを使えるのか、上限を超えて利用する場合の料金はいくらかを公表していない。この2つの数字によって、より多くのことができるSiriに利用者がいくら払うとアップルが見込んでいるかが分かる。

iPhoneを理由にアップル株を保有することは、端末を売るだけでなく、iPhoneで使うAIを上限以上に利用するユーザーから料金を得る企業を保有することになる。

Siri AIの有料化計画を理由に、筆者はアップル株の保有を勧めている。エヌビディア株についても同様だ。アップルは最も負荷が高いAI処理にエヌビディア製チップを選んでいる。筆者は、2026年9月14日の半導体株売りについて、AI向け半導体の需要が変わらないままエヌビディア株を以前より安く買える機会だとみている。

AIを上限以上に利用するユーザーから料金を得ようとしている企業は、AIの利用量が減ることを前提にしているわけではない。

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