「またWindowsのせいか…」実はその不具合、原因はDellとHPでした
濡れ衣だけど、こりゃわかんないわ。
ここ最近、Windows 11のパソコンが青い画面(ブルースクリーン)を繰り返したり、起動するたびに「回復キー」を求められたりする報告が相次いでいました。
SNSや海外フォーラムでは「またWindows Updateのせいか」という声も多いのですが、実はこの不具合、Microsoft側の更新プログラムが直接の原因ではありませんでした。
本当の原因は、DellとHPという2大パソコンメーカーがそれぞれ独自に配信した、バックグラウンドソフトとファームウェアの不具合だったのです。
アメリカのテックメディア「Notebookcheck」をはじめ、さまざまなメディアが今回の一幕を報じています。「いつも悪者にされるOS」と「縁の下で暴れていたメーカー製ツール」という構図を見つつ、後学のためにも振り返っておきましょう。
Dellの暴れん坊:「お助けツール」がパソコンを落とす
まずはDellのケースから。Dell製パソコンの不調の主な原因は、あらかじめインストールされている「Dell SupportAssist Remediation」という回復支援ツールの自動アップデートの失敗にありました。
このSupportAssist Remediationは、本来「パソコンの調子が悪いときに自動で直してくれる」ためのツールです。たとえるなら、家に常駐してくれている修理スタッフのようなもの。ところが今回は、その修理スタッフ自身がすっ転んでパソコンを壊してしまった、みたいなことです。
具体的には、SupportAssist Remediationのバージョン5.5.16.0が、深刻なカーネルエラーを引き起こし、即座にブルースクリーンを発生。XPS、Alienware、Latitudeといった主要シリーズの端末が、「CRITICAL_PROCESS_DIED」と呼ばれる重大プロセス停止のエラーコードに30分おきに見舞われ、クラッシュと再起動を延々と繰り返すループに陥っていました。
このアップデート自体は2026年4月30日にリリースされたもので、ユーザーからの報告は5月に入って急増。厄介なのは、このツールが目に見えないところで動いている点です。
ツールが特権を持つシステムコンポーネントとして見えない場所で動作しているため、一般ユーザーはDellの回復支援ツールが不調の元凶だとは気づきにくい。「またWindowsが…」とと再インストールを繰り返した人もいることでしょう…。
Dellはこの不具合を認め、緊急の修正版であるバージョン5.5.16.1で対応。Dellの公式サポート文書でも、SupportAssist Remediationを5.5.16.1以降に更新することで問題が解消するとされており、手動で確認・更新するためのステップを案内しています。
なお、Dellは「SupportAssist本体ごとアンインストールしないように」と呼びかけています。回復機能そのものを失ってしまうおそれがあるためです。
HPの暴れん坊:ファームウェア更新が基準値を書き換えた
一方のHPは、もう少し根が深いタイプのトラブルでした…。
HP製のEliteBook、ProBook、ZBookといった法人向けシリーズに配信された一連のBIOSアップデートが、ローカルのTPM(セキュリティチップ)との通信に不具合を起こしてしまったのです。
TPMというのは、パソコンのマザーボード内に組み込まれた「金庫の鍵を管理する小さな番人」のようなチップです。Windowsの暗号化機能「BitLocker」は、起動のたびにこの番人に「パソコンの状態は変わっていませんか?」と確認し、変わっていなければ鍵(暗号化キー)を渡してロックを解除します。
今回のHPのBIOS更新は、この番人が記録している「パソコンの状態」の基準値をうっかり書き換えてしまいました。すると番人は「前回と様子が違う、誰かが手を加えたのでは?」と疑い、鍵を渡すのを拒否します。
これが原因となり、対象機種はMicrosoftが導入を進めていた2023年版Secure Boot証明書の処理に失敗するたびに、回復ループへと陥ってしまいました。さらに厄介なのはこのループ、一度ハマると正規の回復キーを入力しても抜け出せない。こちらもHPの公式サポート文章でも同様に報告されています。
なぜ今、こんな問題が立て続けに起きたのか
ここで大事なのが「タイミング」です。この騒動の発端は、Microsoftの2023年版Secure Boot証明書への移行という、より大きな出来事と重なっています。
ざっくり言うと、Windowsパソコンの起動を「これは本物の正規ソフトです」と保証している電子証明書が、2011年に発行されたものをベースにしていて、2026年6月からいよいよ期限切れを迎え始めます。これは特別なトラブルではなく、Microsoftが何年も前から予告していた、いわば「免許更新」のようなものです。
ただし、この証明書の切り替えはパソコンの最も深い部分(マザーボードのファームウェア)を直接いじる、非常にデリケートな作業です。DellやHPのような大手メーカーであっても、無数にある機種・世代・構成すべてで完璧に動作確認をするのは簡単ではありません。
今回の一連のトラブルは、「縁の下のソフトが壊れると、普通のアプリのようには壊れず、まるでインフラそのものが壊れたかのような被害が出る」ということを、図らずも証明してしまった形になりました。
Microsoftは6月9日の「Patch Tuesday」で配信したアップデート(KB5094126)によって、証明書更新の対象を広げました。つまり、何もしなくても裏側で証明書の入れ替えが進んでいる端末が増えた、ということです。
ちなみに今回問題になった2011年の証明書、仮に期限が切れても「ある日突然パソコンが起動しなくなる」わけではありません。Microsoftの説明によれば、起動はできてWindows Updateも普通に受け取れる一方で、起動時のセキュリティ保護機能のアップデートだけが届かなくなる、いわば「セキュリティのワクチン接種だけが止まる」状態になります。
じわじわ脆弱になっていくタイプのリスクなので、急かされている感覚がなくても油断はできません。
「とりあえずWindowsのせい」ではない
今回のトラブルはメーカーや機種、ファームウェアの状態によって状況が異なるため、確定的な対処法を記すことが難しいのですが、まずは以下のメーカー公式情報を確認してみてください。
DellやAlienwareをお使いの方は、Dell公式サポート文書に、SupportAssist Remediationのバージョン確認方法と更新手順が掲載されています。
HPで症状が出ている場合は、HP公式のサポート文章を確認。法人利用の場合は社内のIT管理部門に最新の対応状況を問い合わせてみましょう。
派手な事件ではないかもしれませんが、「パソコンが固まった=とりあえずWindowsのせい」と決めつけてしまう前に、メーカー純正のお助けソフトを一度疑ってみる。それくらいの心構えがあると、次に似たようなトラブルに遭遇したときの焦りは、もっと小さく済むはずです。
