【疑問】なぜマツダはミニバンを作らないのか?「SUV全振り」の経営戦略と、新たに提案する「独自のファミリーカー」とは
なぜマツダはミニバンを作らないのか?
日本のファミリーカー市場において、便利なスライドドアを備え広大な室内空間を持つミニバンは圧倒的な人気を誇っています。
ミニバン市場は、トヨタ「アルファード」や「ノア」「ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」や「フリード」、日産「セレナ」など、各自動車メーカーの主力車種がしのぎを削る激戦区です。
しかし、マツダは現在ミニバンを製造・販売していません。
かつてマツダは「MPV」や「プレマシー」「ビアンテ」といったミニバンを販売していましたが、MPVは2016年に生産終了、プレマシーとビアンテはそれぞれ2018年に生産終了となり、現在マツダはミニバン市場から完全撤退しています。
なぜマツダはミニバンを作らないのでしょうか。
SUV市場に「全振り」したマツダの経営戦略
ある業界関係者は、次のように話します。
「日本の道路事情やライフスタイルにマッチしたミニバンは、国内ではファミリー層を中心に高い人気を誇っています。
しかし、欧米を筆頭にSUVがファミリーカーの主流となったグローバル市場において、ミニバンは日本やアジア圏で独自の進化を遂げたカテゴリーという面もあります。
近年北米市場での販売に注力しているマツダにとって、限られた予算と人員をガラパゴス的なミニバンと、グローバルで売れるSUVの両方に分散させてしまうことは、比較的小規模な自動車メーカーであるマツダにとって、ビジネス上の大きなリスクとなります。
そこでマツダは、ミニバン市場から撤退し、世界中で成長を続けていたSUV市場に『全振り』することを選んだと見られます。
結果として、『CX-5』など、SUVである「CXシリーズ」を中心とした経営戦略は成功を収め、現在のマツダの強固な経営基盤となっています」
「デザイン」と「走り」へのこだわりもミニバンを作らない理由に
前出の業界関係者は、マツダのクルマづくりに関して次のように続けます。
「現在のマツダ車を語る上で絶対に欠かせないのが、『魂動』と呼ばれるデザインと『人馬一体』の走りという2つの要素です。
まずデザイン面において、マツダは『クルマは単なる鉄の塊ではなく、命あるもの』という理念のもと、生命感にあふれる美しく流麗なフォルムを追求しています。
しかし、ミニバンは室内空間の最大化と居住性を最優先するため、どうしても四角い箱型のプロポーションにならざるを得ません。
ボンネットが長く、ワイド&ローのマツダらしいスポーティな造形を、ミニバンのパッケージングで実現することは非常に困難です。
さらに、マツダが最も大切にしている『走る歓び』の提供という点でも、重心が高く、車体重量も重く、空気抵抗が大きいミニバンは、どうしても走行性能が犠牲になり、軽快なハンドリングや車両の安定性を損なう原因となります。
マツダが理想とする『人馬一体』のドライビングフィールを妥協なく追求しようとした時、走行性能に関して物理的な制約が多いミニバンは、マツダの哲学と相反するものになってしまいます」
「大人が座れる3列シートSUV」というファミリーカーの提案
一方、現在のマツダの戦略について、前出の業界関係者は次のように話しています。
「マツダはファミリー層を決して見捨てたわけではなく、『3列シートSUV』という新たなカタチで独自の答えを提示しました。
その代表格が、国内向けに投入されて大ヒットした『CX-8』であり、現在はその後継とも言えるフラッグシップSUV『CX-80』へと進化を遂げています。
CX-80は、『家族が増えたから3列シートは必要だけど、ミニバンには乗りたくない』『多人数乗車でもカッコいいデザインで走りを楽しみたい』というユーザーにとって、ミニバンに代わる『新しいファミリーカーの選択肢』となっています。
他社からも3列シートSUVが登場していますが、そのほとんどが3列目を子ども向けや緊急用として割り切っているのに対し、CX-80は大人がしっかりと座れる高い居住性を確保しているのも特徴です。
つまり、『ミニバンを作らない』という選択は、決して消極的な撤退ではなく、『自分たちの強みを生かした、全く新しいファミリーカーの形を提案する』というマツダの前向きな挑戦ともいうことができます」
