テレビの〝字幕放送〟の技術進化 NHKでは40年以上前にスタート 最初の番組は…

テレビの〝字幕放送〟の技術進化 NHKでは40年以上前にスタート 最初の番組は…

リモコンの「字幕」ボタンを押したことはありますか。対応番組であれば、音声が字幕で表示される「字幕放送」を利用することができます。このシステムはいつからどうやって始まったのでしょうか。開発や導入の経緯をNHKに聞きました。(朝日新聞withnews・川村さくら)

【画像】渋谷のNHK放送センターにある「生字幕室」の様子がこちら

情報保障としての字幕

音声の聞き取りに何らかのバリアがある視聴者にとって、字幕は強力かつ不可欠な情報保障です。

加齢によって聴力が落ちた記者の祖母にとって字幕放送は生活必需品です。

また、日本語が母語ではない海外出身の友人が情報を正しく得る手段として利用しているのも見てきました。

現在も進化を続けている字幕技術についてその背景をNHKに聞きました。

複数社が入力担当

取材に対応してくれたのは、コンテンツ戦略局でユニバーサル放送を担当している橋田和佳奈さんと、入力を担当しているNHKビジネスクリエイトの奈良坂仁さん。

NHKの字幕入力は現在、NHKの関連会社や外部の会社など複数の社が担っており、NHKビジネスクリエイトはそのうちの1つです。

音声認識方式とキーボード方式

NHKの字幕入力には「音声認識方式」「キーボード方式」という2つのやり方があります。

3人の入力者が手分けしながら、キーボードで番組内の音声言語をタイピングするのが「キーボード方式」。

対して音声認識方式の一例は、2人が入力者、1人が番組内の発言を復唱する「リスピーカー」の役割を担う「リスピーク」があります。リスピーカーの復唱を、AIを活用した音声認識装置が文字起こしします。

出演者それぞれにはしゃべり方の癖があるため、リスピーカー1人が復唱することで音声認識の精度が上がります。

文字起こしされた文章がディスプレーに表示され、入力者2人がタッチパネルで誤字を修正していきます。

初めての字幕は「おしん」

NHKの字幕研究の始まりは、さかのぼること半世紀以上前。

1969年にNHK放送技術研究所が音声認識の研究を始めました。

やがて1983年10月3日の連続テレビ小説「おしん」で試験的に初めて字幕が付けられ、1985年から本格的に導入されました。

ただしこの頃の「文字多重放送」と呼ばれる方式では、字幕を利用するには専用のチューナーを持っている必要があり、誰しもが使えるわけではありませんでした。

生放送に字幕が付いたのは2000年の「ニュース7」からで、翌2001年には「ニュース7」「ニュース9」に全面的に字幕が付いたほか、年末の紅白歌合戦でも字幕を利用できるようになりました。

字幕付与率は

字幕放送については総務省が「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」で定めています。

放送時間や映像の権利などに基づいて対象番組を決めており、NHKと全民放局には2027年度までに対象番組のすべてに字幕をつけるよう求めています。

NHKの場合、総合テレビでは2021年以降100%を達成しました。

最新の2024年度の総務省発表では、Eテレ98.3%、対象外の番組も含めてすべての放送時間における字幕放送時間の割合は、総合テレビ91.9%、Eテレ90.6%でした。

2026年3月時点で字幕が付いていない総合テレビの番組には、深夜早朝帯の大相撲のダイジェスト番組「大相撲 幕内の全取組」や「国際報道2026」などがあるそうです。

またEテレでは外国語番組や音楽番組の一部に字幕が付いていないとのことでした。

拠点局にも生字幕システム

さらにNHKには全国放送だけでなく、各都道府県などの局が放送するローカルのニュースや番組があります。

全国に7局ある「拠点局」(札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・松山・福岡)の番組は全国放送と同じように生字幕に対応しています。

NHKの字幕入力を担当しているうちの1社「NHKビジネスクリエイト」のスタッフが配置されていて、午後6時台と午後8時45分のニュースで生字幕の入力を担っています。

そのほかの局にはまだ生字幕のシステムは導入されておらず、収録番組の一部は東京で字幕を制作して送るなどの対応がとられています。

ぴったり字幕

NHKのインターネットサービス「NHK ONE」でのニュース番組の同時配信にも最新の字幕技術が取り入れられています。

これまでの生字幕だと、リアルタイムで入力するため映像に遅れて字幕が表示されていました。

この問題を解決したのが「ぴったり字幕」。

映像信号を放送用から配信用に切り替えるため、NHK ONEで配信する際には数十秒ほどの遅れが発生します。

「おはよう日本」などのニュース番組の配信時は、この遅れに字幕を合わせることで、映像と字幕が「ぴったり」表示されるようになっています。

災害時は

開発者と入力者、みなさんの尽力の蓄積によって字幕放送は成り立ってきました。

特に、正確な情報をすぐに届ける必要性が増す災害時には、普段入力を担当している複数社が手分けして長時間の生中継にも対応します。

そんなときはシフト外のスタッフも、手挙げして出勤することもあるそうです。

奈良坂さんは言います。

「入力者はみんな使命感を持って作業しています。豪雨の場合だと観測所の地名など、とっさには分からない単語も多く出てきますが、そんなときは予測で出してしまわず、ひらがなで出します」

「とにかく間違えずに早く出す。それを大切にしています」

【NHKの字幕放送の歴史】

1969年 NHK放送技術研究所(技研)が音声認識の研究開始

1983年 連続テレビ小説「おしん」にて初の字幕放送(試験放送)

1985年12月 連続テレビ小説「いちばん太鼓」、NHK特集「シルクロード」で字幕放送

1996年 技研が生字幕制作システムの研究開始

2000年 「ニュース7」にて初の生字幕

2001年「ニュース7」「ニュース9」に全面字幕付与、「紅白歌合戦」にも生字幕

2004年「生活ほっとモーニング~ほっと10時台」に生字幕

2013年 大阪局、名古屋局、福岡局、仙台局の「ニュース845」に生字幕

2019年 「推しナビ!世界パラ陸上世界選手権2019」に初のぴったり字幕

2024年 「おはよう日本」「ニュース7」など生放送ニュース番組のNHK ONEでの同時配信にぴったり字幕

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