ホンダF1、上昇に向け”要改善点”は理解? 折原エンジニア「燃焼改善のためのアイデアはある。方向性は来季規則が変わっても同じ」

ホンダF1、上昇に向け”要改善点”は理解? 折原エンジニア「燃焼改善のためのアイデアはある。方向性は来季規則が変わっても同じ」

ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャーである折原伸太郎チーフエンジニアは、今後に向けてパフォーマンスを改善できる部分をある程度特定できたとカナダGP終了後に語った。このパフォーマンス向上へ見出した部分は、レギュレーションが小変更され、エンジンと電動モーターの出力比が変更されても変わらないという。

 今季からタッグを組んだアストンマーティンとホンダは開幕から大いに苦戦を強いられている。最初に悩まされたのは、パワーユニット(PU)の振動が車体に伝わって引き起こされてしまう異常振動。これによりバッテリーにダメージが及んだり、ドライバーの身体に影響が生じるなど、深刻な問題となった。

 この異常振動については解決に向かっているものの、その他にも様々な問題が表面化しており、まだまだ上位を狙える状況にあるとは言えない。しかしそんな中、先日行なわれたカナダGPの際には、特にフェルナンド・アロンソのドライブによってスプリント予選でSQ2に進出するなど、明るい兆しも見せつつある。

 とはいえ、PUもシャシーも、ドライバーが満足できるだけのパフォーマンスを発揮できていないのもまた事実。カナダGPの時点で、全メーカー中最も高いパフォーマンスを発揮したPUから大きく遅れていたメーカーには、PUの追加開発機会、いわゆるADUOが適応され、追加の開発時間と開発予算をかけることが認められる予定であり、ホンダはその対象になる可能性が高いと言われている。

 カナダGPの決勝レース終了後、ホンダF1の折原チーフエンジニアは今後の開発方針について、「燃焼スピードの向上」であると語った。

「何を改善しなければいけないか、理解しています。例えば、燃焼の部分です」

 折原エンジニアはそう語る。

「燃焼を改善するためにどうすればいいか、分かっているつもりです。そのためのアイデアもあります。テストベンチでのデータでは、ポジティブな兆候もあります。また、摩擦に関しても改善する必要があります。そのためのリストもあります。それらについて、作業を進めています。開発を加速させる段階だと思います」

■圧縮比の変更で、高速燃焼が難しくなった?

 2026年シーズンから導入されたPUは、エンジンと電動モーターの出力が変わり、使う燃料が持続可能燃料になったとはいえ、エンジン部分は昨年までと同じ1600ccのV6ターボエンジンである。

 ただその中でも大きく変わったのは圧縮比。2025年まではエンジンの圧縮比上限が1:18だったのに対し、今季からは1:16となった。このことで、昨年まで実現できていた高速燃焼が難しくなっているのは間違いない。

 ホンダF1のプロジェクトリーダーである角田哲史氏は2023年の段階で、motorsport.comの取材に対してこんなことを語っていた。

「我々はこれまで、高速燃焼によってICE(内燃エンジン)の力を出すと言ってきましたが、高速燃焼は圧縮比が高いことで(燃料が)より自着火しやすい環境を作っています」

「ただ(レギュレーション改定により)圧縮比が下がったり燃料流量が少なくなると、それが出しにくい状況になりますので、すぐに従来と同じように燃焼させることはできません。これは我々にとってひとつの大きなチャレンジとなります」

「物理的にそれが弱体化することは避けられないので、色々な燃焼形態をトライしている最中です」

 折原エンジニアの言葉を借りれば、この部分でさらに良いアイデアが見つかっているということなのかもしれない。そしてこの方向性は、今噂にあがっているように、来季からエンジンと電動モーターの出力比が6:4に変わっても同じだと、折原エンジニアは言う。

「パフォーマンスの面では、方向性は変わりません。6:4でも、5:5でも、燃焼速度を向上させる必要があるんです」

「(エンジンの出力を引き上げるために)来年から燃料流量を増やすのであれば、追加のチューニングを行なうだけです。方向性は同じです。もちろん摩擦を減らすことも必要ですが、これは出力比とは関係ありません」

「パフォーマンスの面では、同じなんです。今年中に懸命に努力を続けること、それが来季以降のエンジン開発にも繋がります」

「ただ信頼性という部分では、燃料流量が増えると、かなり難しくなる可能性があります。これは、今回のレギュレーション変更による大きな課題のひとつです」

■ギヤボックスの改善も必須

 ドライバーたちは、当然もっと改善することを求めている。しかしデータ上では良好な結果も出始めているようだ。

「モントリオールでは、いくつかのパラメータとチューニングを更新し、データ上で良好な結果が得られました」

「ドライバーからは改善を求める声が多く寄せられていますが、データ上では良い結果が出ていて、我々の方向性が正しいことを示しています。つまりドライバーの要求するモノとトルクの供給の間には、まだ差があるということです」

「この差をどう改善、あるいは縮小できるかを検討しています。以前のイベントでは、ドライバーの要求に合わせてトルク供給を調整するのが難しかったです。しかし今回はそれを縮小する方法を見つけました。それが今回のイベント(カナダGP)で効果を発揮したんです」

「ドライバーの要求と、トルク伝達のギャップを縮めるために、この方向性で引き続き取り組んでいきます」

 このトルク伝達の問題には、ギヤボックスも関与しているかもしれない。

 アストンマーティン、ひいてはその前身となるレーシングポイントやフォースインディアは、自社でギヤボックスを製造しておらず、マクラーレンやメルセデスからギヤボックスの供給を受け、それを使ってきた。しかし今季からは、グリッド上で唯一ホンダ製PUを使うことになり、自社でギヤボックスを開発することになった。

 彼らがチーム内でギヤボックスを製造するのは、実に2008年以来のことである。当然2008年と今では、ギヤボックスの複雑さは天と地ほどの差があり、簡単な仕事ではないのは想像に難しくない。

 その実例は2017年のザウバーだ。ザウバーは2018年からホンダのPUを使う契約を結んでいたものの、ホンダとマクラーレンが突如契約を解消したために、マクラーレンからギヤボックスの供給を受けられなくなった。そのためザウバーは、「我々には、ギヤボックスの内部を作るだけのリソースはない」として、ホンダとの契約を解消することになった。

 話を戻そう。ギヤチェンジを同期するのがわずかにでもズレると、ドライバーがシフト操作を行なっても、ギヤボックスがその入力に反応するまでに遅延が生じる。つまりパワーカーブやトルクカーブの適切なタイミングでシフトアップが行なわれず、加速がわずかながらも阻害されてしまう。

 ただこれも、カナダではかなり改善されたようだ。

「常に進歩しているよ」

 アロンソはカナダでそう語った。

「コースに出るたびに、マシンやエンジン、セッティング、ギヤボックスに新しい要素が加わる。マイアミからカナダにかけ、ギヤボックスやギヤの同期、そしてダウンシフトも大幅に改善された」

「それがラップタイムにどう影響しているかを定量化するのは難しいけど、マシンはマイアミと全く同じなのに、微調整を加えたおかげで間違いなく速くなった。ここまでモナコまでの間に、細かい部分で多くの改善が起こり、さらに一歩前進することを期待している」

「しかし根本的な問題、つまり3秒のタイム差を縮めるためには、エンジンのパワーとエアロパッケージの改善が必要だ。それはシーズン後半にならないと実現しないだろうね」

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