ナフサ不安、自動車生産に打撃…シンナー不足で減産・タイヤ値上げ
広い供給網 減益要因に
ホルムズ海峡が事実上封鎖された影響が、日本の自動車生産や修理の現場に広がっている。ナフサ(粗製ガソリン)の輸入が滞り始めたことで、ナフサ由来で塗料に欠かせないシンナーの不足が一部メーカーや塗装業者などの間で目立ち始め、事業に支障が出てきた。供給不安が長期化すれば、業界全体にとって大きな打撃となると懸念される。
供給不安の影響は身近な「まちの車屋」にも及ぶ。板金・塗装店を全国で31店舗展開するイケウチ(東京)によると、3月中旬頃に調達先から「シンナーの供給が不安定になる恐れがある」と連絡があった。供給量は8割ほど減少し、仕入れ価格も4~5割上がったという。
4月に新たに3店舗を開業する予定だったが、シンナーや塗料などを確保できず延期した。シンナーは部品の洗浄や塗料の希釈に欠かせない。日守翔吾・技術部長は「今の状態が続けば営業できなくなるかもしれない。危機的状況だ」と窮状を訴える。
シンナー不足が減産につながるケースが出始めた。トラックなどの荷台部分を製造・販売する「日本フルハーフ」は4月20日、シンナー不足により、一部製品について生産台数を減らしていると発表した。トラックの荷台は乗用車と比べて塗装範囲が広く、社名やロゴなどを入れるため、影響が出やすいとみられる。
供給制約に伴う原材料費の高騰で、日本ミシュランタイヤは国内向け夏タイヤの出荷価格を6月から3~5%値上げする。
先行き不透明
「数か月先まで見通せない」
自動車部品大手のデンソーの松井靖副社長は4月28日の決算説明会で、先行きへの不安をあらわにした。2027年3月期連結の業績予想では、ナフサの供給不安をはじめとする中東情勢などの不確実性が営業利益で450億円の減益要因になると見込んでいる。
原油を精製してつくるナフサは、多くの自動車部品で使われるプラスチックなどの原料となる。原油価格の高騰が部品のコスト増につながるほか、足元では確保している在庫の不足も懸念されている。
日本はナフサの国内消費量の4割を中東からの輸入でまかなっており、影響は自動車のサプライチェーン(供給網)全体に及ぶ。財務省が4月28日に発表した3月の貿易統計(速報値)によると、ナフサなど揮発油の中東からの輸入量は前年同月から36・9%減った。
在庫確保走る
高市首相は4月30日の中東情勢の関係閣僚会議で、ナフサを使った化学製品の国内供給について、米国やペルーなど中東産以外の代替調達を進めることで「年を越えて継続できる見込みとなった」と説明した。
政府によると、石油化学メーカーなどは十分な量の石油化学製品を供給している。しかし、ナフサの供給不安がメーカーや工務店などの間で解消されず、ナフサ由来製品の在庫を積み増す業者が相次いでいるとみられる。流通の目詰まりにつながり、不足感が高まっているようだ。
住友商事グローバルリサーチの本間隆行経済部長は「事業者が過剰に在庫を確保しようとする動きが強まれば需給バランスが崩れ、供給の偏りが続く恐れがある」と指摘している。
