飲酒後の「締めのラーメン欲」の原因は? 脳の錯覚と真実【医師解説】
焼き肉や飲み会のあと、満腹のはずなのに不思議と食べたくなる「締めのラーメン」。
じつはこの欲求には血糖値や脳の働きなど、体の仕組みが深く関係しています。
なぜラーメンが食べたくなるのか、その理由を高石内科循環器クリニック院長の高石博史先生に聞きました。
締めのラーメンが食べたくなるのはなぜ? 血糖値の問題?
編集部:おなかはいっぱいのはずなのに、お酒を飲むとなぜか最後にラーメンが食べたくなるのはなぜですか?
高石先生:肝臓は本来、血糖値を一定に保つ働きをしていますが、飲酒時はアルコールの分解を優先するため、
血糖値の維持機能が一時的に低下します。
その結果、血糖値が下がりやすくなり、体は低血糖状態に陥ります。
そのため、脳はこのエネルギー不足を察知し、「すぐエネルギーになる炭水化物を摂れ」と強力な指令を出します。
このメカニズムが、飲んだあとにラーメンを欲してしまう正体です。
編集部:お酒を飲んでいる最中も血糖値は下がっているのですか?
高石先生:アルコール度数や種類にもよりますが、分解が進むほど血糖値を維持する機能が阻害されます。
とくに日本酒やビールなど糖質を含むお酒は、飲酒直後は血糖値が上昇しやすいのですが、
飲酒後はアルコールが抜けてくるときに血糖値が下がることがあります。
編集部:締めにスイーツが欲しくなるのも同じ理由でしょうか?
高石先生:はい、根本的な理由は同じ「糖分不足」です。
ただし、スイーツよりもラーメンが選ばれやすいのは、糖質だけでなく「塩分」への欲求も重なるからです。
ナトリウムやカリウム補給という側面も
編集部:塩分を欲するのは、どのようなメカニズムが関係しているのでしょうか?
高石先生:アルコールには強い利尿作用があるため、お酒を飲むと体内の水分と共に、
ナトリウム(塩分)やカリウムといった電解質が大量に排出されます。
とくにビールなどは飲んだ量以上の水分を排出させることもあり、体は一種の「脱水傾向」と「ミネラル不足」の状態に陥ります。
そのため、失われた塩分を補おうとする生体反応が起こり、濃いスープのラーメンが欲しくなるのです。
編集部:お酒と一緒に水をたくさん飲めば、塩分への欲求は収まりますか?
高石先生:水分補給は非常に大切ですが、水だけでは排出されたナトリウムを補えません。
例えばたくさん汗をかいたあとにも、少ししょっぱいものが欲しくなると思います。
これは、汗と一緒に体内のナトリウムやカリウムも排出されてしまったからです。
それと同じことが、お酒を飲んだ後の体内でも起きているのです。
編集部:そのほかにも、飲んだあとにラーメンが欲しくなる理由はありますか?
高石先生:「お酒を飲んだあとには締めのラーメン」という習慣が脳にインプットされているという側面もあるかもしれません。
また、アルコールを飲むと胃の粘膜が刺激され、消化液の分泌が活発になります。
その影響で、実際には十分に食べていても「まだ食べられそう」と感じやすくなります。
また、お酒の影響で気分が高揚していることも関係しているかもしれません。
編集部:錯覚や習慣という側面もあるのですね。
高石先生:はい、とくに脂質を多く含むこってりしたラーメンは一時的に空腹感を和らげ、
満足感を得やすいため、食べると落ち着いた感覚を覚えることがあります。
その安心感が繰り返しの欲求につながり、「締めのラーメン」が習慣化しやすくなるのです。
ラーメンが食べたくなったらどうするか? 健康的な代替案は?
編集部:どうしてもラーメンが食べたくなったときの対処法や、代わりになるものはありますか?
高石先生:まずは、ラーメンを食べたくなったらコップ一杯の水を飲んで一息つきましょう。
それでも落ち着かない場合は、温かい汁物を代用しましょう。
おすすめは具だくさんのみそ汁です。
これらでミネラルを補給しつつ、噛み応えのある具材を選べば満足感も得られます。
根菜類などを入れれば糖質も摂取することができます。
編集部:ほかには、代替となるものはありますか?
高石先生:ラーメンのような高カロリーのものではなく、できるだけ軽くて消化のよいものを選ぶことがおすすめです。
例えば、お茶漬けやだし茶漬けのように、脂質が少なく比較的カロリーの低いものであれば、体への負担を抑えやすくなります。
編集部:お酒を飲んでいる間にできる対策はありますか?
高石先生:お酒のおつまみとして、かつお節をたくさんかけた冷ややっこや、あさりの酒蒸し、豚肉料理など、
ビタミンB群の多い食材を選ぶとよいでしょう。
ビタミンB群はアルコールの分解を助ける作用があるとされています。
それから、しじみのみそ汁がおすすめです。
しじみは、オルニチンなど肝機能をサポートする成分も含んでいて、
アルコールによる体への負担を和らげる効果が期待できる食材として知られています。
編集部:最後に読者へのメッセージをお願いします。
高石先生:お酒を多く飲む習慣は、血圧の上昇や肝臓への負担など、さまざまな生活習慣病のリスクにつながります。
そこに塩分や糖質の多い食事が加わると、摂取カロリーも増え、健康への影響はさらに大きくなります。
例えばラーメンには6~10g程度の塩分が含まれることもあり、
そうなるとわずか1杯で1日の推奨摂取量に近い量を取ってしまうことになります。
お酒を楽しむ際は、「飲む量」や「食べる量」だけでなく、食事の内容にも少し意識を向けてみましょう。
編集部まとめ
お酒の席ではつい食事量や塩分量が増えがちですが、積み重なると生活習慣病のリスクにもつながります。
お酒を楽しみながら健康を守るためにも、食べる内容やバランスに気を配る習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。
