全固体電池が日本のEV復権の切り札 — メディアでも政府の話でも、よく聞きます。
でも、この前提、もうほとんど成り立ってないんですよ。
全固体電池の市場シェアは、2035年でも全電池の数%(Fraunhofer・TrendForce・SMM予測)
中国のCATL・BYDは液系LFPで6分充電・−30度対応を既に実現
VW × Fraunhofer研究所は現行電池の安全性研究を世界最前線で進化中
VWはQuantumScapeに$261M投資、Unified Cellで本物のマルチパスウェイを実装
実はトヨタも冷静に4種類の電池を並行開発(Panasonic、CATL、BYDと連携)
ところが日産とホンダだけが、VWの半分以下の規模で、自社単独・硫化物系・全固体電池に一点突破投資しようとしている。
日産は2025年5月にLFP工場(1,533億円)を断念。ホンダの本田技術研究所リーダーは「リチウム金属を用いた全固体電池しかやらない、リソースを全部注ぎ込む」と発言。
しかも、北京モーターショー2026で見えた本当の競争軸は、AI・SDV・自動運転。テーマは "Lead the Era, Intelligent Future"。電池の化学では、勝負がつかない時代に入っています。
ハノーバー・メッセの現場を歩いて、欧州の電池研究者と話して、僕なりに組み立てた結論をお話しします。
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今回のポイント
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▶ 全固体電池が市場に出る頃には、解決すべき問題はもう液系で解決されているかもしれない
▶ 日本社会は「銀の銃弾」として全固体電池を神格化しすぎている
▶ 競争軸はもうバッテリーじゃない — AI、SDV、自動運転にシフトしている
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📋 チャプター
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0:00 全固体電池が来なくても、日本は勝てない
1:22 2035年でも全電池市場の数% — 3つの調査機関の予測
2:50 全固体が出る頃には、もう問題は液系で解決されてる
4:08 日本のEV議論は周回遅れの象徴
6:00 第1章:既に問題は解決してる
6:12 CATL Shenxing 3 — 6分27秒で98%充電(LFP)
9:10 BYD Blade 2.0 — マイナス30度で12分
10:40 日産の発表と中国勢の対比
12:30 安全性も、世界最前線で進化中(VW × Fraunhofer)
15:30 第2章:なぜ日本は信仰しているのか
16:00 エネルギー密度への執着
18:00 一番難しい硫化物を選ばされた構造
21:30 ホンダ大津社長「全固体電池で逆転できる」
23:00 銀の銃弾(Silver Bullet)の物語
26:00 第3章:世界は冷静、日本だけ熱狂
26:30 VWは、トヨタに劣らず金を張っている
28:00 VW Unified Cell — 本物のマルチパスウェイ
30:30 Ducati 全固体電池モーターサイクル
31:30 実はトヨタも冷静 — 4種類の電池を並行開発
34:00 第4章:日産・ホンダの異常
35:30 世界OEMの全固体戦略の比較
38:00 日産はLFP工場を断念した(2025年5月)
39:30 ホンダの「一点賭け」発言
42:00 第5章:本当の競争軸は、そこじゃない
43:30 北京モーターショー2026 "Intelligent Future"
46:00 整理:周回遅れの議論
47:00 第二部予告
Vの競争軸は電池と航続距離じゃない、安全な電池で長距離走れても、自動運転が下手くそでは売れない、そういう世の中になる。という仮説が大前提にあります。
全固体電池という技術自体を否定してません。素晴らしい技術で必要だと思ってます。将来の電池を考えたら必要になる技術でもあると思う。
ただ、それを信じすぎて、銀の銃弾、白馬の王子様に仕立て上げてる空気がある。中には「全固体が出るまでEVはやらない」っていう、EV化をしない理由として全固体を持ち出す風潮もありますよね。これは本来の技術論からズレてる。
そんなんわけであえて強目に否定というのを語ってます。
トヨタは全方位戦略でやってるし、しっかり世界に先駆けて出してほしいと思ってます。
でも日産やホンダのような、規模もそこまで大きくなくて経営も苦しめの会社が、世界の競合と比べたとき、自社で全部背負うのは荷が重いんじゃないか? ホンダには宇宙事業もあるし、日産も将来の投資が必要なのもわかります。だからこそ、「全固体こそが最優先で進む道」の戦略でいいのか、本当にゲームチェンジャーになるのか、冷静に見極める必要があるんじゃないか、というのが今回の主張です。
「全固体だから」という理由で礼賛するんじゃなくて、冷静に見極めましょうってことです。
エネルギー密度が従来比約2倍の全固体電池を製品化
マクセルは2022年7月25日、従来製品よりも約2倍のエネルギー密度を持つセラミックパッケージ型全固体電池「PSB401010H」を開発し、製品化したと発表した。リフローはんだによる基板への表面実装に対応し、105℃環境下で10年間使用できるという。2023年春に京都事業所に導入する量産設備で生産する計画。
従来品よりも体積を半分に
新製品は硫化物系固体電解質を使用したセラミックパッケージ型の全固体電池。「2021年3月に発表した同全固体電池(型番:PSB401515L)の容量や出力特性、耐熱性などの特性を維持したまま、構造とプロセスに関する技術を採用することにより、約2倍のエネルギー密度を実現した」とし、従来製品よりも体積を半分に小型化した。
サイズは10.5mm角、高さ4.0mmで重さは1.2g。標準容量8.0mAhで公称電圧は2.3V。充電における定電圧値は2.6Vで標準電流は4.0mA、放電における終始電圧は0Vで最大電流は30.0mAになっている。
リフローに対応し、医療、FA、車載などの市場狙う
最大温度250℃でのリフロー工程を経ても、容量や負荷特性などの基本特性に劣化が見られないことを確認。表面実装が求められる市場の他、滅菌処理が必要な医療機器市場、FA機器/車載機器などの市場に展開していく方針。
同社は「長年にわたり、リチウムイオン電池やマイクロ電池の開発と製造を行ってきた。そこで培ったアナログコア技術および、他社との協業による技術を融合し、新たに開発したプロセス技術を加えることで高性能かつ高信頼性を有する全固体電池を開発している。国内にあるマイクロ電池やリチウムイオン電池の工場、設備、製造技術およびノウハウを活用することにより、高容量セラミックパッケージ型全固体電池のすみやかな量産移行を計画している」としている。
エネルギー密度2倍のEV用バッテリーを開発へ…経産省が計画
経済産業省は11月11日、次世代蓄電池・次世代モーターの開発プロジェクトの内容をまとめた研究開発・社会実装計画を策定したと発表した。
自動車の利用段階におけるCO2排出量削減に向けては、自動車の電動化が不可欠となっている。経済産業省では、電動車の重要な部品である蓄電池やモーターについて高性能化、省資源化、リサイクルに関する研究開発を推進し、自動車分野における脱炭素化と産業競争力強化の実現を目指す。
計画では航続距離などに影響するエネルギー密度が現在の2倍以上となる700~800Wh/L以上の高容量系蓄電池などの高性能蓄電池やその材料を研究する。コバルトや黒鉛などの使用量低減を可能とする省資源材料や、材料の低炭素製造プロセスなども開発して自動車の電動化を促進する。
また、リチウムイオン蓄電池から競争力のあるコスト、蓄電池材料を実用化するいため、再利用可能な品質のリチウム70%、ニッケル95%、コバルト95%を回収する技術の確立を目指す。
モーターシステムではシステム平均効率85%の高効率化や小型・軽量化・パワー向上に向けて材料やモーター構造・インバータ・冷却技術などの革新技術を開発し、モビリティにおける電気利用の効率化を目指す。
