Appleが「端末残価」でAndroid陣営を異例の批判、「ホッピング対策」で新たな縛りも? ルール見直しの焦点

Appleが「端末残価」でAndroid陣営を異例の批判、「ホッピング対策」で新たな縛りも? ルール見直しの焦点

総務省で開催中の「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」で、端末購入プログラムやキャッシュバックの規制を見直す議論が進んでいる。電気通信事業法第27条3で定められたユーザーへの利益提供の在り方を現状に合わせていくためだ。

 規制開始当初は契約にひも付く端末への大幅な割引が規制された格好だが、その後、端末単体の割引や端末購入プログラムの残価にも制約がつき、ガイドラインは複雑化している。これをシンプルにしつつ、キャリアを悩ませているホッピング行為を抑制するのが見直しの主な焦点になりつつある。

 一方、専門委員会では委員から、諸外国と大きく乖離(かいり)した端末割引規制を抜本的に見直すべきとの意見も出ている。キャリアやMVNO側からはその必要性を否定されているものの、今後の規制の在り方に影響を与える可能性もある。ここまでの議論を踏まえ、各社の主張をまとめていきたい。

ホッピング対策や端末購入プログラムの残価がテーマに

 専門委員会で焦点になっているのは、電気通信事業法第27条3で定められたユーザーへの利益提供の在り方だ。現状では、8万円(税別、以下同)以上の端末で最大4万円までの割引が可能になっており、これとは別に、SIMカード単体での契約にも2万円までの利益提供が可能になっている。各社がSIMのみ契約にキャッシュバックやポイントを付けているのは、そのためだ。

 “残クレ”とも呼ばれる残価を端末の下取りで帳消しにする端末購入プログラムも、この規制の範囲にある。下取りした端末の対価を払うだけで、当初は割引と見なされていなかったが、キャリアによって残価の設定方法や参照先がまちまちだったこともあり、現在では、中古スマホ業者の業界団体であるリユースモバイル・ジャパン(RMJ)が出す月ごとの平均価格を採用することが義務付けられている。

 残価の設定がこれを超えた場合、キャリアがユーザーに支払う割引と見なされる。例えば、本来、中古業者が2年後に8万円で買い取るような端末の残価を10万円に設定した場合、差額の2万円が割引扱いになる。契約時や端末購入時に受けられるその他の割引と合算して、その上限は4万円になる。

 ただ、前者のSIMカード契約に対する割引は、キャリアを一定期間ごとに転々と移る「ホッピング」行為が問題視されるようになった。2万円の割引をキャリアが回収できる前に再び他社に移られてしまうと、その分が損失になってしまうからだ。まわりまわって、この損失はキャリアを使い続けるユーザーが負担していることになる。

 キャッシュバックやポイントを支払った場合に期間拘束をすればいいのでは……と思われるかもしれないが、現行の法令では、キャリア間の競争を促進する観点で、これも厳しく規制されている。各キャリアとも、既にほとんどの料金プランで例外的な短期契約を除いた違約金を撤廃している他、キャッシュバックやポイントを長期にわたって分割で提供し、解約後にそれを打ち切ることもできない。

 後者の端末購入プログラムに対する規制は、制度が複雑になりすぎているのが課題として残る。参照する過去の端末は機種、ストレージ容量ごとに分けられており、RMJやキャリア各社が出すリストは膨大だ。さらに、共通項が多い複数の機種をグループ化することが許容されているため、キャリアごとに同一機種でも残価が異なるという事態も起こっている。

分割提供や6カ月程度の期間拘束が可能に? 見直しが進むSIMのみ契約の還元

 では、専門委員会ではどのように見直す議論が進められているのか。1つ目のホッピング対策は、規制緩和で対応する方向性が打ち出されている。ただし、その手法は複数が検討されている状況。ホッピングが起こらないよう、提供額の上限を引き下げたり、中途解約を抑止するために還元額を分割提供できるようにしたり、違約金を設定できるようにしたりといった案が出ている状況だ。

 例えば、ドコモは規制見直し案として、利益提供の上限を4000円から5000円程度まで引き下げることや、継続利用を条件にして数カ月に渡って還元額を分割提供できるようにすることなどを提案している。KDDIは、分割提供もしくは一定期間継続利用をした後にキャッシュバックできる規制緩和を要望している。ソフトバンクは、これらに加えて短期解約時の違約金を可能にする対策案を提案した。

 手法についてはおおむね4キャリアで方向性は一致している一方、その期間については意見の隔たりが大きい印象だ。4月20日に開催された第6回の専門委員会では、どの程度の継続利用が望ましいかという質問に対して4キャリアやMVNOが回答。ドコモは、上限額を変えない2万円の場合、30カ月という期間を提案した。逆に、上限を4000円まで引き下げたときには、継続期間は6カ月が適当としている。

 額によって期間が変動するのは、キャリア側が投じたキャッシュバックを回収するためだ。この期間と額を試算するにあたり、ドコモは利益提供額を大手3社のARPU(1利用者あたりの平均収入)で割り、その値に営業利益率をかける式を利用した。これは、キャッシュバックした金額を、キャリアが何カ月かければ回収できるかを意味する。

 同様の趣旨でソフトバンクも2万円の場合、回収に35.3カ月かかると試算。3年程度の期間が必要となる一方で、囲い込みにもつながることから、適切な期間を2年とした。一方で、KDDIは1年を下回る場合、実効性が限定されると主張。ただし、よりシンプルな方法として、分割提供をした上で、解約時には残りのキャッシュバックを打ち切る方法を提案している。長い期間を定めることで、囲い込みにつながるからだ。

 楽天モバイルも1年を超えない期間としており、それ以上は囲い込みにつながるとしている。ドコモやソフトバンクが、2年や3年といった長期利用を想定しているのに対し、KDDIや楽天モバイルは囲い込み防止の観点から1年前後で、中途解約には提供を打ち切る方法を提案している状況だ。

 また、オプテージやMVNO委員会は継続利用期間の条件を緩和する場合でも、最小限にとどめるようくぎを刺す。ドコモやソフトバンクの案は、あくまでキャリアがキャッシュバックを回収できる期間。ホッピング対策の趣旨からはややズレてる印象も受ける上、その他の事業者が主張しているように、囲い込みつながる懸念もある。こうした声を受け、総務省では論点整理でお試し割を引き合いに、「最長6カ月程度まで継続利用条件を緩和することが考えられるのではないか」と打ち出している。

ppleが激怒? 大きく意見が割れた端末購入プログラムの見直し

 議論が収束しつつあるホッピング対策だが、端末購入プログラムの残価率算出ルールは、検討が継続している。主な論点になっているのは、複雑さやキャリアごとに恣意(しい)的な運用を排除するところにある。その案として、1月に開催された第2回の専門委員会では、ドコモが算定に用いる機種を裁量で選択できないようにすることや、残価率算出方法を統一化することを提案している。

 残価率の算出方法を統一して、シンプル化することはソフトバンクも課題としており、各社とも、複雑怪奇になった仕組みに手を焼いていることがうかがえる。ドコモは、統一の一例として、内閣府の消費動向調査から携帯電話の平均使用年数である4.3年を用いて1年ごとに23%ずつ、残価率が低減するモデルを提案している。

 これは、メーカー側も同様だ。第4回の専門委員会に出席したGoogleは、定率で残価が減少するシンプルなモデルを提案。スマホが所得税法で「電子計算機器」や「通信機器」に含まれることから、その減価償却期間である4年から6年で残価が減少していくモデルを提示している。ドコモ案とはベースになる年数が異なるため、Google案は6年の場合、1年ごとに17%ずつ残価が提言していく形だ。サムスン電子も、数値は出していないが一律化を求めている。

 これに猛烈な反対意見を寄せたのがAppleだ。同社は、定率法を「不適切な新たな手法」と断言。「日本国内における端末間競争を弱め、市場を歪めようとしている」と厳しく批判した。さらに「競合する企業の多くは、製造の品質が劣り、陳腐化が早い製品を生産している」として、Android陣営のメーカーを一刀両断にした。

 資料の文面からもAppleの怒りが伝わってくるが、背景には、iPhoneの高いリセールバリューがあるとみられる。定率法を採用することで、iPhoneがこれまでよりも安く引き取られることになれば、結果として端末購入プログラムでの実質価格が下げられない。逆に、もともと買い取り価格が低かったメーカーが定率法で残価が上がることになれば、Appleは競争上不利な立場になる。シンプル化を取るか、端末そのものの価値を取るかで、判断が真っ二つに分かれた格好だ。

 そもそも、専門委員会では端末割引規制自体を抜本的に見直すべきでは……との意見も出ていた。構成員を務める野村総合研究所のシニアパートナー、北俊一氏は、欧米の制度を比較しつつ、諸外国では料金プランに応じた割引が一般的と指摘。高額な料金プランでは、ハイエンドモデルも無料になる事例を挙げつつ、日本の規制が“ガラパゴス化”しているとした。

 いわば、これまでの規制をリセットする大胆な提案だが、専門委員会では、時期尚早との見方も強く、規制の目的をどの程度達成しているかの指標作りに優先順位が置かれている状況だ。とはいえ、現行の規制は上位プランのユーザーが下位プランのユーザーの割引を負担している形になり、公平性に疑問が生じるという北氏の指摘は一理ある。北氏の提案は2026年夏以降に先送りされた格好だが、現状の仕組みは問題も多い。今後の積極的な検討を期待したい。

Apple、スマホ残価問題で他社製品を痛烈批判「多くが品質に劣り、陳腐化が早い」ルール統一検討に反発

総務省が4月20日に実施した「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」の第6回において、Appleが端末購入プログラムにおける残価設定の算定方式に関する見解を提出。競合他社の製品品質や市場戦略に対する踏み込んだ批判的見解を示していた。

残価設定型の端末購入プログラムとは、スマートフォンを分割払いで購入した際、契約から一定期間(24カ月など)が経過した時点で端末を通信事業者に返却することで、残りの支払い分が免除される販売方式。

返却時の免除額、すなわち「残価」が大きいと利用者の実質負担額は小さくなるが、現在この算定基準はキャリアごとに異なっており、同じ機種でも事業者間で実質負担額に大きな差が生じている。

一律算定に反対の姿勢

こうした状況を受け、同委員会では全機種・全キャリアに対して一律の残価率を設ける方式の導入が複数の関係者から提案されており、大手キャリアなサムスン電子といった各メーカーが賛成の意向を示している。

そして20日の公開資料ではキャリアやメーカーへのヒアリング内容が公表されており、そのなかの一社にAppleが並んだ。回答要旨は構成員限りと非公開だったが、補足として同社の見解が示された。

特に一律算定の導入に対するAppleの反対は明確で、同社は「一律(定率)での残価算定のご提案は、長く楽しんでいただける機能と価値を持った質の高い製品を創り出しているAppleのようなメーカーに対し、不当な扱いをするものであることから、強く反対します」と述べ、個々の端末価値を無視した算定が「端末市場を歪めるもの」であり、「AppleとAppleのお客様に対して差別的な影響を与えることになる」と主張した。

「長期的な価値の低さを覆い隠そうとしている」と厳しく指摘

また、長期的に使える製品作りをアピールしていることについては、購入から長期間が経過しても高い残存価値を保つ点をiPhoneの優位性として強調した。

「先進的な製造プロセスと革新的な技術によって、私たちの製品が長もちし、丈夫で、信頼性のあるものとなるよう細心の注意を払ってデザインしている」と説明しつつ、市場調査機関データを根拠として挙げ訴えた。

そして競合他社への評価については「残念ながら、⼀部の端末メーカーは、携帯電話端末の残存価値を算出するための不適切な新たな⼿法をご提案し、⽇本国内における端末間競争を弱め、市場を歪めようとしていますが、これは健全な市場競争を損なうものです」と指摘。

そのうえで、製品面では「Appleと異なり、こうした競合する企業の多くは、製造の品質が劣り、陳腐化が早い製品を生産していますので、結果として、自由市場においては製品価値が急速に下落することになります」と言及した。

こうしたメーカーが一律残価率を推進することにより「人為的かつ画一的な残存価値の算定を推すことによって、自社に実際より不相応な利益をもたらす規制の介入を求め、健全な端末間競争を犠牲にすることで、実質的には自らの製品の長期的な価値の低さを覆い隠そうとしているようなもの」と断じた。

また、減価償却モデルの採用についても「会計処理上の基準であって、市場価格(時価)とは根本的に異なる」として不適切かつ不正確であると退けた。

Appleは残存価値の算定はあくまで市場に委ねるべきだとの立場を堅持しており、「市場によって残存価値が客観的かつ公正に決定されるべきである」と訴えた。

総務省は2026年夏までに残価算定ルールの統一について結論を出す方針で議論を続けている。

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