「タイヤがすぐ減る」「消耗品の劣化が早い」「道路を痛める」…ネットにはびこる“BEVの悪いウワサ”は本当なのか?
BEVのデメリットは「重さ」?
一般的に、BEVは同クラスのガソリン車やハイブリッド車と比べて車両重量が大きい傾向があります。
たとえば、ホンダ「N-BOX」の車両重量が910kg〜1030kgであるのに対し、ボディサイズがほとんど同じ軽BEVであるBYD「ラッコ」は1160kg〜1230kgと、成人男性3人分ほど重くなっています。
運動性能や燃費性能の向上など、クルマにとって軽量化は非常に多くのメリットがあります。
一方で、重さがさまざまなデメリットを生むこともあります。
実際、インターネット上では「BEVは重いからタイヤの減りが早い」「足回りへの負担が大きいことから故障しやすい」といったコメントがしばしば見られます。
果たして、これは事実なのでしょうか?
「重さがタイヤを摩耗させる」のは事実だが…
ある業界関係者は、BEVとタイヤの関係について次のように話します。
「車両重量が大きくなると、タイヤ1本あたりが支える荷重も増加します。
したがって、ガソリン車やハイブリッド車より車両重量が大きいBEVのほうが、タイヤに与える負荷が大きくなるのは事実です。
また、BEVは電気モーターの特性上、アクセルを踏み込んだ瞬間から最大トルクが発生するという特徴を持っています。
これは、発進直後から強い駆動力がタイヤに伝わるため、路面とタイヤの間に生じる摩擦が大きくなる、つまりはタイヤへの負荷がさらに大きくなるということでもあります。
このように、BEVはタイヤが減りやすい要素を数多く持っています。
実際、大手タイヤメーカーのミシュランは、BEVのタイヤは内燃機関車と比べて最大20%早く摩耗するという研究結果を発表しています。
一方、これはあくまで物理的な特性の話に過ぎません。
現在では、BEVの特性を十分に考慮した専用タイヤが登場しており、それらはゴムの配合を見直して摩耗しにくくしたり、内部構造を工夫することで重い車重を支えながらも変形を抑えたりと、さまざまな対策が施されています。
そのため、実際にBEVを使用するなかでは、ガソリン車やハイブリッド車と比べてタイヤの減りが明確に早いということはほとんどないと思います」
一部の消耗品は劣化が早い可能性も
では、タイヤ以外の部品についてはどうでしょうか。前出のある業界関係者は次のように話します。
「まず、BEVが重いからと言って、ガソリン車やハイブリッドよりも突発的な故障が多いということはありません。
現代のクルマはあらゆるシーンを想定して負荷をシミュレーションしたうえで、十分以上の許容量を持たせて設計されています。
当然のことながら、BEVに関してもその車両重量を前提とした設計がなされています。
一方、ゴムブッシュなど一部の消耗品については、使用環境によっては劣化しやすいように感じるケースもあるかもしれません。
ただ、BEVは回生ブレーキが強力であることから、ブレーキパッドやブレーキローターの寿命が比較的長いというメリットもあります。
また、BEVはそもそもエンジンを持たないため、オイル交換の必要もありません。
そのように考えると、必ずしもBEVのほうがメンテナンスコストが高いというわけではありません」
「BEVは道路に与えるダメージが大きい」は本当?
また、BEVに関しては「車両重量が大きいことから道路に与える負担が大きい」という指摘も見られます。
しかし、前出のある業界関係者はそれを一蹴します。
「道路に与える負担は、車軸にかかる重量の4乗に比例するという物理法則があります。
これに基づくと、N-BOXより車重がおよそ20%重いラッコは、N-BOXと比べて約2倍のダメージを道路に与えることになります。
ただ、現実の世界を見ると、道路が損傷する理由の大部分は大型トラックや大型バスによるものであり、乗用車が与える影響はほとんどないとされています。
実際、国土交通省は、わずか0.3%の過積載車両(大型トラックなど)が道路橋の劣化の約9割に影響していることを示しています。
つまり、道路の損傷を防ぐために問題視すべきはBEVではなく、過積載車両であるというわけです。
BEVが重いことは事実であり、その重さがデメリットにつながる場合もあります。
結局のところ、さまざまなデメリットがあったとしても、それを上回るメリットを提供できるかどうかが、優れた商品であるために重要なのだと思います」
