「静かな退職」ならぬ「静かな解雇」が始まる?!――企業がいよいよZ世代に見切りをつけ始めた

「静かな退職」ならぬ「静かな解雇」が始まる?!――企業がいよいよZ世代に見切りをつけ始めた

新年度が始まって、5月ももう半ば。皆さんの職場の新入社員はそろそろ現場に配属され始める頃だろうか。中には、早くも退職代行サービスに駆け込む人たちもいるとか、いないとか……。

数年前から「静かな退職」という言葉が聞かれるようになった。アメリカで生まれた「Quiet Quitting」という言葉の日本語訳だ。

昨年末『無敵化する若者たち』(小社刊)でいまの若者たちの実像に迫った金間大介・金沢大学教授は、「静かな退職と訳すと、人知れずそっと辞めることのように思えてしまう。実際は、給料を得るために求められる最低限の仕事はこなすが、それ以上はがんばらないという状態」と指摘する。いずれにせよ、そんな〝体温低め〟の若者たちにいかにがんばってもらうか--というのが、これまでの大きなテーマだった。ところが最近、注目すべき変化が起きているという。

■Z世代に見切りをつけ始めている

 最近、若手人材の育成を研究している僕の周りで、「企業がZ世代に見切りをつけ始めている」という声を聞くようになった。

 「え?  Z世代といえば就職も転職も引っ張りだこなんじゃないの?」と驚く人もいるかもしれない。実際、「うちの会社なんて、毎日のようにZ世代が辞めていかないための対策を検討してるよ」という人もいるだろう。

 僕は昨年12月に『無敵化する若者たち』を上梓し、その中で、昨今の若者たちがいかに安定志向が強く、失敗を恐れ、他人(特に同世代)の目を気にしながら生活しているかを、多様なデータを交えて論じた。と、同時に、してもらい上手で、先輩世代から手厚く守られ、ときにそんな先輩たちがちょっと驚いてしまうような権利主張を平気でする、なんていうエピソードを面白おかしく描いた。

そんな20代と、僕が「気づかい世代」と評する40〜50代を対比させる形で、友人の長田麻衣さんと対談したのもつい先月のことだ。

 そんな中、拙著を読んだ読者の方からいただいたメールの中で、次のようなコメントがあった。

最近の動きで心配なのは、Z世代を中心とした若手の社会人を企業が見切り始めているという点です。「静かな退職」をしていた若手を企業が「静かな解雇」をし始めており、新卒採用を絞って中途採用の即戦力に採用方針をシフトしている企業も増えつつあります。

 なるほど。

 「なんと素晴らしい表現力!」と感嘆すると同時に、その内容については僕も頻繁に耳にするようになってきた。

■新卒採用を減らす企業が増加

 2026年4月20日、共同通信社が発したあるニュースが話題になったのをご存じだろうか。「新卒採用『減らす』23% 5年ぶり『増やす』上回る」という記事で、同社が主要企業111社に実施した27年度入社の新卒採用に関するアンケート結果をまとめたものだ。

 中でも注目されたのは、新卒採用を前年度実績より「減らす」と回答した企業がこの1年間でおよそ倍増したことだ。前年の調査では「減らす」と答えた企業は12%にとどまっていたのが、今年度は23%にまで増えている。

 「(前年より)増やす」と回答した企業は16%にとどまっており、この「増or減」の数値が5年ぶりに逆転したという構図だ。ちなみに、残りの回答は「前年度並み」か「未定」「無回答」となっている。

 記事の中では、この増減の逆転が起きた理由として、①「人手不足に一服感が見られる」こと、②「AIが業務を代替し始めている」ことを挙げている。検証してみよう。

 まず①の「人手不足に一服感が見られる」については、とても同意できる状態にない。理由は明確で、医療・福祉系や、いわゆるブルーワーカーと呼ばれる熟練技能職を中心に求人は伸び続けているからだ。

 ブランド力のある大手企業は比較的若手人材を集めやすく、また高水準の給与アップによって、ここ数年の厳しい採用環境の中でも大量採用を実現してきた。しかし、特に医療・福祉系などでは、これらの企業のようにすぐに給与増を実現することは難しく、「魅力負け」してきた経緯がある。

 ②「AIが業務を代替し始めている」という点はどうだろう。

 この点について、4月8日付の「日刊SPA!」がアメリカの興味深い動きを報じている。「Z世代の失業率が最大30%になる予測も…アメリカで進む『AIによる新人仕事の消滅』が日本にも来る」と銘打ち、アメリカ国内ではAIが新卒間もない「エントリーレベル」や、入社後数年にあたる「ジュニアレベル」の仕事を代替しはじめていると紹介している。

 そして今、これらのレベルにいるのがZ世代というわけだ。よって「Z世代の失業率は最大30%に達する可能性も」と結論付けている。

 状況を一言で言うと、シニアレベルの人たちが、ジュニアレベルに任せていた業務をAIに振り分けるようになったということ。議事録やパワーポイント資料の作成など、AIに投げれば瞬時に出来上がってくるものを、わざわざ高いコストと日数をかけてジュニアレベルに任せることをしなくなったということだ。

 いかにも“スキル重視のジョブ型組織の考え方”という印象だが、それではメンバーシップ型組織が多い日本社会ではまだZ世代は安泰かというと、そうではないと同記事では警鐘を鳴らしている。今はAI活用の猶予期間が働いているだけで、もう間もなく「とりあえず採用して現場で育てる」という悠長なモデルがコストに見合わなくなると予想している。

■新卒の配属を拒む部署も

 現時点でのこの予想には、僕も100%同意だ。

 拙著『無敵化する若者たち』の中で僕は、「現在の若者たちの理想の上司は『塾講師』のようになりつつある」とまで書いた。理想の上司像を調査すると、どんな問い方をしても、最初から最後まで丁寧に、何度でも、怒らずに教えてくれる上司がいい、という結果が得られるためだ。

 コスパ、タイパを重視し、とにかくわかりやすく知識やスキルを伝授してくれる職場を好む様子も、多くのメディアで頻繁に報道されている。

 そんな彼らに、今度は企業が見切りをつけ始めているという。企業にとってみれば、そんな彼らを新卒採用することこそ、コスパもタイパも悪いということだろう。事実、企業内では新卒の受け入れを拒否する部署が増えていると聞く。理由は「今は業務が立て込んでいるから」というもの。

 皮肉なもので、かつては新入社員が配属されると皆で喜んでいた。これで少しは楽になると。

 それが今や、ひとり新入社員を受け入れてしまうと既存のメンバーが疲弊してしまうという。指導するのに手がかかるだけではなく、ハラスメントへの気遣いからくる心労もかつての比ではない。

■誰も若手の育成をしなくなる? 

 そうなると、当然採用活動の矛先は即戦力となるキャリア採用へと向かう。実際、今のキャリア採用市場はかつてないほどの活況を呈している。

 そんな様子を知ってか知らずか、大学生を中心とした就活生は、ますます自らの市場価値を高めてくれるような(至れり尽くせりの型の)企業への就職を希望するようになるだろう。今の若者たちは、同世代と比較した自らの市場価値をとても気にしている。

 そうなると企業は、ますますそんな若者を(少なくともホワイトカラーの知識労働者として)採用することはしなくなるだろう。理由は先も言った通り、給与を払ってまで育成してあげる道義はない。結果、企業は新卒採用を絞り、誰も若手の育成をしなくなる時代へと突入し……なんて、そんな怖い時代が来るかもしれない。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏