AMDのCEO、リサ・スーがMIT卒業式で述べた祝辞「難問に挑め、AI時代の未来は人間が決める」

AMDのCEO、リサ・スーがMIT卒業式で述べた祝辞「難問に挑め、AI時代の未来は人間が決める」

今年の卒業式をめぐってさまざまな騒ぎがある中、私はAMDのCEOであるリサ・スーの卒業式祝辞に出席できたことをうれしく思った。スー自身もMITコミュニティの一員であり、人間性、AI、そして未来について、意義深い言葉を語った。

(※訳注:2026年の米大学の卒業式シーズンは、招いた講演者を過去の発言などを理由に直前で降板させたり、学生スピーチを事前録画・事前承認制に切り替えたりする動きが相次ぎ、全米で物議を醸していた。背景には、ガザ戦争をめぐる学内の対立や抗議活動が近年の卒業式に影を落としてきた経緯がある)。

スーは、1986年にMITにやって来た当時のことを語った。現在の目で見れば、それはアナログの時代であり、私たちが現在テクノロジーとして当たり前に使っているものの多くが、まだ存在しなかった時代である。それでも当時から、学生や教員はその時代を切り開くプロジェクトに懸命に取り組んでいた。スーが講演の中で特に強調したのは、実際に手を動かして実験し、ものを作るという経験だった。

「MITには、自分が行けると思っていた地点よりもさらに先へと、皆さんを押し出す驚くべき力があります」と彼女は述べた。「皆さんは問題と格闘しました。回路を1つや2つ焼ききったこともあったでしょう。そして、なぜか……それは動いたのです。すると突然、自分は本当に何かを作れるのだと気づきます。私が自分をエンジニアだと感じ始めたのは、その時でした」。

実際、スーの説明によれば、最終的に彼女を半導体業界へと導いたのは、こうした仕事だった。彼女は現在、この業界で著名な人物である。彼女はMIT時代の初期のプロジェクトについて語った。それは39号館でX線リソグラフィ用のマスクブランクを作るというものだった。

「私はたくさんの実験をしました」と彼女は語った。「そのほとんどは、期待した通りにはいきませんでした。そこで調整し、もう1度試しました。それは最高に面白い体験でした。初めて、私は教室でテクノロジーについて学んでいるだけではありませんでした。新しいものを発見しようとするチームの一員だったのです。私はこう思ったことを覚えています。すごい、こんなに小さなものを作れるのか。硬貨ほどの大きさのダイ(半導体チップ本体)に収まるほど小さいのに、世界を変えるほどの力を持つものを。そしてその時、私は半導体に魅了されました」。

■個人としての成長

スーの話の中で、私がもう1つ気に入ったのは、非常に個人的な過程についての部分だった。同時にそれは、ある意味では多くの人に共通する経験でもあるように思える。彼女は、学生が少しずつ、段階的な変化を通じて専門家になっていく過程について語った。ここでは、彼女自身の言葉をそのまま紹介する。

「少しずつ、私はその分野について学び始めたばかりの新米大学院生から……独自の研究を行い、その分野に実際に新しい貢献をする人間へと変わっていきました。そしてその過程で、私は自分自身を信じるようになりました。常に答えを知っているという自信ではありません。まだ答えを知らなくても……自分なら見つけ出せるという自信です」。

この部分で私が気に入っているのは、スーが大きなことを非常に簡潔な言葉で表現している点だ。それは時間がかかり、微妙なニュアンスを含み、重要な自己発見でもある。

自信。それは人の歩みにおいて重要な要素だ。

「今振り返ると、MITが私に教えてくれていたのは、半導体物理よりもはるかに大きなことでした」とスーは付け加えた。

歩みを貫く、未来に立ち向かう

■歩みを貫く

スーはMITのモットーであるラテン語の「mens et manus(メンス・エト・マヌス)」に触れた。英語では「mind and hand」、つまり「知と手」である。

「学生だった頃、私はそれを単なるモットーだと思っていました」と彼女は語った。「今では、それこそがMITの特別さを的確に表していると思います。MITは、深く考えることを教えてくれます。しかし同時に、作ることも教えてくれます。アイデアを試すことを教えてくれます。最初の実験、あるいは5回目の実験でさえうまくいかない時にも、続けることを教えてくれます。そして時間がたつにつれて、かつては不可能に思えた問題でも、自分なら解決できると信じ始めるのです」。

■困難のただ中へ

スーの祝辞でもう1つ重要だったのは、MITで得たその感覚を仕事の世界に持ち込むことについて語った部分である。仕事の世界では、個人の自信が試されることが多い。ストレスが大きく、競争の激しい環境の中で、新卒者が自分の進むべき道に迷う今日、そのことはまさに当てはまる。しかしスーが、外部の困難と、MIT卒業生が携えていく自信や知識とを対比して語るのを聞き、私は、良い教育がいかに本当の資産になり得るかを実感した。

「私はキャンパスを離れてからも長く、その感覚を持ち続けました」とスーは語った。「IBMに入社した時、私はまた一から始めることになりました。IBMには何十万人もの社員がいました。私は25歳で、これほど大きな会社で自分がどうやって違いを生み出せるのかと考えていました」。

そう述べたうえで、スーは、エンジニアリングやものづくりの仕事に深く関わる多くの人が思い至るであろう、もう1つの考えを示した。

「私はすぐにある重要なことを学びました。エンジニアリングは、あなたが何歳かなど気にしません。気にするのは、あなたのアイデアが機能するかどうかです」。

これは仕事の世界にとっても良い注意喚起である。かつて存在していた古いルールがあったとしても、今やその多くは時代遅れである。年齢は物差しではない。ある程度までは、コーディング能力も、ネットワークシステムに関する丸暗記の知識も、たとえば1980年代であれば専門職として強みになったあらゆる知見も、同じく決定的な物差しではない。私たちは現在、別の時代にいる。

だからこそ、学生たちはスーが粘り強さについて語ったことから何かを持ち帰れるのではないかと私は思った。

■未来に立ち向かう

「私のメンターの1人が、決して忘れられないことを言ってくれました」とスーは述べた。「最も難しい問題に向かって走りなさい、と。当時の私は、その意味を十分には理解していませんでした。しかし時間がたつにつれ、これが私の受けた中で最高の助言だったと気づきました。難しい問題は、自分に何ができるのかを教えてくれます」。

ここではスー自身の言葉を多めに紹介したい。彼女は、キャリアの歩みと、AMDで目にした状況の背景を実にうまく説明していたと思うからである。まず、リスクを取るという考えがあった。

「AMDには大きな可能性がありましたが、会社は何年にもわたって厳しい時期を経験していました」と彼女は語った。「私のメンターの中には、その仕事を引き受けるのはリスクが高いと考える人もいました。しかし私にとって、これは夢の仕事でした。長年、そのために訓練を積んできた仕事でした。本当に重要な問題に、技術のまさに最前線で取り組む機会だったのです」。

ここでもまた、経験に基づいて築かれた自信と、画期的で重要な仕事をしたいという意欲が見て取れる。

スーは、AMDの中核的な取り組みと、それがどのように花開いたかを次のように説明した。

「私たちは、高性能コンピューティングこそが未来で最も重要な技術になるという長期的な賭けに出ました。才能あるチームに、大きく考える余地を与えました。その後の数年間で、私たちは世界で最も強力なコンピューターを実現するための技術を作り上げました」。

ここでも、スーは多くを語らない。賭けに出てそれが実を結ぶまでの、肝心なところだけを伝えている。あらゆる情報が人々の関心を奪い合う今の時代に、こうして要点だけで物語を語れることは、まさに1つの技量だといえる。

個人とチーム、AIの時代に

■個人とチーム

スーの祝辞から、もう1つ短い部分を紹介したい。そこでは、個人の自信を生かし、大きな領域を共に探っていくチームをどう作るかについて語っている。

「そのすべてを通じて、私はMITが教えてくれたあらゆるスキルを使いました……そして、それ以上のものも使いました」と彼女は述べた。「私はそれを『エンジニアの本能』と呼んでいます。一見解決不能に思える問題に向き合い、それを切り分け、1歩ずつ手順を踏んで解いていく力です。しかしAMDで、私はもう1つのことを学びました。エンジニアの本能は、チームで共有される時、さらに強力になります。そして私のキャリアにおける最大の喜びは、私たちの誰もが可能だと思っていた水準を超えることを成し遂げるために、人々を結集させてきたことです」。

■AIの時代に

そしてもちろん、スーは話を現在へとつなげた。新たな卒業生たちは、目まぐるしいスピードで変化する世界に向き合っている。

「過去数十年の間に、私たちはいくつもの大きな技術転換を経験してきました」とスーは述べ、こう続けた。

「インターネットは、私たちのコミュニケーションのあり方を変えました。

モバイルコンピューティングは、私たちの生活のあり方を変えました。

クラウドコンピューティングは、私たちの働き方を変えました」。

さらにこう述べた。

「そして現在、私たちはAIの波の始まりにいます。私にとって、AIはこれまでの技術の波とは異なります。AIは、物事をより速く進めるのを助ける単なる道具ではありません。それよりも深いものです。あらゆる分野で発見を加速し、これまで解決できなかった問題を解く手助けをする可能性を持っています」。

スーは、このような世界における人間の価値と役割について語った。

「テクノロジーそのものが、未来の姿を決めるわけではありません」と彼女は述べた。「決めるのは人間です。AIには大きな可能性がありますが、どの問題を解く価値があるのかを決めることはできません。不完全な情報のもとで難しい判断を下すこともできません。結果に対して責任を負うこともできません。これらは私たちの責任です。そしてその責任が、現在ほど重要だったことはありません」。

■大胆な者が運をつかむ

最後に、スーが卒業式祝辞の終盤で語ったことに触れて締めくくりたい。もちろん、その祝辞はYouTubeで全編を見ることができる。これは、幸運、粘り強さ、そして人間の運命を動かす繊細な計算についての言葉である。

「時間をかけて、私はこう信じるようになりました。最も優れた人々は、自らの幸運を作り出す方法を見つけるのだ、と」とスーは語った。「幸運とは、ただ適切なときに適切な場所にいることではありません。それは、難しい何かに取り組むというリスクを取ることです。自分自身に挑むことです。自分の知識の限界にある問題を選ぶことです。自分をより良くしてくれる人々で周りを固めることです。そして、そう……自分は世界を変えられるのだと信じることです。だから、自分が選ぶ問題について野心的であってください。最も難しい問題に向かって走ってください。そして、自分のエンジニアの直感を信じてください。それこそが、幸運を作り出す方法なのです」。

もしその場にいなかったのなら、ぜひ動画を見てほしい。これらの考えのいくつかは、不確実な時代を歩んでいくうえで、あなたの助けになるかもしれない。

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